第4期横浜市教育振興基本計画において「横浜教育DX」に取り組み、児童生徒、教職員・学校、教育委員会の三者をつなぐデータ活用の推進に取り組んでいる横浜市教育委員会(小学校336校・中学校144校・義務教育学校3校・高等学校9校・特別支援学校13校)。
昨年度から学習支援システムや家庭と学校の連絡システムの構築に着手しており、今年度から稼働を開始している。
家庭と学校の連絡システムを全市立学校505校で導入したことによるメリットや今後の予定を中川譲課長(学校教育企画部小中学校企画課情報教育担当)と田邊智優係長(同・小中学校企画課)に聞いた。
保護者が朝の忙しい時間帯に、学校に電話で欠席・遅刻連絡をする負担があることや、学校の電話回線にも限りがあることからつながりにくい面に大きな課題を感じていました。
学校が個別に連絡ツールを導入している場合もありましたが、無償ツールでは広告が入ってしまったり、有償ツールでは保護者の費用負担が発生したりしていました。
また、兄弟姉妹が小学生と中学生の場合などは連絡ツールが異なることにより、ツールを使い分けたり、設定に手間がかかったりと、利便性に課題がありました。
そこで、学習支援システムと家庭と学校の連絡システムを市教委で一括導入するための公募型プロポーザルを行い、その結果、本市のように学校数が非常に多くても耐えられる仕組みとして家庭と学校の連絡システム「すぐーる」を導入することとなりました。
昨年秋頃から市内105校で「すぐーる」の実証を行ったところ、導入・運用は予想以上にスムーズでした。
保護者は利用開始前に「すぐーる」のアプリをインストールし登録を行います。その際に必要なのは、教職員が管理画面から印刷した手順書2枚のみ。登録の仕方や使い方がわからない場合も保護者や教職員は直接ヘルプデスクに問い合わせることができます。
アプリであることのメリットも明確になりました。かつて便利であったメールも、今は様々なメールが届くことから、重要な連絡を見落としやすくなっています。
アプリであれば学校に関する連絡に限られることから見落としにくく、いつでも確認できます。アプリも教職員が使う管理画面も、直感的に操作でき使いやすいと好評でした。
全市立学校で稼働すると約26万人の児童生徒の保護者が使用することになります。他に例がない規模なのでスムーズに稼働できるか少し懸念していましたが、大きな障害もなく安定して稼働しています。
市教委による一括導入には様々なメリットがありました。
まず、市立小中学校・義務教育学校・高等学校・特別支援学校に通っている児童生徒の保護者にとって、学校への欠席・遅刻連絡、学校からのお知らせやアンケートはこのアプリ内で一本化でき、市立学校であれば転校先や進学先でも同じアプリを利用できます。教職員にとっても、異動先で同じシステムを利用できることは業務効率化の点からもメリットです。
また、教職員はお知らせを紙に印刷し、クラスごとに仕分けて配付する負担が軽減され、児童生徒と向き合う時間が増えました。併せて、ペーパーレス化にもつながりました。
ブログのように使えるタイムライン機能も喜ばれています。普段の活動や運動会、宿泊学習の様子が分かる写真などを保護者に届けやすくなりました。閲覧者が限定されているので安心して発信できます。保護者にとっても、学校HPよりも学校の情報がより身近になります。
ある小学校では児童の広報委員会が学校の様子の記事を作成し、写真を撮影してそれを教職員が発信しています。児童の活躍・発信の場が増えることは教員にとっても児童にとっても保護者にとっても喜ばしいメリットです。
「すぐーる」では、PTAチャネルも設定できます。
PTAからのプリントはこれまで、印刷してクラスごとに仕分けして学校に配付を依頼するなど手間がかかっていました。「すぐーる」での発信が可能になることで、PTA役員などが作業のために集まることも減り、明らかな時間短縮効果がありました。印刷コスト減にもつながっています。
本市では、外国籍・外国につながる児童生徒が多く在籍していることから、13言語に対応可能な自動翻訳機能も役立っています。保護者は自分が選択した言語でアプリから届く情報を閲覧することができ、教職員からも好評です。
将来的に、学習支援システムや校務支援システムとの連携を検討しています。
また、本市では現在、こども青少年局で子育て情報を発信し、かつ各種手続きが可能なアプリの開発を進めており、将来的に「すぐーる」と連携することを構想しています。
これにより未就学から学齢期まで、必要な情報をアプリ内で登録者に届けることができます。様々なシステムのデータ連携を図ることで、保護者の利便性向上・教職員の働き方改革に寄与していきたいと考えています。
学校・家庭・地域をつなぐことができる連絡アプリ。2024年4月末現在146自治体が導入している。教育委員会や学校、部活動やPTA、地域(課外活動やスクールバス運行会社、学童ほか)など複数の学校運営関係者がそれぞれの登録者に発信できる。学校写真販売サイトや学校徴収金システムとの連携も可能。
詳細=https://www.sugumail.net/sughool/
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年7月1日号掲載