現在、生成AIを授業や試験などでどう扱うかは、大学や学部、教員により考え方は様々だ。ドイツ語の授業において生成AIを導入した木村佐千子教授(外国語学部ドイツ語学科)に生成AIが成績や学び方に及ぼす影響について聞いた。
「まず前提として、生成AIを学生が提出物に使用したかどうか、確実に判定できるツールは現在のところありません。教員側が不確実なツールを使い誤った判断をすることは避けたい」と話す。
2023年7月、自身が作成した様々な問題形式による試験をChatGPT-4に解かせたところ、学生よりも高得点となった。こうした経験などから、電子機器の持ち込みを認める対面試験や監視なしのオンライン試験について「外国語の基礎文法や基本語彙、各分野の基礎知識など身に付けてほしい基礎の部分は、電子機器の使用を禁止した対面試験が良いと考えています。そうすることは、学生の自律的学習にもつながるでしょう」という。
課題として出すことが多い要約、意見をまとめるなどの外国語作文はどうか。
これについては自宅で生成AIを使うことを仮に禁止したとしても、また、もし学生がAIが生成した内容をコピー&ペーストして提出しても、提出物からその利用を教員側で明確に判断することはできない。そこでたとえ短時間であっても授業内で電子機器を使わずに要約や作文の課題に取り組むことが学生の力を伸ばすことにつながると考えている。
一方で、生成AIは処理が速く多機能で、学生がツールとしてうまく活用すれば、より質の高い成果につながる点も指摘。「これからは社会に出ると生成AIを使う場面も多いと思います。レポートを書くときにAIを適切に活用することは、より質の高い成果を出す経験が積める機会だといえます。学生時代に使い方のコツや注意点・限界などについて体験する機会を持つことは有意義でしょう」
そこでAL型授業のグループワークで生成AIも活用し、中間発表をしてフィードバック結果を取り入れた内容のレポートを作成。学期末にはプレゼンテーションと口頭試問を行う流れを提案する。
語学においてすべての授業をAL型にすることは難しいが、受講人数や授業の目的などを考え、課題を①成績に関係する試験や提出物で生成AIを使わせないようにする方向と②生成AIの使用を認め、AIを使ってこれまでより質の高い成果を生み出させる方向の2つに分け、学生に方針を示したうえで成績評価していくと良いのではないでないかと考えている。
学生の日常的な生成AI活用についてはどうか。
「課題で分からないところを質問したり、レポートのテーマを絞り込む相談をしたり、文章の添削をさせたり、外国語会話の練習相手にするなどの生成AI活用が考えられます。学生には、生成AIを自分自身の理解度と実力を高めることに活用してもらいたい。自分が好きで得意なことを追求していくことで、積極性や自己肯定感を高め、変化の激しい時代を明るく前向きに乗りきってほしいです」
知識や情報を得るだけであれば、生成AIやインターネットで充分だと考える人は増えるだろう。「こうした時代だからこそ、人間同士の交流を大切にし、人間の教員にしかできない教育をしていきたい」と語った。
起源は1883(明治16)年に設立された獨逸学協会学校。ドイツの文化や学問体系を導入し、ドイツからも教員を招聘して合理的・実学的な教育により各界へ人材を輩出。大学としての開学は1964(昭和39)年2学部3学科で出発。現在は外国語学部、国際教養学部、経済学部、法学部の4学部11学科及び大学院を擁する。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 新学期特別号 2024年4月15日号掲載