高等学校改革が進んでいる。学校教育法施行規則改正により、高等学校ではスクール・ミッションやスクール・ポリシーの策定・公表が義務づけられたこともその1つ。第10回高等学校教育の在り方ワーキンググループ(主査=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長)が1月23日に開催され、スクール・ミッションやスクール・ポリシーを策定したことにより効果を上げている事例が共有された。現在募集が始まっているDXハイスクール事業は、スクール・ミッションやスクール・ポリシーの内容に大きな影響を与えそうだ。
岐阜県立岐阜北高等学校では、生徒の「こんな自分になりたい」「だからこんな学びがしたい」という気持ちをたくさん表現する機会を提供しており、それをスクール・ポリシー等に反映させることで個人の学びや課題の追求に良い影響を与えている事例を報告した。
スクール・ミッションとは各高校に期待される役割。スクール・ポリシーとはその学校で育成を目指す資質・能力/教育課程/入学者の受け入れに関する3つの方針だ。これにより受験者層が変わる可能性がある重要な役割を持つ。
2019年度より単位制に移行した同校は、22年度からの新教育課程の導入と創立80周年を契機に19年度よりスクール・ポリシー策定に着手。同校は全校生徒数1072人、国立大学200人以上、私立大学1000人以上の合格実績を持つ進学校で部活動等も盛んだ。
スクール・ポリシー策定に向けてまず校内組織を再編。19年度にカリキュラム・デザイン部(以下CD部)を、22年度には外部と協働する総務・渉外部を設置。学校運営協議会や生徒・保護者会議を経て「がやがや会議」(特活部長・CD部長等と生徒会代表者が参加)を設け年間を通じて生徒会と連携することにより生徒の意見を学校経営に反映しやすい仕組みとした。
発表者の鈴木校長は「3年間、大学受験だけを目指すのは違うのではないかという課題からがやがや会議が始まった」と語る。生徒が策定した原案を教職員がブラッシュアップして20年3月、「グラディエーション・ポリシー(GP)」として「荒野をひらく探究人」を決定。80周年の記念式典で校内外に公表した。
翌年には、「荒野をひらく探究人」育成を実現する教育課程としての「カリキュラム・ポリシー(CP)」策定に着手。
共通テスト対象科目を必須科目としながら生徒の進路指導や興味関心に対応する多様な選択科目(自由選択/必須選択)を充実。
また、日本の大学に留学している海外の院生を講師に招きオールイングリッシュで国際的な課題を討議・発信するプログラムや、人工衛星を制作して全国大会に出場するなど、これまで課外活動であった学びを単位認定することとした。
総合的な探究の時間も充実。1年次はミニ探究から始まり、学問探究・地域探究とつなげ、2年次にはSDGsの各分野に係る研究課題を自ら設定し、英語で中間発表を実施。優秀論文の発表と表彰を行っている。
各教科でも端末を活用しながら教科横断的に「対話的」かつ「深い学び」を意識。生徒1人1台の端末を利用して外部と連携・協働していく。
岐阜県では様々な実践事業を行っており、同校ではそのうち「グローカル探究実践事業」の指定を受けてSTEAM教育に取り組んでいる。
本事業により東京大学研究室等の見学や名古屋大学の出前授業も行った。同窓会からも複数の支援を受けている。
鈴木校長は「選択科目は6時間目で行っている。単位制なので授業時間外も認定できる。大勢の教員が本取組に関わった。CD部の部長は毎年のように異動があるが、よその学校でも活躍している。アンケート調査は情報端末のクラウドツールを活用しており、スムーズに進行できるようになった」と報告した。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年2月5日号掲載