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教育ICT

「情報Ⅱ」「総合的な探究」等を充実 全国約1000校に上限1000万円補助

2024年2月6日

高文部科学省は2023年度補助事業として、高等学校のデジタル人材育成に資するICT環境を強化する。全国の高等学校1000校程度がDXハイスクールとして指定され上限1000万円の補助を受けることができる。本事業の目的は、高校段階におけるデジタル等成長分野を支える人材育成の抜本的強化であり、これにより大学教育段階で現在進行しているデジタル・理数分野強化の取組の効果を最大化する考えだ。本事業は、高等学校のスクールミッションやスクールポリシーにも深くかかわることになるだろう(関連5面)。本事業について高等学校教員はどのように感じているのか。文部科学省学校DX戦略アドバイザーを務める柴田功校長(神奈川県立希望ケ丘高等学校)に期待と課題を聞いた。

――DXハイスクール事業への期待は

デジタル人材育成に寄与できる取組が期待されている。高等学校では2022年度から「情報」が必修化された。これまでと大きく異なる点が、全員がプログラミングやデータサイエンスも学ぶことだ。さらに「総合的な探究」が始まり、「情報」や選択科目である「情報」「数」等での学びも活かして充実させることが求められている。「DXハイスクール」はこの実現を後押しするものと理解している。大学でも「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」リテラシーレベルをすべての大学生に身に付けさせることとなっている。DXハイスクールはその取組を強化するものであり、デジタル人材育成という国の総意の一部を担う役割がある。

全国で1000校程度の指定となると、45校につき1校が指定を受けることになる。各校の取組が地域で展開できるような仕組みが望まれる。

――DXハイスクールではどのような環境整備が望ましいか

生徒の興味・関心に蓋をしない環境が期待される。個人端末でできないような作業を想定したハイスペックPCは必須。動画・画像生成ソフトにより3D映像やVRなども容易に扱えるようになる。3Dプリンタがあればものづくりにおける様々なパーツや作品を制作できる。遠隔授業用を含む通信機器整備も外部交流や発信する際の環境となる。動画制作スタジオを複数設置すれば、生徒の様々な取組を後押しできるだろう。

最先端のものが一通りあり、かつ企業が最先端の取組を常に情報提供できるような仕組みやChatGPT4のアカウントの提供も考えられる。ChatGPTには年齢制限があるが、教育版ができる可能性もあり、そうなった場合は生徒用アカウントの整備が現実的になる。若い世代の感覚と新たなテクノロジーにより新たな学び方が創出される可能性は大きい。生成AIを生徒自身が利用できれば、生成AIを使ったプログラミングや自分の学びたいことを学べるAI教師を生徒が生成することも可能だろう。探究活動等の研究成果をグローバルに発表することにも役立つはずで、様々な可能性が広がる。

かつての教科「情報」と比べると、現在の「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」はプログラミングやデータサイエンス、情報デザインが加わり、より深い内容になっている。総合的な探究の流れで身に付けられる内容ではなく、より専門的な学びが求められている。さらに、長年継続されているSSHでは、「情報」で学んだ内容を活かすことも可能ではあるものの、高度なプログラミングはSSHの探究課題に取り入れられていないという面もある。

そこで、今求められている情報リテラシーが身に付いているかどうか、エビデンスを示す試験の導入も考えられる。

――現場教員の反応は

DXハイスクールでは「情報」等の設置や探究的な学びの充実が求められているが、これらに積極的に取り組みたいと考えている教員は現状、多いとはいえない。

探究は自分の専門ではなく自信がない、探究の指導は苦手、授業を変えたくない、昨年のプリントや板書で授業を進めたい、これまでの自分のやり方を否定されたくない、子供に端末を使わせる時間を増やしたくない―そんな思いを持っている教員が新たな可能性に踏み出すためには、やりやすいところから始めるしかない。そこで本校では「情報Ⅰ」でポートフォリオ作成に取り組み、それを他教科に展開することを考えている。神奈川県では高等学校の11台端末は当初からBYODとしており、OSはバラバラ。そのため汎用的なクラウドツールしか活用できない環境であるが、だからこそ全校展開の可能性がある。トップ層の充実にとどまらず、広くリテラシー育成を支えながら取り組みたい。

高等学校教員の声

(本事業に)手を挙げる。本校では「情報」は開設していないが、大学と連携してデータサイエンス入門を設置しており、次年度は授業時間内で単位付与する科目とし、高大連携を強化する。ハイスペックPC等の整備によりPC室を強化し、理数探究に活かす(大阪府・私立)

▼県内公立高校で「情報Ⅱ」の教科書を採択しているのは1校のみで本校も「情報」は設置しないが、県からSTEAM教育推進校の指定を受けており、本事業参画について前向きに検討する(富山県・公立)

▼管理職から絶対にやれと言われている(東京都・公立)

▼ぜひ手を挙げたい。現在、「情報Ⅰ」で16単位持っており、情報を設置すると、さらに2単位担当することになるため管理職には「大丈夫か?」と心配されているが何とかやり遂げたい(千葉県・公立)

▼「情報Ⅱ」を次年度から設置する予定で可能であれば手を挙げたいが本校はSSHの指定を受けており、DXハイスクールに申し込めない可能性がある(神奈川県・公立)

▼管理職に「うちは申し込まない。部活動に力を入れる」と早々に宣言された(大阪府・公立)

▼過去、学校が申請しても教育委員会にストップをかけられた事業があるので心配(関東・公立)

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年2月5日号掲載

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