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教育ICT

教育データ活用でテストや調査が変わる~不登校と友達関係に相関見られず

2024年2月6日

教育データ利活用の可能性がより具体的になってきた。文部科学省は1月12日、「教育データの利活用に関する有識者会議」を開催。教育データ利活用に関する実証事業に参画している三重県松阪市とMEXCBTを活用しており県独自の学力調査でデータ活用を進めている埼玉県教育委員会が教育データ活用について報告した。

MEXCBT利活用 全国的に拡大

地方自治体が独自に行う学力調査等におけるMEXCBTの活用が全国的に拡がっている。

2022年度から試行的に4道府県5市町で始まったMEXCBT活用は24年度において14都道府県・30市町村で試行を予定しており、さらに拡大の予定だ(表参照)

各自治体で教育ダッシュボードの作成も進んでいるが、今後構築を検討する自治体がより効率的に進めることができるよう、文科省では今後、データ分析ダッシュボードのテンプレートを提供することを考えている。

今年度の教育データ利活用に関する実証事業参画自治体15自治体中3自治体がダッシュボードを作成して共有を進めており、3自治体からは「データ分析に馴染みのない教員にも視覚的に捉えられるようになった」「分析結果に基づいた新たな事業や施策の検討が可能になった」「今回の分析方法を他にも活かしたい」という声が届いている。

■三重県松阪市
データ見える化で予想外の結果も

三重県松阪市(小学校36校・中学校11)では2023年度、本事業に参画して学習系・校務系と各種調査結果のデータ分析を進めている。その成果について脇清人係長が報告した。

本市では紙の質問用紙による学校満足度調査を10年以上実施しており、年2回で実態把握と手立ての検討・検証に役立ててきたものの、単一データ活用に留まっていた。また、利用できるデータ量には限りがあった。

まずデータ利活用を何に役立てたいか整理。2022年度に特に中学校1年生で大きく増えた不登校の未然の防止とした。若手教員の急激な増加もデータ活用により手立てを強化することもできると考えた。

2022年度は学力に関するデータと学級満足度に関するデータの相関関係を分析。不登校の原因を発見して教育施策に結び付けた。

23年度はこれを一歩進め、各部署が保有している多様なデータを活用。学習系データ、校務系データ、学校満足度調査を含む各種調査データ等、これまで教育委員会が蓄積してきた紙・電子データを元に分析。ロジックツリーを使って整理することで議論しやすくなった。

2年間の調査の結果、予想通りであったもの、予想外であったものなど様々ことが明らかになった。

学校満足度調査結果や中学校学力調査結果は教員の状態と不登校率に相関関係がみられた。学級生活に満足していない、教員が上司や同僚からの支援が少ないと感じている、国語及び算数・数学の平均点が低いほど不登校率は上がる。

仮説と乖離した結果として「友達関係」と不登校率の相関関係が読み取れなかった。

本事業により、各部署ばらばらのデータを統合・見える化することの可能性が明らかになった。

今後の課題としてデータ一元化の方法がある。本市では校務支援システム未整備のため、学校データの集約が難しいこともあり、活用したデータは、教育委員会が保有・蓄積しているデータとした。紙のデータも多く集約は大変であったがPower BIの機能(スライサー・絞込等)を活用することにより、膨大な量のデータを容易に比較・検討し、本市の取組についての確認ができ、今後の見通しが明確になった。

■「教育データの利活用に係る留意事項」
2版間もなくパブコメ

文科省では現在、「教育データの利活用に係る留意事項」第2版を検討しており今年度中にパブリックコメントを募集。3月以降第2版を公表予定だ。

2版では新規で個人情報保護法の法令上義務づけられていること、行うことが望ましい留意点を事例として整理。具体的な対応を記載すると共にデジタル教科書・教材等の活用場面ごとにデータ利活用の流れを示す予定である。

■データ活用で見方が変わる

本会議で委員からは次のような指摘があった。

▼データ利活用の有用性を体感するためにはネットワークやゼロトラスト対応等の基盤整備が必要。本市ではデータ利活用に向けてゼロトラスト対応とネットワークの統合、教員用端末1台化(授業・校務兼用)を進め、かつ業務フローの最適化に取り組み、データ利活用がしやすくなった。予算がないと活動は難しく、国からの支援が必要 データ活用の可能性を実感している。学校は様々なデータを持っているがその有用性に気付きにくい面がある。研究者の立場から示唆を頂ける仕組みがあればデータの価値を現場に伝えやすい。ビッグデータ活用と日常データ活用を分けて発信してほしい ▼このようなデータからこのようなことが理解できるというカタログ的なものの作成を提案する ▼自治体を超えてデータを集めていると、自治体間の情報交換が難しいと感じる。都道府県が主体となってつなぐ役割を果たしてほしい ▼技術革新とGIGA端末により授業が変わっており、個別最適な学びが進むと不登校に対する考え方も変わってくるだろう。また、AIドリルが広がることで習得状況を確認するための定期テストの価値も変わってくる。様々な調査も、データを利用することで調査しなくても把握できるようになるだろう。汎用的なクラウドツールを使ったシンプルなダッシュボードを示し、先行自治体はそれをカスタマイズし皆で共有・ブラッシュアップしていく仕組みも考えられる

教育データ利活用が具体化
データ形式の違いで収集に苦労 埼玉県の教育データ活用

県独自の学力・学習状況調査(埼玉学調)2014年度からスタートした埼玉県(小学校690校・中学校353校・義務教育学校2)。現在、埼玉学調のCBT全面実施に向けて計画的に進めている。義務教育指導課の高田課長が報告した。

■学力の「伸び」を見える化

埼玉学調は県内公立小・中学校に在籍する小学4年生から中学3年生まで行っており、現在9年目で特徴は次の2点。平均点ではなく、学力の「伸び」を経年で把握できる。平均点が高くない学校でも伸びが大きい学校や学級がわかり、学校や子供の取組を共有しやすくなった 非認知能力と学習方略を測定している。自己効力感等の非認知能力が学力と高い相関があった(22年度実証研究より)ことから計測を始めた

現在、2024年度埼玉県学調CBT全面実施(62市町村約1000校及び参加する県立学校)に向けて計画的に進めており、23年度はCBT体験を実施。その結果学調でCBTを選択したのは36市町村。対してPBT(紙による調査)26市町で、CBTの実施率が上回った。

■解答に要した時間CBTで分析

CBTでは、正誤のみではなく解答に要した時間も分析することで細かい指導が可能になると考えている。

映像を使った出題も可能で、試験中は動画を何度も見直すことができる。

ログデータの分析・提供もメリットの1つだ。

県平均と比べ時間がかかった問題や生徒が時間をかけた領域を把握することで児童生徒に適切な声かけが可能になり、児童生徒のふり返りに活かすことができる。

学校用の帳票には各問題の正誤状況、解答時間、見直し時間を提供。クラス全体の課題を捉えることができ、気になる児童生徒の個票を確認して詳細分析も可能だ。

■今後の活用

埼玉県学調の類似問題を復習シートとしてMEXCBTにアップし、身近に体験できるようにしたいと考えている。

 

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年2月5日号掲載

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