学校教育目標を「学力を伸ばす」「人間性を高める」こととしている常葉大附属橘高校(関本和彦校長・静岡県)では、学校独自科目「芸術探究」を設定しており、美術専攻2年生が取り組んでいる。本科目では地域の問題解決に向けた提案や活動を産学連携で実施。問題解決のために芸術的側面の視点で調査・改善策を練ること、デザインやアート表現を用いて解決策を提案することを目的としている。
4~6月に行った地域発見「マスポットプロジェクト」(全18時間)では、マスポット(地域等のアイコンとなるマスコット+地域の穴場スポットの造語)とタウンマップ情報を掲載した地域発見PRポスター・販促物等を制作。全国のご当地タウンマップなども参照しながら「わくわくすること」「印象に残ること」を意識して配色や構成、キャラクター等を考案。様々な作品が生まれた。
城北公園のイベント「安東おさんぽマルシェ」では、公園のキャラクター「ぽんちゃん」と写真撮影できる等身大パネル等を企画・制作。園内に複数設置してゲーム性も持たせた。各スポットには「思い出シール」を設置し、立体的なスタンプラリーカードも制作。シールのデザインも考案した。
これらの作品は常葉大学経営学部マーケティングゼミとのコラボレーションにより地場百貨店での展示会も実現。大学のゼミ生は活動の様子を紹介する動画も制作した。
制作にはICTが力を発揮。制作経過はデジタル化して教員に提出。作品と共に疑問点や悩みを投稿でき、教員は生徒の学びの見取りがしやすく、個別最適なアドバイスが可能になった。
制作経過は生徒同士でも共有してグループで問題点や解決策を検討。複数生徒が同時にコメントを書きこむなどによりグループワークでの学びが深まった。
同校で活用しているICT学習アプリはClassPad.net(カシオ計算機)だ。同校では2021年度の新入生からBYOD形式で情報端末(iPad)の導入を進め、2023年度には全校生徒が情報端末を所持している。
ICTツール等に関しては学校改革部・教育開発部を中心に検討。辞書機能が充実している点、意見集約や課題の配信、提出作業などを効率良く行えると考えたことから本ツールを導入。全校全教員で事例を共有しながら各教科での活用を進めている。
美術の授業ではClassPad.netの機能により自分の作品を先生に送り、アドバイスをいただいて制作に活かすことができました。様々な辞書アプリが入っているので、分からないところをすぐに調べることもできます。資料などを学校で写真に撮り自宅でそれを見ながら学習しています。
客観的な地図情報を地域に特化した情報に変更していく過程は簡単ではありません。しかし答えが明確にない問いだからこそ、制作過程で何を大切にしたかについて見えるようにすることが大切だと考えます。
ClassPad.netは作品の写真を撮影して複数つなげて送ることができるため、制作過程がよくわかります。
生徒の悩みや葛藤もメモ機能で記入できるため、生徒の状況がよくわかり、添削やアドバイスも伝えやすく、課題の達成率が本アプリ導入前よりも上昇しました。
今後は生徒が各自で校外で取材してきた内容をClassPad.netの機能を使って収集し、それを生徒自身が共有しながら発展できるような課題に取り組みたいと考えています。
教育家庭新聞3月18日号掲載