8月9日、第9回私立公立高等学校IT活用セミナーを4年ぶりに開催した。田中博之教授・早稲田大学教職大学院は「自己育成」のための生成AI活用について講演。高等学校4校は情報Ⅰ・Ⅱの授業実践や大学入学共通テストに向けた取組、STEAM教育、創造的な学び等について報告した。
都立小平高校の小松指導教諭は実習を中心とする「情報Ⅰ」の授業実践について報告した。
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年間指導計画は生徒がふり返りをしやすいよう学習指導要領に記載されている単元の順で作成。教科書選択も順番を考慮している。
授業は実習を多く取り入れ、グループワークや学び合いを重視した。知識を基にした計算問題を苦手とする生徒もおり、学び合いを活性化して理解を深める狙いだ。
長期休暇の課題は生徒が自分のペースで進められ、次の単元の予習となる内容として時数の不足を補っている。
夏休みは無償の外部教材「paizaラーニング」を利用してPythonを学習。本講座は内容が豊富で生徒も興味を持ちやすい(https://paiza.jp/works)。
冬休みは文科省「情報Ⅰ」授業・研修用コンテンツのうち、ネットワークの解説動画を視聴させた(https://www.nttls-edu.jp/joho)。
大学入学共通テストは、1年生から意識する必要はないと考えている。他教科でも1年時から共通テストを意識した授業は行われていない。
学び合いや興味を持たせることに重点を置き、知識の定着を図っている。
「デジタル化」の実習では知識の習得や計算をスムーズにするため、Excelを使い、模範解答を設定してif関数で簡単に○×判定ができる教材を作成した。Formsを活用しても良いが、Excelであれば即座に○×判定ができる。
わからない箇所は教科書を見たり、友達と相談したり、自学自習により学び合いが行われている。
「情報デザイン」では考えることを重視し、「受験生に小平高校をPRする」ことをテーマに、ブレインストーミングなどの手法も用いて必要な項目をグループで考え、それを実現するためのポスターを各自で作成。
同じテーマでもそれぞれの切り口や表現は異なる。端末を使ったギャラリーウォークで客観的な相互評価も行った。
「プログラミング」の実習はスモールステップで課題を設定したプリントで学んでから、総まとめとしてゲームづくりに取り組んだ。
授業で学んだ分岐構造や反復構造は必ず用い、かつ授業では学習しないWhile文もpaizaラーニングの講座を参考にして発展的に取り入れた。
「ネットワーク」の実習では、家庭用無線LANルータと1人1台端末を使って実際にネットワークを構築した。
紙ベースで配線を考える授業では十分な理解が進まない。生徒が実際に手を動かすことが重要だ。
冬休みの課題で家庭のネットワーク機器を調べ、授業で機器の役割や暗号化などを学んだ後、班ごとにネットワークを構築。正しく設定すると1人1台端末で通信が可能になる。
生徒は「実習で学んだことは印象に残る。テスト前に教科書を読むだけで思い出すことができる」と実習を中心に理解を深めることが知識の定着につながっていると感じている。
共通テストに向けた学習には3年生「情報Ⅰ演習」(来年度より「情報Ⅱ」)および夏期講習で取り組んでいる。
東京都高等学校情報教育研究会による試作問題の見解では、情報Ⅰの4領域のうち、(3)コンピュータとプログラミング、(4)情報通信ネットワークとデータの活用に重点が置かれている。
そこで、デジタル化、プログラミング、シミュレーション、データ分析・活用を重点的に復習するカリキュラムとしている。
Pythonと共通テストの表記を併記したプリントを作成し、Googleコラボラトリーを使って予想と結果の相違を確認できるようにして、生徒主体の学びを進めているところだ。
【第9回私立公立高等学校IT活用セミナー・東京:2024年8月9日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年9月9日号掲載