8月1日、松山市内で教育委員会対象セミナーを開催。愛媛県教育委員会はメタバースを活用した不登校支援、四国中央市教育委員会・徳島県教育委員会はGIGA推進、宇和島東高等学校は教科等横断の探究型授業、堀江小学校は主体的な学びに向けた授業改善について報告した。
SSH指定校の愛媛県立宇和島東高等学校は理数科・普通科・商業科からなる全日制と分校があり、学科や教科を越えて全教員が、ICTを活用した授業改善、教科等横断の探究型授業、STEAM教育に取り組んでいる。
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本校のテーマは「生徒も教員も新しいことに挑戦」すること。
全教員で取り組むために会議の削減など教員の働き方改革を進め、ICTを活用しながら様々なことに挑戦する主体的な学びを目指して取り組んでいる。
英語科では本校と分校の習熟度の異なる生徒同士をオンラインでつなぎ、愛媛大学の留学生がファシリテーターとなって協働的な学びに取り組んだ。イヤホンジャックに分配機を接続し3人で1台の端末を使って通信速度を担保。生徒は「自分の英語が伝わった」と達成感を得ることができていた。
デジタル教科書を活用した授業改善では、生徒が教員・TT役となって授業を行うことで、自主的に教え合う雰囲気が醸成され、答えに至る理由や途中の考え方を言語化する力がついた。
愛媛県独自のシステム「ELIS(エイリス)」も授業改善や働き方改革に役立っている。
CBTシステムで教員が問題を作成し正答率など可視化されたデータをもとに誤答の多い問題を重点的に説明。知識の習得を短時間で行い、探究的な学びの時間の確保につなげている。
PBTシステムは定期考査等に活用。採点時間の短縮による業務改善と分析データを使った授業改善を進めている。
SSHでは、全校生徒が課題研究に取り組んでいる。端末の導入で論文、プレゼン作成、提出までがスムーズになり、グループ内での協働的な学びも可能になった。
近隣に大学や研究機関がないため、ICTを活用して連携を図っている。愛媛大学の研究プログラムもオンラインで受講。科目等履修生として単位取得が可能だ。実験器具は大学から自宅等に送付してもらっている。
この取組に参加した生徒が校内のグループ研究のリーダーとなることで研究の質が向上した。
探究的な課題研究を各教科の学びとつなげるため、本校独自の「宇東ICEモデル」を開発し全教科に探究的な学習活動を導入。ICEモデル・STEAM教育推進委員会を設置してターゲットティーチャーを核に全校体制で推進している。
「宇東ICEモデル」は知識を相互に関連付けてより深く理解したり、他の学習や生活の場面で活用したりできるようにするための学習モデルで、授業内の「問い」をEフェーズへ深化させることを目指している。
国語と数学の教科等横断、かつ理数科と普通科文系の学科横断で行った探究型授業では、課題に対し「誰にとっても分かりやすい説明」を考え、その思考をメタ化して「問い」を深めた。
班に分かれて説明スライドを作成したところ、文系生徒の多くは文章中心で説明し、理数科生徒は箇条書きや図を用いて説明していた。
いずれも同じ解答にたどり着くがその過程は1つではなく、問題を解決するのに理系や文系の枠に捉われないことを学び、思考の広がりを実感できていた。
教科等横断型授業に全教員が取り組んでいる。実社会での課題と生徒に身につけさせたい資質・能力を設定して、各教科での学びを実社会の問題発見・解決に生かす内容だ。
例えば「商業」×「美術」で誰にでも分かりやすいGUI(アイコン)に大切なものを考えたり、「地学」×「家庭」で避難所生活について考えたりなどである。
公開授業や相互参観授業で教員研修の場を設け、1人1回以上実施することとしている。これにより職員室内で教科を越えて教員同士のコミュニケーションが活発に行われるようになった。
【第111回教育委員会対象セミナー・松山:2024年8月1日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年9月9日号掲載