8月9日、第9回私立公立高等学校IT活用セミナーを4年ぶりに開催した。田中博之教授・早稲田大学教職大学院は「自己育成」のための生成AI活用について講演。高等学校4校は情報Ⅰ・Ⅱの授業実践や大学入学共通テストに向けた取組、STEAM教育、創造的な学び等について報告した。
田中教授は、生成AI活用により生徒が自らの資質・能力を育成する「自己育成」の視点が重要だと指摘する。
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NEXT GIGAの方向性として教科の知識や技能、思考力・判断力・表現力等の教科固有の資質・能力の育成と教科に準拠した知識活用力が重要になると考えている。創造力もますます重視されるだろう。
資質・能力を生徒が自ら育成する学びに生成AIの活用が考えられる。
そのためには、教科固有の資質・能力と、問題解決力など教科に共通する汎用的な資質・能力を教員が明確に意識し、生徒に可視化して、生徒自身が自覚しながら学習する授業設計を行うことだ。
かつ「初めは自分で考える」ことを徹底する。生徒が自らの知識を活用して仮説の原案や文章の下書きを自分で考え、生成AIと対話しながら修正・改善していくことで思考力や創造力などの資質・能力が育まれる。
高校2年生「地理総合」の「世界の地球的課題について考えよう」の実践では、知識を活用し、地理・地学的な教科固有の資質・能力を身につけるために生成AIを使用。
地球的課題についてグループでテーマを決め、いずれかの地域に当てはめて課題による影響を予測、解決策を考えた。
生成AIは課題の基礎的な知識を調べたり、被害を予測したり、具体的な解決の手立てを考える場面で活用していた。
人口減少をテーマにしたグループは、山梨県甲府市をケーススタディとして、過疎化が急激に進んだ地域において生活の質の低下という課題をスマートシティ構想により解決できないか、と提案。
インドを例に人口爆発と貧困の因果関係について調べていた生徒は、生成AIのほか検索エンジンも活用。複数のツールから適していると思うものを選択して知識を整理していた。
探究的な学習において、課題を設定し仮説を立てることは重要かつ難しいプロセスの1つだ。
高校1年生「総合的な探究の時間」で課題設定に生成AIを活用した実践では、生徒が自分で考えた仮説を読み込ませ、「この仮説は高校1年生が1年間で検証できると思いますか、調査期間から実現可能性を評価してください」などと生成AIに評価・修正を依頼。
仮説の練り上げ力、設定力が高まった。
毎時間生徒に、生成AIをどのように使ったか、特に回答の精度が向上したプロンプトなどを記録し修正・改善のプロセスのメタ認知を促した。互いに効果的なプロンプトを話し合う場面も見られた。
生徒は生成AIによる修正・改善のプロセスをメタ認知しながら自らマネジメントしていくことで、生成AIをパートナーとして適切に活用し課題解決力を高めていた。
【第9回私立公立高等学校IT活用セミナー・東京:2024年8月9日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年9月9日号掲載