NEW EDUCATION EXPO 2024東京会場において全国ICT教育首長サミットが開催され、全国各地の首長・教育長がNEXTGIGAに向けた意気込みを語った。
寺島史朗・文部科学省初等中等教育局学校情報基盤・教材課長
文部科学省初等中等教育局・寺島史朗学校情報基盤・教材課長が来賓祝辞で登壇。
寺島課長は「上手くいっている事例をみると首長の皆さんの理解のもとに、首長部局と教育委員会とが一体となって進めているところが多いと感じる。ともに一層の推進へと取り組んで参りたい」とあいさつ。
また、これまでのICT活用による成果について、
「主体的・対話的で深い学びに取り組む児童生徒ほど平均正答率が高く、個別最適な学びや協働的な学びは非認知能力を高める効果が出ている。こうした授業をより可能にするのが端末であり、教科で身につけたい力に迫るための授業での使い方の場面を考える段階にきている」と話す。
NEXTGIGAの課題として▼地域間・学校間の活用格差 ▼端末更新 ▼ネットワーク整備の3点を挙げ、特にネットワークについて、
「今の学校現場では不便がなくとも、日常使いが進むと早晩ネットワーク不足の課題に直面する。文科省が4月に示した学校規模ごとの当面の推奨帯域を満たす学校は20%程度。活用をとめないためにも今後目指す使い方に対し十分かという視点で、教育委員会と首長部局が連携して整備を進めていただきたい」と呼びかけた。
横尾俊彦・多久市長
佐賀県多久市では端末整備以前より全教室に電子黒板を導入、全校にICT支援員を配置。民間企業と連携しながらさまざまなツールの活用を進めた。
また、総務省の補助事業を活用してフルクラウド化に取り組み、テレワークを取り入れた。これにより教員の時間外勤務時間が減少。学力向上と学び方・働き方改革を同時に実現できた。
内山慶治・山江村長
熊本県山江村はICT教育に取り組み今年度で14年目。教員のニーズを踏まえ計画的に整備を行ったことで教員の指導力・子供の学力の向上につながった。
NEXTGIGAに向け子供主体を目指して授業改善に取り組んでいる。子供は自らデジタルとアナログを使い分け端末を道具として活用している。
本村では2回目の端末更新が始まる。地域の市町村と連携しながら進めていく。
森田充・つくば市教育長
茨城県つくば市は、今年度、不登校対策に注力。2年前よりモデル校に校内フリースクールを整備し支援員を配置したところ、30日以上欠席の子供が17%減少。今年度は全校に取組を広げ、支援員2人体制で更なる支援充実を図る。
市の独自教科「つくばスタイル科」を中心に、自らの疑問を学習課題として探究する学びにICTを活用。高校で継続して探究する子も現れ、探究的な学びが子供たち自身の学びになってきた。
生成AIの活用も推進。手引きを作成するなど学校の取組を支援している。
熊谷大・利府町長
宮城県利府町は人口を5万人規模まで拡大する市制移行を目指し、モータースポーツ振興や教育の充実による新たなまちづくりを推進。
「町はひとつの学校」を理念に、高校生を頂点とする異年齢交流(ブラザーシップ)やICT教育などに地域全体で取り組んでいる。学校給食の無償化、運動着の配布、医療費無償化なども充実を図り、ふるさと納税を地元の企業と連携して強化することでこれらの予算に充てている。
4月に東北大学の放射光施設「ナノテラス」が運用開始した。こうした先端技術分野などで活躍できる子供の育成を目指していく。
菅原文仁・戸田市長
埼玉県戸田市では昨年度、すべての小中学校全教室にホワイトボードと電子黒板機能付きプロジェクターを導入。教員が書いたことがすぐさま児童の端末に反映され、2画面表示で考えの共有も容易にできる。
不登校対策でのメタバース活用や、クラウドファンディングによるメタバース美術館の設立などICTの土壌があることで更なる取組が加速した。
戸田市版ゼロトラストも昨年度完成。端末1台で授業・校務・テレワークが可能になり働き方改革が進んだ。
福祉も含め子供に関わるデータを集約した教育総合データベースを活用して、不登校をAIで予測する実証にも取り組んだ。教育データ利活用のガイドラインは2022年12月に策定済みだ。
柴﨑光子・和光市長
埼玉県和光市は朝霞駐屯地があることから児童生徒の転出入が多い。そこで地域ブランド「和光ブランド」をテーマに地域の魅力を発見・発信する学習を行い、子供と地域とをつなぐ取組を実施。
ICT活用で整理・分析やまとめ・表現の方法が豊かになったことにより、子供が主体的に自らの得意なことを活かして取り組む様子が見られるようになり、これを見た他学年の教員も自らの実践に取り入れるなどよい循環が生まれた。
楠瀬耕作・須崎市長
高知県須崎市では市長部局も参加するICT教育推進本部を設置し市全体でICT教育を推進。チェコ共和国の中学生とのオンライン遠隔交流の取組は短期留学プログラムに参加する子が現れるなど効果を上げている。
民間企業等と連携しながら、小学校すべての学年でプログラミング教育を実施。保育園では電子黒板を活用した外国語学習に取り組んでいる。
子ども第3の居場所「てくテックすさき」を2022年3月に開設。不登校支援を行う教育支援センターを併設し、3Dプリンタやロボット、映像制作など最新機器を整備。授業で本施設を活用した学習も行っている。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年7月1日号掲載