8月9日、第9回私立公立高等学校IT活用セミナーを4年ぶりに開催した。田中博之教授・早稲田大学教職大学院は「自己育成」のための生成AI活用について講演。高等学校4校は情報Ⅰ・Ⅱの授業実践や大学入学共通テストに向けた取組、STEAM教育、創造的な学び等について報告した。
柴田校長は管理職としてのマネジメントやリーダーシップについて自身の経験を話した。
7月に取りまとめを公表した「次期ICT環境整備方針の在り方ワーキンググループ」(文科省)に委員として参加した。
本整備方針は整備機器等のリストではなく、令和の日本型学校教育の実現のための授業改善につなげる指針として位置づけられている。
GIGAスクール構想によりネットワークとクラウド、1人1台端末の利用が高校でも進んでいるが、その本質は「新たな価値を創造する」学びの実現にある。
高校における1人1台端末の導入の方法は保護者負担、自治体負担に二分される。神奈川県は保護者負担で指定端末を購入するBYADを原則としており、保護者の理解は不可欠。
そのためにも、生徒にとって何のための1人1台端末なのかを明確に示す必要がある。
最も重要なことが「自分の考えを多くの人に知ってもらえる」「世界中の人と情報発信・交流ができる」など生徒目線の端末活用による創造的な学びである。
「保護者と学校との連絡」などは端末を導入した結果実現する恩恵であり、目的ではない。
生徒目線の端末活用の一例として、デジタルポートフォリオを提案したい。
生徒自身の学びのプロセスとして動画や静止画、音声、リンク集、スライド、レポートなどの多様な形式のものをWebサイトにまとめることで、自分の学びを蓄積し、整理・ふり返ることができる。
例えば、美術の立体造形では完成作品だけでなく、ラフスケッチから着色までの過程も画像で残すことが可能だ。
生涯にわたり学び続けるためのプラットフォームとして、総合型選抜での活用も考えられる。
本校では教員が手本として、スライドやワークシートなどの教材をまとめたポートフォリオを作成している。生徒はこれを参照し、総合的な探究の時間で取り組んだ学びのプロセスを相互評価している。
今後は生成AIも活用していきたい。学びのプロセスをまとめる際に生成AIは効果的なツールと考えている。
1人1台端末活用を始め、誰もが経験したことのない新しい学びを推進するには管理職がまずやってみるというリーダーシップが重要である。
2020年4月、臨時休校中に校長として着任した際は、教員への端末配布、新入生へのアカウント配布、GoogleMeetやClassroomを活用するための校内研修など毎日がチャレンジの連続だった。
校長自らオンライン授業動画を作成し、その経験を教員に伝えることで活用が進んだ。
さらに、校内組織として「教育の情報化推進プロジェクトチーム」を作り、新しい課題はここで解決していくこととした。
教育の情報化は、教科指導におけるICT活用、校務の情報化、情報教育など細分化されており、管理職のマネジメントが必要だ。
管理職による授業観察にも力を入れた。年2回、全教員の授業を観察して助言を行っている。
授業改善のテーマをICT活用に特化しないのがお勧めだ。
授業をより良くしたい思いは皆持っている。すべての教員が迷いなく前に進むために主体的・対話的で深い学びを目指しつつ端末活用を取り入れている。
例えば、Formsを使って生徒全員の意見を収集、一覧に提示して導入に活用したり、発展問題と解説動画をクラウドで共有して主体的に学べるようにしたりなど、授業改善を目的とした端末活用は教員の納得感が強い。
学校HPの校長通信で取組を毎日公開しており、学校説明会で中学生の保護者から反応があるなど保護者理解や特色づくりにつながっている。
【第9回私立公立高等学校IT活用セミナー・東京:2024年8月9日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年9月9日号掲載