先ごろデジタル庁は2023年に行った「高等学校入学者選抜のデジタル化に関する調査研究」の実施報告書を公開した。高等学校への進学率が99%という現状にかかわらず、入試の必要書類が紙媒体で作成・提出(郵送・手渡し等)されている実態があり、教員が負担と感じる事務作業が発生している。事務作業のデジタル化を進めることで、教職員や生徒・保護者の負担の抜本的な軽減が期待できることから、同調査研究は現行、必要書類が紙媒体で作成・提出されている場合に、その書類のデジタル化(データ作成・データ送付)が可能かを検証。それにより、どれだけの業務効率化が見込めるかを検証した。
大半の中学校が高等学校への出願書類提出は直接持参、又は郵送で行われており、1中学校当り約7時間から20時間を要していた。内申書はPC入力しているが、紙媒体に出力し持参(又は郵送)という手続きがとられ、出願書類の様式がPDFファイルで配布されるため編集できないケースもあり「データの連続性が失われている」と指摘。
さらにPCが普及している今日では、日常的な書類作成は文書作成ソフトや表計算ソフトで作成されており、ほとんどの事務書類はデータで整理されているため、無駄なく事務作業を行う土台が整っているが、最適化されていないことの実情を指摘。「必要な視点としてデータの整備・組織間のデータ連携共有を考慮したデジタル活用が必要」だとした。
調査研究は「デジタル化への期待」として以下を提示した。①中学・高校感の異なる組織間での連絡が多いので、データそのままでのやりとりが効率的、②必要書類を電子化してシステム上での提出を可能にしている自治体もあり、事務作業の大幅な軽減につながる、③全国で必要書類・書類フォーマットを標準化することで、自治体をまたいで出願する場合の提出書類の相違がなくなり効率的に対応できるようになる、④導入コストとメリットを勘案し、デジタル1.0~デジタル3.0の中から適したものを選択し、可能な範囲から対応を進めることが肝要、⑤高校入試だけに限らず校務全般の事務作業が効率化できれば、教員のワーク・ライフ・バランス向上にもつなげられる。
教育家庭新聞 新学期特別号 2024年4月15日号掲載