8月1日、松山市内で教育委員会対象セミナーを開催。愛媛県教育委員会はメタバースを活用した不登校支援、四国中央市教育委員会・徳島県教育委員会はGIGA推進、宇和島東高等学校は教科等横断の探究型授業、堀江小学校は主体的な学びに向けた授業改善について報告した。
今年度より徳島県教育委員会教育長に就任した中川教育長は、小学校長としての昨年度までの取組と徳島県の教育DXに向けた取組を報告した。
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GIGA端末は学習のためのもの。児童生徒の学習を阻害しない端末導入、運営・管理体制を構築することが大切だ。
GIGA2期の整備が始まっているが、端末を長持ちさせるための運用や保守――起動の速さ、設定変更や故障対応の速さなどの管理体制の予算確保が重要だと学校設置者に伝えている。
ちょっとした故障にスムーズかつ迅速に対応できるか否かは、活用がうまくいく地区いかない地区の分かれ目であると感じている。
端末活用のためには教育大綱も重要だ。人間は「意味を理解する」ことで行動が変わる。何のためか理解できないまま進めると、やらされ感が強くなり、教育改革も端末活用も進まないだろう。
まずは「教員が一番頑張っている授業」から脱却し、児童生徒が頑張ることのできる本来の学びを展開することを授業の目的に据えることだ。
子供が「自分がやりたいことを見つける力」「それをやり遂げる力」を育むことを重視すると、GIGAスクール構想の理念が理解しやすいだろう。
教員は教育の専門職であり子供にとって最大の教育環境である。
自信を持ち、自ら学びを更新していく姿を子供に見せることができる教員であるために、教員を支える環境を構築することが学校や教育委員会の役割だ。
幼稚園教育要領において、良い学びの環境づくり――例えば廊下に水槽を置くと子供同士の会話が膨らむ、本棚の前に畳を設置すると寝転がって本を読んだり集ったりできるなど、環境構築が重視されている。
小中学校においてもこのような環境づくりに配慮することが、管理職や教員に課せられている。
学校業務の見直しも学びのための環境づくりの一環だ。
県教委では学校への調査・照会・アンケートについて調査項目の削減や重複の確認、様式の統一など見直すよう呼びかけている。
学校に届く案内やチラシ等も一斉配布を止め、職員室前に設置して自由に持ち帰るなど周知の方法を工夫することとした。
文部科学省からも、各種コンクールは学校応募だけでなく個人で応募できるようにとの話も届いている。
昨年まで在籍していた小学校では1年生から端末を使っている。6月の公開授業は1年生が学校探検を行い、カメラ機能や書き込み機能を使う内容だった。
思考ツールも低学年から活用しており、朝の時間を利用して思考スキルを高めている。どの学年でどんな活用をしているのかを教員間で共有することは、効率的な活用に結びつく。
校内研究や公開授業では学習指導案をオンラインで共有している。
従来は学習指導案を授業者が作成し、授業公開前に印刷して配布、それを基に研究協議する流れであった。
これを共同編集することとして、作成時から助言者や管理職がリアルタイムで助言したり相談したり話し合ったりするようにした。
さらに見学者に対し、前時までの授業の指導案や子供の様子の動画など関連資料も見ることができるようにした。
県教委では教育DXや端末の共同調達のためのチームとして「教育DXタスクフォース」と「共同調達検討部会」を新設した。
校務支援システムのクラウド化も小中高で進め、県域アカウントでポートフォリオを一元化したいと考えている。
学び合いが語彙を増やすとの調査結果がある。学び合いは端末活用の最も重要な目的だ。
SAMRモデルで示すと今のところS段階にいる学校が多い印象がある。GIGA2期ではさらに対話できる授業づくりを進めていきたい。
【第111回教育委員会対象セミナー・松山:2024年8月1日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年9月9日号掲載