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教育ICT

「探究」で子供を主語にする学校へ~荒瀬克己会長・第12期中央教育審議会

2024年6月4日

現在の高等学校学習指導要領では「総合的な探究の時間」が、各教科においては古典探究や地理探究、日本史探究、世界史探究、理数探究基礎及び理数探究などが新設されている。

この「探究」に20年以上も前から取り組みかつ抜きんでた実績を上げているのが京都市立堀川高等学校だ。京都大学現役合格者についても40人以上(2022年度)である。

同校に20年以上勤務し「探究」に取り組んだ荒瀬克己氏(独・教職員支援機構理事長)は第12期中央教育審議会会長を務める。現場の教員出身の中教審会長に、多くの教育関係者が注目をしている。

荒瀬氏は、「学習指導要領で重視されている主体的・対話的で深い学びにつながる個別最適・協働的な学びは、『自立した学習者』を育てる『子供を主語にする学校』につながる」と話す(公益社団法人 日本理科教育振興協会 第53回総会 基調講演より)。

荒瀬克己・第12期中央教育審議会会長/(独)教職員支援機構理事長

「探究」で子供を主語にする学校へ~子供が学び、学び合う学校とは

令和3年度の中教審答申「令和の日本型学校教育の構築を目指して」には「自立した学習者」「教師は子供の伴走者」などの表現がある。この解釈を考えることが教職員に求められている。

私なりの「子供を主語にする学校」のイメージは「子供が学び、かつ学び合う学校」である。そのためには、子供に学びを委ねる必要がある。

「単元内自由進度学習」が注目されている。単元のなかでどういう学び方をするのか、子供自身に任せるものだ。これは、複数の教科で行うことで、どの教科をどのような順番や比重で学ぶかについても含めて、自分で進めることができる。

このことは以前から取り組まれてきたが、GIGAが大きな条件整備になった。委ねる学びは教員の準備が大変であるが、子供の豊かな学びという点で考えるととても重要だ。

堀川高校は「探究」で二兎を追った

堀川高校は、1999年から「探究」を始めた。

当時、京都の公立高校からはなかなか大学に合格できなかった。しかし、希望する大学に合格できないのは問題だとしても、大学に合格するだけが高校教育の役割ではない。

そこで「大学合格」と「大学入学後にも卒業後にも役立つ力の育成」という「二兎を追う」ため「探究」に取り組んだ。

堀川高校の教育目標は「自立する18歳」に育てること。中教審の令和3年答申に重ねると「自立した学習者」に導くことにつながっている。

生徒には元来学ぶ力がある。そのことを知ったのは、初めて教員になって伏見工業高校に赴任したときだ。

生徒は従順に勉強するものだと思っていたので、そうでない生徒に驚いた。悪戦苦闘するなかで、次第に、なぜ学ぶのか、学校での学びが何の役に立つのかという疑問が生じるようになった。

そんな時、先輩の教員が生徒には力があると信じて授業をしていることに衝撃を受けた。

備わっている力を引き出す。その当たり前のことを進める場が「探究」の取組である。

探究の「みちすじ」を経験的に学ぶ

生徒に「すべては君の『知りたい』から始まる」というメッセージを送った。生徒の「知りたい」「やってみたい」「こうなりたい」を大切にする。しかし、最初からそれが明確な生徒ばかりではない。自分自身に気づくための過程が必要だ。

探究の「型」を身につけることは、知りたいと思うことをわかるようにするアプローチである。

何がしたいのかという問いを意識させながら、学び方、学びの作法といったものを伝える。情報収集の方法や正しい情報の見極め方、一次情報の重要性、また、論文の書き方などだ。

次に、学問分野ごとに学校が用意したテーマで少人数のゼミ形式で「探究」を実際に進め、実践を経験する。

最終段階は個人研究である。自分でテーマを設定して取り組み、論文に仕上げる。1人で進めることで、取組がすべて俯瞰でき、失敗も含めて学びにつながると考えた。

ただし、1人よがりにならないよう、何に取り組み、なぜ始めたか、どこが面白いか、どこで失敗したか、何に困っているかなどについて生徒同士が話し合う場も設ける。

ポスター形式の発表をする際のポイントは発表内容が完成したものではなく、その少し手前のものという点だ。発表する生徒は、質問や発言に対して真摯に臨める。質問や指摘を受け、自分の取組を省察し、考えを深め、論文を完成する。

これらの取組を進めるうえでスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業は大変ありがたかった。グループワークのファシリテーターや個人探究の伴走者としての、大学院生のティーチングアシスタント(TA)もこの予算で確保した。

生徒主体の学校に

探究の手法が身につくことは、汎用的な力が備わることだ。

生徒は「探究」により、やってみようとする力、相手に伝わっているのかを意識しながら話す力、地道に進める力、わからないことに耐える力が養われていった。学園祭も海外研修も、学校説明会も、すべて生徒に任せることができるようになった。

「探究は『たのしんどい』」と言った生徒がいた。自分で取り組むことは、しんどくてたのしい。

2016年の中教審答申は「探究」について、気付きから疑問を形成するなど、問いを立てることを重視したうえで、評価は、成果よりも過程を重視することだと指摘している。そのためには、記録が重要だ。試行錯誤し、どう考えたのかを記録してふり返ることで自分の考えの変化にも、学習指導要領前文にある「自分のよさや可能性」にも気付くことができる。

生徒は学び、学び合うことで成長する。自立した学習者に育つきっかけを用意することのできる学校でありたい。

教育家庭新聞教育マルチメディア号6月3日号掲載

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