気候変動の影響により夏季において猛暑日や熱帯夜の日数が年々増加しており、適切な予防や対処が求められている。
昨年5月、閣議決定された「熱中症対策実行計画」では、2030年に熱中症による死亡者数の半減を目指すことを目標に掲げた。
また、教育機関や職場、避難所において暑さ指数を計測し、それを熱中症予防に活かすことが具体的な施策の1つとして示されている。
タニタでは複数拠点の暑さ指数をリアルタイムに把握する「タニタ暑さ指数管理サービス」の提供を開始している。
「タニタ暑さ指数管理サービス」は、プールサイドや運動場、体育館や武道場、特別教室など任意の場所に設置した「黒球式暑さ指数センサーTC-350」により計測される気温や暑さ指数(WBGT)及び危険度をWeb上で確認できるもの。
本センサーでは日射や地面からの照り返しによる輻射熱を計測し、屋内外問わず、炎天下でも正確な暑さ指数を計測。
防水防じん性能を備え、専用組電池によりコンセントがない屋外にも設置できる。
日中はデータを10分おきに送信。任意で設定した暑さ指数に達するとアラートメールが管理者に送信されるので、その場にいる授業者が危険に気付かなくても管理者が対策をとることが可能だ。
1日の変動もグラフ表示されるので、行事等の開始時間や開催場所の検討に利用できる。
都立動物園である井の頭自然文化園(武蔵野市・三鷹市)でも「タニタ暑さ指数管理サービス」を導入している。
それまでは練馬地点の暑さ指数を基に対策しており、ミストや打ち水、動物舎内の空調の効いた部屋の扉の開放など、経験に基づいて動物や来場者への暑熱対策を行っていた。
2023年7~10月に本センサーを園内17か所に設置して、熱中症リスクに応じた適切な対策について検証。
時間や場所によって暑さ指数が大きく異なること、安全だと思っていた場所でも時間により熱中症リスクが潜んでいること、一方で木陰エリアなどリスクが低いところもあるなど様々な発見があったという。
熱中症リスクの可視化は、暑熱対策の担当者以外とも共通認識を持ちやすくなり、どこにミストシャワーを付けると効果的か、よりリスクの低いイベント実施時間や場所の検討など、園全体として暑熱対策の方針を定めやすくなる効果もあった。
担当者は、「熱中症リスクが高い時間や場所、リスクが低い時間や場所を知ることにより、より安心して来園者へのサービス提供や職員の作業環境への配慮、動物の健康管理ができる」と話す。
同園では実証実験終了後もセンサーを6か所設置して管理している。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年9月9日号掲載