大日本図書が開発したデジタル教科書ビューア「つばさブック」が好評だ。既に小学校理科や算数など同社のデジタル教科書が搭載されている。最大の特長は低速度回線下でもストレスなく表示・ページ遷移できるスピードと13か国語の多言語対応だ。
これまでと大きく異なるスピード感がつばさブック最大の特長だ。学校回線1人あたり1Mbps(文科省推奨は1人あたり2Mbps)下で検証したところ、つばさブックでは、約2秒で起動。動画再生の開始も1秒程度であった。
従来、大容量のデジタル教科書を多人数でストレスなく再生するためには、十分な帯域やセッション数の確保が必要とされていたが、この常識を覆す速度感を達成。「高速動作をすべての前提にする」という設計思想により、コンテンツ量やデータサイズ、ユーザ環境等にも左右されない高速動作を実現した。
つばさブックに搭載された2024年度版のデジタル教科書を利用した教員からは「起動時やページ操作時の待ち時間がないので授業のテンポがこれまでと変わった」という声が届いているという。
学習者用デジタル教科書で特に課題とされてきた起動や動画再生の待ち時間を大幅に短縮したことにより、ストレスを大きく軽減。ページめくりボタンの長押しによる高速ページめくりや、キーボードによる快適操作なども好評価につながっているようだ。
外国にルーツを持つ児童生徒の多い地区の教員に評価が高いのが、AI翻訳による「多言語機能」だ。
つばさブックの多言語機能では、特別支援機能の「リフロー」と「読み上げ」が13か国語に対応(※1)。選択した言語で「読み上げ」と「リフロー画面」が動作。読み上げと同時に下部に該当箇所の字幕も表示される。
年々増えている外国籍の児童生徒数は文部科学省調査によるとこの10年で約1・5倍になり、半数以上の自治体に外国籍の児童生徒が在籍している(※2)。
言語別にみるとポルトガル語を母語とする児童生徒の割合が最も大きく、全体の約4分の1を占めているものの、地域により構成は異なる。日本語の習熟度や学習意欲、また母語の習熟度も児童生徒それぞれで千差万別だが、まずは教科書の多言語化により少しでも学習のサポートになる場面を増やしていきたい考えだ。
AI翻訳の精度も各国の教員や留学生、教育関係者の協力により高めている。
(※1)ポルトガル語、中国語《簡体・繁体》、英語、韓国語、フィリピノ語、ベトナム語、スペイン語、ネパール語、インドネシア語、タイ語、ウクライナ語、クメール語に対応。読み上げはブラウザによる一部制限あり。
(※2)日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果について(2022年10月)
端末を迅速に使いこなす人ほど裏技やショートカットを頻繁に利用する傾向がある。
そこでつばさブックの「サポート」に「つかいかた」コンテンツを配置し、タッチ操作時のコツやキーボード操作時のショートカットなどをまとめた。
長押しやダブルタップでツールを簡単に表示したり、付箋の「うかぶ」機能によって他のページやコンテンツの上でも常時表示させたりするなど、便利な使い方を紹介している。内容は順次更新中。
「つばさブック」は、クラウド版とダウンロード版を提供しており、クラウド版ではデジタル教科書が開かれた回数を表示できるアナリティクス機能も搭載。今後より詳細な情報をフィードバックできるように更新していく予定だ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年6月3日号掲載