2月6日、福岡市内で第106回教育委員会対象セミナーを開催。山本朋弘教授・中村学園大学は学校・地域・教委が連携した学校DX、福岡市教育委員会はダッシュボード構築、鹿児島市教育委員会・奈良県立教育研究所はGIGA第2期に向けた取組、福岡市立百道浜小学校はICTを活用した授業改善について報告した。
福岡市(小学校145校・中学校70校)は教育データを活用したダッシュボード(データの可視化)と分析システムの開発に取り組んでいる。
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本事業では「自ら問題を発見し、学習を調整しながら学ぶ子どもの育成」を目指している。教員は主体的な学びを支える伴走者となり、教育委員会はデータの分析により客観的な根拠に基づく教育施策の立案が可能となる。子供・教員・教育委員会の好循環を生み出す教育データの効果的な活用が本市の目指すところだ。
そこで日々の学校・子供の状況の変化を可視化する「ダッシュボード」の開発を進めている。
2023・24年度はプロトタイプを構築しモデル校で試行検証を行う。ヒアリングと更改を繰り返して最終的な要件定義を行い、25年度以降から全校展開する環境を構築し実装に向けた試験運用を進めていく。
児童生徒への指導や支援に活用できるダッシュボードを開発するため、教員のヒアリングを実施している。モデル校の教員に自由に閲覧や活用をしてもらい、ヒアリングを行う。そこで出た意見を改めて画面設計に反映していく。この工程を3回繰り返して検証。ヒアリングの観点は内容の必要性と使いやすさだ。
検証するデータは授業の理解度アンケートやテスト結果などのスタディログ、出欠席や心の状態を答えるアンケートなどのライフログに加え、非認知能力を数値化した調査結果の活用も想定している。子供の発言や行動、教員が行った支援の効果などのアシストログの活用が今後の課題だ。
必要な情報をまとめて見ることができるため改善ポイントが見えやすくなる。これにより指導やアドバイスの精度が高まることが期待される。活用する主体は担任だけでなく、学校管理職や学年主任がダッシュボード上で手立てが必要な子供を見つけるなど、複数の教員が情報を共有して組織内で共通認識を持って対応できるようになる。
蓄積データをもとに変化の要因を分析する「分析システム」の開発も予定。ダッシュボードで可視化されたデータを掛け合わせて分析することにより、支援が必要な子供の兆候の検知と原因の究明につなげたい。例えば、学力の変化、授業の理解度、家庭学習の時間の変化、デジタルドリルの正答率などを掛け合わせて学習面で急な変化がありそうな子供を発見するなどデータ項目も含め検討を重ねていく。
データ活用にあたり個人情報の取扱には特に注意が必要であり、その他に端末自体のセキュリティを高めるべく、校務系・学習系のネットワークの統合およびゼロトラストによるセキュリティ対策も検討中だ。
教育DXを進める上での最大の課題はシステムごとにネットワークやフォーマットが異なり、データ抽出・連携がスムーズにできないこと。そのため、各システムの再構築も含めてデータ連携を進める必要があると考えている。
段階的なデジタル化とデータ入力・活用の徹底のもと全員が効果を実感する教育DXを推し進めていく。
【第106回教育委員会対象セミナー・福岡:2024年2月6日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年3月4日号掲載