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教育ICT

「評価」から学びをデザイン 複線型授業で自己選択・自己決定~枚方市立小倉小学校(EDIX関西公開授業)

2024年11月7日

「和の文化を伝えよう~学び方の自己選択・自己決定」を公開

教育DX関連の展示会EDIX関西20241024日に大阪で開催され、3日間で約5600人の教育関係者が来場した。本展示会では模擬授業も3日間公開した。

104日は枚方市立小倉小学校5年国語の授業「和の文化を伝えよう~学び方の自己選択・自己決定」を公開。授業者は山本健斗教諭と沖亜希子教諭(研究主任)。端末はiPadを使用している。授業後には研究協議会も行われた。

 

和の文化を紹介するポスターを制作

本授業では説明文「和の文化をうけつぐ」「和の文化について発信しよう」で学んだことを活かし「和」の文化についてポスターを制作している様子を公開した。教室を想定した会場には教員が作成した完成物の見本が何種類も掲示されている。ポスター制作のための資料として本も並んでいた。

全員で「へちかんだグラス」をテーマにポスター制作をしているグループ、「土佐和紙」など和紙関連で集まっているグループ、「琥珀糖」「羊羹」「伊賀餅」など和菓子関連で集まっているグループや1人で取り組んでいる子もいる。このほか「将棋の駒つくり」「九谷焼」「節分」などテーマ選択のバリエーションは幅広い。

 

グループで同じテーマに取り組んでいる児童もいる

 

子供たちはそれぞれのテーマについて、Yチャートにより「使用したい写真」「掲載したいキャッチコピー」の候補と「なぜこれを取り上げたのか」を整理してからポスターを制作していた。

 

Yチャートでポスターの構成要素を検討。「筆」をテーマに取り上げている

 

ポスター制作で使用するアプリはCanva、ロイロノート、キーノート、ペイジーズなど、どれを利用しても良い。

教室前方の黒板には「完成した人」「助けてほしい人」「制作途中の人」がマグネット状のネームプレートでわかるようにしており、子供たちは随時自分のネームプレートの位置を変えて現在の状況を示していた。

授業者の山本教諭は「委ねられた分、子供たちは責任をもってしっかりやりきりたいと感じて取り組む様子が見られた。複線型の授業は自分事として没頭しやすいようだ。今日の公開授業の実施が決まったことで制作意欲がさらに向上した子供もいた。終盤になるほど子供に委ねる時間が増えていった。子供は、大人が思っている以上にアナログもデジタルも道具のように使うことができ、必要に応じてアプリを選択することができる」と話す。

子供たちはそれぞれ多彩なテーマを選択していた。「インターネットで調べる前に書籍を調べる子が多かったこと、図書館司書と連携して多彩な図書が準備できたことが大きい。図書は、写真や見出しの作り方などの参考にもなったようだ」

新しい試みについての迷いもあったそうで「委ねすぎて活動が停滞した経験もあり、指示をどこまで出せば良いのかについては現在も悩みながら進めている。毎時間、学年で授業計画や単元計画について話し合って進めている。これまで、授業を考えると様々な活動に取り組みたくなり、評価が曖昧になるという経験もある。そこで何度も教材研究シート(後述)に戻り『達成している姿』『どこで評価するのか』を考えることでゴールがぶれることなく進めることができた」と話した。

 

評価の観点を子供に示し毎時間記入している

 

業者テスト不要で言語活動を評価

同校の研究主任である沖亜希子教諭は本授業について「すべての子供が自分の目標に向かって友達とつながり合いながら学び、自分の成長を実感できる姿を目指す複線型の授業デザイン実現のため、自己選択・自己決定の機会を増やし学習の見通しを随時示すようにした」と話す。

具体的には、情報収集は書籍もインターネットも対象とし、伝統文化をテーマにした多彩な図書を教室に持ち込んだ。ポスター制作は紙でもデジタルでも良く、デジタルの場合もどのアプリを利用しても良い。学習形態も、1人で進めてもグループで進めても良いこととした。

 

伝統文化に関する辞典や絵本など様々な書籍を持ち込んでいる

 

前述の「教材研究シート」とは、沖教諭が考案したもの。

「評価から活動を考えるため考案した。評価規準を確認し、それを達成している姿を具体的に想定、それを発揮できる構成要素を順番に書き込んでいくことで焦点化した活動ができると考えた。本シートにより評価をする力がつき、業者テスト不要で言語活動を評価している」という。夏休みには教材研究シートの講習を行い、初任者でも利用できるようにしている。

見通しを持たせるために「やることリスト」を子供とともに作成。また、1時間の見通しはホワイトボードなどに提示して、顔を上げると目に入るようにした。

言語活動の見通しも教室に提示。かつ端末でも見ることができるようにしており、進度に合わせて見通しも示すようにしている。

 

見通しをもった学びのために目的や観点、ルール等を教室内に提示

 

教科教育の目的を達成する授業づくり

国語教育を中心に同校の校内研究にこれまでの3年間関わっている山下敦子教授(神戸常盤大学)は「同校はもともとスマートスクール実証校。これまでの積み重ねが今日の授業につながっている」と語る。

「国語を中心に教科教育と特別支援教育の連携に取り組んできた。子供に委ねるためには授業構想と子供たち自身で支え合う環境づくりがとても重要。加えて様々な子供のニーズに応えられること、様々な媒体から情報を集めることを大切にした。本授業ではポスター制作というゴールを明確に示したことから、子供は『和の文化を紹介するポスターを制作するために効果的な表現方法について学び取ろう』という目的をもって説明文を読み取っていた」「自走のためには準備が必要。校内研究体制の充実による意識改革が求められる。教師の学びが子供の未来につながる」と話した。

本授業を参観した文部科学省StuDX Styleのメンバーは「個別最適な学びや協働的な学びに真摯に取り組んでいる。クラウド利用による共有と双方向の他者参照による学び合いを意識するとさらにステップアップできる」と話した。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年11月4日号掲載

 

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