7月12日、東京都内で第110回教育委員会対象セミナーを開催。内閣官房の角田参事官補佐はデジタル田園都市国家構想交付金｢デジタル実装タイプ｣について説明。横浜市教育委員会は学習ダッシュボード、新座市教育委員会はゼロトラスト・フルクラウド化、甲府市教育委員会と千代田区立九段中等教育学校は独自の生成AIシステムについて報告した。
千代田区立九段中等教育学校は独自の生成AIサービスを開発中だ。教育DX推進担当の市川淳尉主任教諭、廣瀨紘太郎教諭、鹿野智人教諭が、開発中のサービスと生成AIを活用した授業実践について報告した。
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企業と連携して本校独自の生成AIサービスの開発を進めており、今年度後期の実装を予定している。既存のサービスと異なる点は主に3つ。
1つめは、学校内のデータを生成AIに学習させ、それをもとに回答を生成する点。参照されている資料が明らかで安心感をもって利用できる。
さらに、一部のソースデータを選択し、その内容からのみ回答を生成することも可能。ログイン時に教員と生徒を識別し機能や連携するデータをログイン情報に紐づけて設定することもできる。
2つめは、ChatGPT－4oやGeminiなど複数のモデルを用意し使用場面に合わせて選択可能な点。保護者がそれぞれのサービスと契約することは不要だ。
3つめは、生徒や教員の作成したプロンプトを保存・共有できる仕組みとする点。教員が授業で使うプロンプトを作成し指定することでスムーズな学習につなげたり、生徒が授業時間外や自宅で作成したプロンプトを投稿して本システムで共有し活用したりしていく。これにより生徒による新しい使い方の発見につながると期待している。
開発中のシステムの準備段階として、全生徒・教員が自由に使用できる校内生成AIサービスを学校で契約している。
安全に利用するため、4月初めに全校一斉セーフティ教室を開催。生成AIの仕組みや注意点を学んだ上で、活用の3箇条を生徒自身が話し合いながらまとめた。
生成AI活用に向け、情報科では、プロンプトエンジニアリングを学ぶ授業を実施。役割付与や条件設定など重要なキーワードを学び、生徒自身が効果的な使い方や注意点を調べてまとめ、発表し、実際に体験した。
これにより、情報収集の1つの手段として使い方や良さを実感することで他の授業でも生徒が生成AIを自ら活用するようになった。
「モデル化とシミュレーション」の学習では大学生が自立して生活するための収支を予想。生徒は生成AIとの対話を通して居住地や学部による違いなど、検索するだけでは分かりにくい事項を確認していた。
実習では1人ひとりの様子を教員がすべて見取り、対応にあたることが難しい部分もあるが、生成AIが対話相手となることにより、支援や発展的な取組がしやすくなった。
生成AIを自由に使える環境があり、効果的な使い方を生徒が知っているため、生徒は自ら活用しつつ、さらに教員にも聞くという個別最適な学習の取組が進んでいる。
生徒も教員も試行錯誤しながら活用を進めている。
英語科の実践では、生徒が書いた英文を校内生成AIで添削。自動添削された結果を鵜呑みにせず、生成AIに修正された箇所について分析することで学びを深めた。
定期考査では生成AIを用いて生徒の実態に即したリスニング問題を作成した。校外学習の訪問先など学校独自のテーマで作成でき、かつ作問時間を短縮できた。
国語科では古典「枕草子」の魅力である対比と変化について画像生成AIを用いて短い動画で表現。生成したい情景についてプロンプトを工夫し理解を深めていた。
生成AIで小説を作る授業では、生成された小説から論理的ではない箇所を見つけて推敲。正しいとは限らないからこそ考えるきっかけになる。生成AIと共に良いものを作るという視点が学びにつながると考えている。
総合的な探究の時間では、探究の問いの候補について検討する際や、研究の要旨や研究計画、文章の添削など、より良いものに練り上げるために生成AIを活用した。
【第110回教育委員会対象セミナー・東京：2024年7月12日 】
教育家庭新聞 夏休み特別号 2024年8月12日号掲載
