2月6日、福岡市内で第106回教育委員会対象セミナーを開催。山本朋弘教授・中村学園大学は学校・地域・教委が連携した学校DX、福岡市教育委員会はダッシュボード構築、鹿児島市教育委員会・奈良県立教育研究所はGIGA第2期に向けた取組、福岡市立百道浜小学校はICTを活用した授業改善について報告した。
小﨑誠二主幹(奈良教育大学客員准教授)はGIGA第2期に向けて教育委員会と学校と教員が今考えておくべきポイントを報告した。
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各自治体の端末更新の検討が始まった。更新しても活用されないのでは意味がない。教育委員会がトップダウンで更新するのではなく、教員からの「使いたい」という声のもとで更新が行われるのが理想である。そのために、奈良県では整備担当者が本音で議論する体制のもと、県域で共同調達を目指している。
前回のGIGAスクール構想整備の反省を踏まえて、GIGA第2期の端末更新に向けて後悔しないための、今すぐ取り掛かるべき7つのチェックリストを作成した。
重要なことは「明確なゴールの設定」。理想でもよいので、2~5年後の目指す姿を文字や絵で可視化してみる。実現すべき姿をはっきりさせることで目標に向かって揺るがず進むことができる。
ゴールを設定する際には、全員が納得する落としどころを示さなければならない。その際、他の地域のデータを示して比較するよりも、自分の自治体の過去のデータが説得材料として効果的だ。
これまでの施策や計画をふり返り「達成できていること」「絵に描いた餅になってしまっていること」を把握し共有すると、よりよい調達に向けた意見も出やすくなる。
また、実際に現場の課題やニーズを聞いて、何が課題になるのかを見極めるために「現状を識る(しる)」こと。実は、後ろ向きな意見や反対の声の中にこそ、ICTの活用や整備推進の答えがある。反対意見に向き合い耳を傾け、解決していくことで前向きに進む。
担当者だけでなく教育行政のトップである教育長に情報を丁寧に共有することも重要。組織で物事を円滑に進めるためには、関係者全員が状況を理解し、意見を一致させて動けることが理想。
施策推進に当たっては、身近な人ほど本音が言えてブレーキをかけがちになる。反面、遠い人は気軽に応援してくれる場合が多い。組織の傾向を認識し関係する全ての人とつながりを作っておくこと、教員自身が決めることのできる体制づくり、教育の原点となる「ある物は何でも使う」という視点をもって取り組むことが第2期の端末更新への足掛かりとなる。
共同調達に向け、新しい推進体制を考えている。各自治体の教育長を中心に据え、全教員・保護者も参加する県域DX推進戦略連絡会を設置。
県域DX推進戦略コア会議では、デバイス選定や運営支援センターなどの各種WGで議論。コア会議の情報を、教育長にも全教員にも可視化して伝える組織体制だ。
端末選定には、全教員及び保護者も参画して、導入後の活用促進も含めて考えることが大切。ゼロトラストの実現に向けて、教員・子供・保護者で構成される学校を関係者全員で支えていくイメージ。組織づくりの検討の際には、シンキングツールを活用して議論した。教育委員会の仕事でも使ってみることで新しい気づきと学びがある。
2024年3月には、県教委で「学校DX環境整備ガイドライン」を作成し、各自治体の予算の獲得と環境整備を後押しする予定になっている。
【第106回教育委員会対象セミナー・福岡:2024年2月6日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年3月4日号掲載