東京都港区では2021年度より算数の学習者用デジタル教科書を全小学校に導入しており、第50回全日本教育工学研究協議会全国大会(東京都港区大会)の会場校である港区立小中一貫教育校赤坂学園赤坂小・中学校(髙松政則校長)には2024年度からデジタルドリル「タブドリLive!算数」などを導入して自由進度学習や個別最適な学びや協働的な学びにチャレンジしている。9月10日、同校5年算数・習熟度別の授業を取材した。授業者の樋口智治教諭(算数科主任)は専科教員として3・4・5・6年生算数を担当。大会当日の公開授業は5年少人数算数で行う。
児童はこの日の授業の流れをGoogle Workspace上で予め確認しており、学習者用デジタル教科書にもログイン済だ。
樋口教諭は学習課題を全員で共有した後、学習者用デジタル教科書を用いて一斉指導の形式で最初の問題に取り組み、重要なポイントなどをおさえた。その後、児童は教科書掲載の問題に各自で取り組んだ。
3の倍数と4の倍数を表に書き込む問題では、デジタルペンで教科書上に考えたことを直接書き込み、最小公倍数について気付いたことなどをメモしていた。
教科書への書き込みなどは各自でスクリーンショットをし、FigJam上でまとめ、ふり返りや共有などに利用されている。練習問題は二次元コードからコンテンツにリンクされており、自動採点ができる。
教科書掲載の問題がすべて終わった児童は「タブドリLive!」にアクセスして樋口教諭が配信した「先生からの課題」に挑戦。それも終えた児童は、「タブドリLive!」のドリルに自由に取り組んだ。単元のまとめのドリルは確認問題を一定基準で達成するとチャレンジ問題に取り組むことができる。友達の進行状況に刺激を受けているようで、自動採点で正解を確認しながら次々に様々な問題にチャレンジしていた。
授業の終わりには樋口教諭がGoogleスプレッドシート上で作成したふり返りの表に記入。これは他の児童のふり返りも共有できる。児童は「タブドリLive!」について「たくさんの問題を解くことができ、採点もできるので自宅でも学習しやすい」と話した。
コロナ禍でオンライン授業を試みたが、自宅で自ら進めることに課題を感じ、教員主導の授業を思い切り変えたいと考えた。そこで「タブドリLive!」と学習者用デジタル教科書を利用し、教員がいなくても児童が主体的に学びを進める力をつけることをゴールとして自由進度学習や個別最適な学び・協働的な学びに取り組んでいる。
管理画面から児童の学習履歴をすぐに確認できるので、誰がどんな箇所につまずいているのかがわかる。算数が得意でも、分野によっては苦手があること、不得意であっても得意な部分があることなども発見でき、支援が的確になったと感じている。また、支援児童もデジタル教科書に直接書き込むことで、問題を写す作業がなくなり、スムーズに取り組むことができている。保護者からもデジタル教科書の活用をより進めてほしいと感謝された。
この方法で進めている習熟度別の学習では、上位層と下位層の力が特に伸びている。学習のレベルがある程度近い方がリラックスしやすく刺激し合えるようだ。学習は1人で進めても良く、友達に聞きながら取り組んでも良いこととしており、「助けてほしい」は黄色、「1人で進めたい」は青などでスプレッドシート上に意思表示できるようにしている。現在は、教員がいなくても学びを始める児童や自宅でも主体的に学ぶ児童が増えている。
「タブドリLive!」は、教員がそれぞれの力に合わせた問題も配信でき、自ら自由に選択して問題を解くこともできる「算数の図書館」のようなもの。デジタル教科書内にリンクがあり、シームレスに取り組むことができる。問題を解くとポイントを獲得でき、それをキャラクター「タペット」のアイテムに交換できるなどのゲーム性が意欲につながっている児童もいるようだ。教員が配信した問題の方がポイントを高く設定されており「もっと出題して」と言う児童もいて、取り組む問題量が以前より増えている。
プリントを印刷したり集めたり採点したりする時間がなくなり、働き方改革にも大きく寄与している。
現在はふり返りの質を上げることを目標としている。何がわかり、何がわからないのかを常に意識することがさらに意欲的な学びにつながるのではないかと考えている。
本校は2021年度から2年間、区の研究パイロット校の指定を受けており、小中一貫教育校となった後も低学年から中学年では学び方の選択肢を増やすことを授業に取り入れ、高学年から中学生にかけては習得したスキルを自ら選択して学びを進めるなど、小学校1年生から9年生まで小中一貫校ならではの個別最適な学習や問題解決学習に系統的に取り組んでいる。
JAET大会の公開授業に向けて様々な教材を導入しているが「タブドリLive!」は個別最適に学ぶことに前向きになれる教材で、様々な進度の子供に対応しやすくなり、授業が変わり始めていると感じる。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年10月7日号掲載