東京理科大学は7学部・33学科、7研究科・30専攻で構成され、学生数は学部、大学院、専門職大学院を合わせて2万人を超える(2024年5月1日現在)。
2031年に創立150周年を迎えるにあたり、長期ビジョン「TUS VISION 150」を策定した。日本の先端技術を駆使し、イノベーション創出に貢献する人材の育成などが、その内容だ。
ビジョンの具体化に向け様々な施策を行っており、その1つに、オープンバッジの活用がある。オープンバッジとは、国際的な技術標準規格で発行されるデジタル証明・認証のこと。
このバッジを履歴書、メールの署名、SNSの投稿などに貼り付けることで、身につけた資格や技能、知識などをアピールでき、就職活動や仕事において、より多くのチャンスの獲得につなげることができる。ブロックチェーン技術を搭載し、偽造や改ざんも防止できる。
オープンバッジを導入した背景は、22年度に大学法人の理事長が大学事務職員に向けて、業務改善・新規施策の提案を募集したことにある。47件の応募の中から「社会に示す『TUSオープンバッジ』の推進」が最優秀賞(理事長賞)となり、オープンバッジの導入につながった。
オープンバッジを管理・運営していくため、法人と大学の双方から職員が選出され、専門の事務局が設置された。事務局のメンバーは様々な部署や立場の職員であり、個人の強みや業務経験を活かしたアイデアや発想で業務に取り組んでいる。オープンバッジ導入は、大学の事務総局長が後押ししたプロジェクトでもあるため、職員間での理解が得られやすいという。
「事務局は職務分掌に定めのない、いわばバーチャルな組織ということもあり、気軽な議論ができています。現状はうまく回っていますが、将来的にはどこかの部局に業務として定着させるか、処理作業を外部に委託する必要があると感じています」(東京理科大学オープンバッジ事務局・増田充利氏)
現在は事務局を中心に、オープンバッジの全学導入、運用の効率化に向けて取り組んでいる。
オープンバッジの付与は、学部・研究科などの判断で発行できるようにして、自由な利活用を促している。
付与の対象となるのは①東京理科大学の機構、学部・研究科などが実施する、同大学の教育研究活動に資するプログラム②研究、学業、課外活動における優れた成果であり、いずれも正課内・正課外を問わない。
大学の責任のもと発行していることを明確にするため、バッジの基本デザインは事務局側で作成し、バッジの統一性を担保した。盾をイメージしたベーシックな形状とし、バッジ面の星印(1個~4個)でレベル感を表現した(星印が多いほどレベル感が高い)。
バッジのカテゴリーは①スキル証明(身につけた能力)②修了証明(主に教育課程の修了)③受講証明(教育課程外の受講)④表彰(挙げた成果)の4つを設定。
導入初年度である23年度の発行実績は、修了証明3612件、表彰190件であった(スキル証明と受講証明は発行実績なし)。
修了証明が多いのは、学部1年生から大学院生までが学べるデータサイエンス教育プログラムの修了者にオープンバッジを付与したことによる。
24年度は社会人教育やリカレントの講座受講者も付与の対象にし、25年度は教育課程・課程外の取組にも発行対象を拡大させる予定。26年度はそれまでに付与した件数や付与条件を検証し、発行可能な事業の掘り起こしなど新たな施策を展開していく計画だ。
増田氏は「企業においても社員への発行だけでなく、例えばインターンシップをやり遂げた学生へのバッジの発行や、採用活動においての履歴書などでは、可視化されなかった能力の発見という視点でぜひとも活用頂きたいと思います。今後は教職員を対象とするバッジの発行も検討する可能性もあります。大学として厳格に管理しながらも、なるべく多様なバッジの発行につなげたいと考えています」と抱負を語った。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年11月4日号掲載