2月19日、名古屋市内で第107回教育委員会対象セミナーを開催。高橋純教授・東京学芸大学と春日井市教育委員会の水谷年孝氏がNEXTGIGAに向けた端末・クラウド活用について講演。豊田市教育委員会はAVDを活用したネットワーク統合を、リーディングDXスクールの名古屋市立矢田中学校はプロジェクト型探究学習の取組を報告した。
名古屋市立矢田中学校は2022年度より、名古屋市「ナゴヤスクールイノベーション事業」の実践モデル校として「子ども中心の学び」を実現するプロジェクト型の探究学習に取り組んでいる。2023年度からはリーディングDXスクールとしても指定。西教諭が報告した。
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本校のプロジェクト型探究学習のテーマは「ゆるやかな協働の中で、夢中になれる探究」だ。
昨年度、類似する課題を選択した生徒同士でグループを作って取り組んだところ、一部の生徒に頼ってしまうなど課題があった。
そこで、今年度は最初に「探究学習で身につけたい力」を生徒が考え決定した上で、自分の興味関心から1人ひとりが探究課題を設定し、ゆるやかに協働しながら進める流れとした。
まず、生徒それぞれが探究する課題を見つけるための予備調査を実施。「中学生の自分たちにできる社会貢献」をキーワードとしてインターネットや書籍で社会課題を調べたり、学区内の気になる場所を端末のカメラで撮影したりして課題につながりそうな情報を収集する。撮影した写真は、場所や気になること、問題点が一見して分かるようにまとめ、学年の共有フォルダに保存。全体で共有することにより、課題の広がりを狙った。
共有した課題の中から1人ひとりが興味関心の向くものを選択し、シンキングツールを使って観点別に比較したり、関連付けたりしながら情報を整理して探究課題を設定。昨年度は紙の付箋で共有・整理したが、端末を活用することでよりやりやすくなった。
課題を決めたら、キーワードの「中学生の自分たちにできる社会貢献」を目指して探究学習のゴールを設定する。例えば「より良いまちづくり」をテーマに交通事故ゼロの学区にするためにポスターを作り掲示する、SDGsの目標1「貧困をなくそう」を実現するために募金活動を行い発展途上国に寄付する、など。生徒同士で互いにプレゼンし、質問やアドバイスをし合ってより良いゴールへと練り上げた。
課題解決に向けて計画を立て校内外での活動に取り組む。関係者へのインタビューや専門家に対面・オンラインで助言をもらったり、Formsでアンケート調査をしたりしながら、活動場面によって、個別、ペア、グループとゆるやかに協働しつつ学習を進めた。
プロジェクトの成果にも端末を活用する生徒は多い。募金活動のためのポスター作成や、小学校で交通安全の意識を高める授業を行った生徒はクイズや動画を自作。助言をもらった専門家に課題とその解決方法についてプレゼンツールでまとめて提案した生徒もいた。
最後のふり返りでは、プロジェクトの内容や身につけた力、自分の学びをまとめて学習発表会で発表。保護者やプロジェクトに関わった外部の専門家なども招き、様々な人からフィードバックをもらうことで、生徒がより成長していた。
取組を通して生徒の端末活用の無限の可能性を感じた。プロジェクトの内容をYouTubeで限定公開したり、パンフレット内に掲載しきれなかった内容を閲覧できるサイトを作成したり、学級閉鎖中に生徒同士でオンライン会議を開いて自主的に意見交換をする生徒も現れた。
生徒主体のプロジェクト型探究学習を進めるには個別の支援が必要となる。そこで、生徒の姿を「どんどん進めていく生徒」「戸惑っている生徒」「進もうとしない生徒」に分け、教員に対して、伴走の姿と具体的な声かけを例示した。
自らどんどん進めていく生徒には、生徒が自分の学びをふり返り、整理できるような声かけを意識してファシリテーター型の支援を実施。
探究を進めてはいるものの戸惑っている生徒には、選択肢を提示して学ぶことを自分で決定できるよう声かけするなどアドバイス型の支援、自分から進もうとしない、進めない生徒に対しては具体的な活動内容を提示して誘導していくような声かけを行った。いずれも、小さな成果でもよいので自走する経験を積んで次に生かしてほしいと考えて支援している。
【第107回教育委員会対象セミナー・名古屋:2024年2月19日 】
教育家庭新聞 新学期特別号 2024年4月15日号掲載