8月1日、松山市内で教育委員会対象セミナーを開催。愛媛県教育委員会はメタバースを活用した不登校支援、四国中央市教育委員会・徳島県教育委員会はGIGA推進、宇和島東高等学校は教科等横断の探究型授業、堀江小学校は主体的な学びに向けた授業改善について報告した。
松山市立堀江小学校の石田年保教諭は子供主体の学びを目指して、「子供の動機づけ」と「子供にゆだねる『間』の授業デザイン」の視点で授業改善に取り組んでいる。
動機づけは自己調整学習を進める上で重要な要素の一つだ。
4年生・算数「垂直・平行と四角形」の「四角形のしきつめ」では、動機づけにNHK for Schoolを活用。課題意識を高めるストーリーで、主人公の視点で角度を意識して学ぶことができる。
授業では教員が提示した4種類の四角形から児童がそれぞれ選択し、すべて敷き詰めることができるのかを検証した。
終わった児童はPowerPointの「図形」の表示から自由に多角形を選択して発展的な学びに取り組む。端末により事前準備も容易になった。
学習方略(学習の方法や工夫)として自ら選択し自己決定できる場面が重要になる。
グループに1台の端末で学習していた時は、授業時間内で児童の考える「間」を生み出すことに限界があり、授業中に生まれた児童の新たな課題意識は授業終了とともにそのまま閉じられてしまいがちであった。
1人1台端末が整備された現在は、子供に学びを委ねるため、十分に試行錯誤できる「間」を授業外へ拡張することで「学習の個性化」につながる学びに取り組んでいる。
本授業では28人のうち17人の児童が用意した四角形以外で検証していた。
夏休みの自由研究として取り組んだ児童や多角形の角度に興味を持つなど興味を広げた児童も現れ、学習の個性化につながる活動が生まれた。
自ら疑問を持って追究する力を育むためには内発的動機づけを高めることだ。「なぜ?」「他には?」と考える批判的思考によって生まれる特殊的好奇心が内発的動機づけを促す。
そこで、「Q~こどものための哲学」を年間を通して継続的に視聴。日常生活の疑問を掘り下げていく中で児童の好奇心を引き出し、批判的思考力の育成に効果があると考えている。
体育科では1年生から6年生までマットを使って体を動かす単元がある。
eポートフォリオを活用して学習成果を蓄積することで、これまで単元内で次の授業へとつなげていた課題意識を、次の学年や中学校へとつなげる連続性のある学びを展開できるようになった。
OneNoteの学習カードに自分の試技を縦横2方向から撮影して貼り付け、手本の連続写真と一つひとつの動きを比較することで課題への気付きを促す授業設計を意識した。
前時との比較や全体の動きの流れの比較も容易にでき、児童は気付いたことの書き込みを通して意識を言語化でき、より明確な課題意識を持つようになった。
演技の映像があるので教員も児童1人ひとりの課題をじっくりと見取りやすくなり、「指導の個別化」につながっている。
児童の運動表象への理解も進んだ。技能自体は不得意でも友達にアドバイスするといった姿が見られるようになった。
授業後に運動有能感に関する意識調査を行ったところ、運動が苦手な子は統制感(練習すればできるようになるという自信)が大きく向上し、得意な子は受容感(皆から受け入れられているという自信)が向上した。
学期末にふり返りと来年度の目標を立て、家族から感想をもらうことで次年度や家庭へと課題意識の継続を図っている。
主体的な学びというと学びを子供に「手放す」イメージがあるが、そうではなく、子供の学びや思いを教員が見取り・支え・励まして、手放してもいいぐらいまで子供を育てていく意識が大切であると考えている。
【第111回教育委員会対象セミナー・松山:2024年8月1日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年9月9日号掲載