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教育ICT

DXハイスクールを支援する 学習活動と紐づくデジタル環境整備を<京都精華大学 教授 鹿野 利春氏>

2024年4月16日
第108回教育委員会対象セミナー・神戸

3月5日、神戸市内で第108回教育委員会対象セミナーを開催。田中博之教授・早稲田大学教職大学院は教育における生成AI活用の考え方と実践事例、鹿野利春教授・京都精華大学はDXハイスクールの狙いについて講演。常翔学園中学校・高等学校は自律的学習者を育む取組、姫路市立安室中学校は生徒主体のICT利活用の取組について報告した。


京都精華大学 教授 鹿野 利春氏

京都精華大学 教授 鹿野 利春氏

一社・デジタル人材共創連盟(以下、デジ連)は文科省「高等学校DX加速化推進事業」についてDXハイスクールプラン集を公開。代表理事を務める鹿野教授が本事業の狙いと本プラン集について説明した。DXハイスクールの交付決定は4月の見通し。環境整備やカリキュラム作成の具体的な検討の参考になる。

…◇…◇…

DXハイスクールの目的はデジタルやグリーンなどの成長分野の人材育成という国の目指す方向に高校段階から対応すること。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)との違いは、SSHが全国218校で先端のカリキュラム開発と先進事例の創出を目的とするのに対し、DXハイスクールは全国1000校=5校に1校を対象に、全体の底上げを狙う点だ。理数系への転換や職業系の高度化を支援して理系分野への進学率を引き上げる。

さらにDXハイスクールは、デジタルに重きを置いた環境整備が予算の大きな割合を占める。その上で大学・企業の協力を得て理数教育を重視しつつ文理横断的・探究的な学びを拡大。生徒が自分の問題意識に気づき、社会と関わりながら課題解決していく探究的な学びにより、自己肯定感や自己有用感、社会に関わろうとする意識を醸成する。この探究にはデータサイエンスによる分析や動画を使ったアウトプットなどICTが欠かせない。

DXハイスクールの申請要件には「情報Ⅱ等の開設」とある。これには、数理・データサイエンス・AIの活用、学校設定科目を含む実践的な教科・科目、総合的な探究の時間や職業系の科目の高度化も含まれる。

デジ連ではデジタル環境整備のための資料提供や、企業・大学・学会・NPOとの連携支援、地域におけるエコシステム形成など、「産官学協議の場」としての位置づけを活かし、DXハイスクールの企画段階から関わることできめ細かな支援を行っている。

■デジタル環境整備のポイント

デジタル環境整備のポイントは、学習活動と紐づけて導入する機器を選択すること。各学年のカリキュラム・マネジメントや学習活動全体を見渡し、学校全体で必要なものを取り入れていく。

例えば、1年生「情報」でデータを活用した問題発見・解決を学び、2年生「総合的な探究の時間」に活かす。そのためのPCやクラウド環境を整備する。探究ではアウトプットも重要だ。3Dプリンタやポスタープリンタ、動画ならばカメラ、スイッチャー、編集するための機器、ソフトウェアが必要になる。外部の専門家による指導も考えられる。

■細部まで配慮してモデルプランを作成

DXハイスクールプラン集では「情報、数学等の教育を重視するカリキュラム」「ICTを活用した文理横断的な探究的な学びの強化」をテーマに、A①・A②・BCDEプランを用意。例えば、A②プランはデジタルを活用した情報Ⅱ、探究や課外活動の推進について特に想像力を伸ばすプログラム、Dプランは生成AIを使用したプログラムだ。

各プランは「デジタルものづくり」「ビデオ編集」など用途ごとに必要な機器とその個数および予算、できること、留意点をまとめたモジュールを組み合わせて構成。

機器の特性、消耗品、ランニングコスト、扱いやすさ、廃棄の方法まで考えた。

例えば「デジタルものづくり」で必要な3Dプリンタは3台を見込んでいる。コップ1個の造形に4時間程度かかる場合もあるため、待ち時間を考慮すると3台は必要という計算だ。また、3Dスキャナを導入すれば3Dプリンタでゼロから設計するよりも効率化が図れる。レーザーカッターは建物外に排気を出せる場所に設置する必要がある。これを知っているだけで教室の確保、搬入に戸惑わずに済む。

外部人材の活用に関する項目も記載。SSH担当教諭やデジタル・シティズンシップの第一人者による講演、先端IT人材によるキャリア教育などを想定したデジ連登録講師の派遣も可能だ。地方の企業人材が地元の学校と連携するエコシステムの形成も支援。各プランをモデルとして、教育委員会からの相談、要望を受け付けている。

 

【第108回教育委員会対象セミナー・神戸:2024年3月5日 】

教育家庭新聞 新学期特別号 2024年4月15日号掲載

 

  1. 早稲田大学教職大学院 教授 田中 博之氏
  2. 京都精華大学 教授 鹿野 利春氏
  3. 常翔学園中学校・高等学校 校長 田代 浩和氏
  4. 姫路市立安室中学校 教諭 安木 孝太氏
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