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教育ICT

生成AIでどう学ぶか<山内祐平教授・東京大学大学院情報学環>~教育の情報化フォーラムより

2024年4月17日
生成AIの教育活用
<山内祐平教授・東京大学大学院情報学環>

<山内祐平教授・東京大学大学院情報学環>

生成AIの教育利用には教員が業務で活用する側面と児童生徒・学生が学びに活用する側面がある。「教育の情報化推進フォーラム」(31516開催・主催JAPETCEC)では、大学生の生成AI活用や研究成果から得られた知見について山内祐平教授(東京大学大学院情報学環)が報告した。

◇ ◇ ◇

生成AIは「種も仕掛けもある」言語予測モデルであり、どんどん成長していくもの。規制もどんどん変わっている。Gemini13歳以上でOKになり、ChatGPTも保護者の許諾があれば13歳以上の活用がOKになった(表参照)。しかし生成AIの教育活用については「学生や子供が使うことの漠然とした不安」がある。

まず、「生成AIを搭載した教材を活用するのか」「ChatGPT等などの生成AIの仕組みを活用するのか」という選択肢がある。米国発のeラーニング「カーンアカデミー」にも生成AIが搭載されており、学習モードでは答えは提供されずヒントのみを出すような仕組みだ。「生成AIを搭載した教材」には設計者の意図が反映されており、このような教材は今後もどんどん増えるだろう。

判断に迷うのは、学習者による生成AI活用そのものだろう。本学の学生や教員は論文を英語で発表するため、英文添削で生成AIを活用している。これは用途が明確で便利な使い方である。一方で学習そのものにAIをどう活用するのかについては試行錯誤中だ。

■生成AIALの「問の質」高める

講演の様子。山内教授の講演後は中高教員からの質問が多かった

山内教授の講演後は中高教員からの質問が多かった

初等中等教育を対象にした研究事例では都立高生を対象に「探究学習の問を立てる」際に探索的に生成AIを活用した。

「探究」では問の立て方が難しい。例えば初期段階の問--「織田信長はなぜ強かったのか」「なぜ先進国と発展途上国という格差が生まれるのか」等は、そのままでは素朴すぎて探究の問にはならない。これを高度な問とするために学術用語を基盤としてブラッシュアップすることとした。

本実践ではこれをシステムに実装するため機械学習により、約2年かけて学術用語を100以上学習させたのだが、それが今やプロンプトでできてしまう。生成AIはこれまでコストが高すぎてできなかったことが可能になるツールといえる。

例えば「食事がどのように変化したのかを学術用語で示して」と生成AIに入力するとグローバリゼーションやヨーロッパ中心主義、文化圏の接触などの学術用語にたどりつく。そこでそれらの用語それぞれを調べて関連資料を読み込み、問を推敲。問をブラッシュアップする。初期段階の問が「各国の食文化は戦争や経済発展を経てどのように影響を受けてきたのか」等となる。

これを学術用語ではなく通常の検索で行うと、二次情報にたどりつくことが多く、他者の考察に影響を受けてしまう。学術用語を経由して探索することで個別の言葉の理解が深まり質が高まる傾向がある。

■生成AIで作文の質を向上

もう一つ、最近の研究成果で興味深い内容を紹介する。

構造化された高度な作文を生成AIで支援できないかと考えた。そこでChatGPTに、複数文献の「構造的な要約」すなわち「正解」を学習させて学生の要約文に対するアドバイスを行うシステムを作成。本システムを活用していない群では成績上位の所属大学の方が点数が高いが、システム活用群では有意差がなく、システム活用の効果が見られる結果になった。

さらに、学習済のシステムではなく、通常のChatGPTを使った群では必要な構成要素が抜け、文章レベルが低くなる傾向が見られた。自分で自分の文章が良くなっているかどうかが判断できない面もあり、そのまま生成AIを与えるだけでは学生に経験させたいプロセスがスキップされてしまったと予想される。

生成AIで学習効果を得るためにはプロンプトを用いて教員の知識を生成AIに展開すること、すなわち生成AIを鍛える必要があるのではないか。

■生成AIの教員利用

教員の生成AI活用について本学では昨年5月、生成AI活用ガイドラインを策定したうえで担当教員の判断に委ねるという方向性を示した。また、教養教育高度化機構EⅩ部門の中澤明子特任准教授が中心となり東京大学所属の教員を対象に駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する」を開催している。

▼教育の情報化推進フォーラムアーカイブ配信<5月末まで>

https://www.japet.or.jp/com-edu-forum/2023-archive/

教育家庭新聞 新学期特別号 2024年4月15日号掲載

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