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教育ICT

NEXTGIGA成功の可否は「子供に委ねる覚悟」の有無 放送大学中川一史教授

2024年2月7日
放送大学オンライン教育センター長 中川一史教授

放送大学オンライン教育センター長 中川一史教授

NEXTGIGA成功の可否は、教育の技術の有無よりも「子供に委ねる覚悟」の有無にあるのではないかと考えている。

これまで新しいテクノロジーによりどこまで学びを拡張できるのかについて取り組んできた。生成AIというテクノロジーはこれまで以上に「子供に委ねる覚悟」をクリアに突きつけるものである。

20237月に文部科学省が公表した「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」はまだまだ曖昧な状態だ。曖昧であっても方針を出し、引き続き検討していくという方向性を示すことが重要だ。リーディングDXスクールの生成AI指定校で実証し、その線引きを検討している段階である。

■生成AIの授業活用

生成AIの授業活用については段階として3つ考えられる。

まず「生成AIを学ぶ」授業である。生成AIの性質を理解して、利用するための素地を育むものだ。

次が、生成AIが埋め込まれた教材を使って学ぶこと。ドリルや英会話など製品化が急速に広がっている。

3つめが、アイデアを拡げるための生成AI活用だ。生成AIは問えば様々な回答を提示してくれる。ここでは、生成AIから得られた回答についての判断力をどう身に付けさせていくかという課題がある。ある小学校では4年生で、国語の教材文について生成AIに質問。AIの回答は適切ではない、誤りがあると小学生が判断。ある程度自分の知識があるものについて問うことで判断力を働かせることができていた。

また、ある小学校2年生の授業では「生成AI先生を創る」授業に挑戦していた。

生成AIを有効に活用するためには適切な質問も重要だ。適切な質問を立てるためには自分の考えを整理する必要がある。正しい答えを得るというよりは問や考えを整理するため、深めるために生成AIを利用することが考えられる。

■子供に委ねる「もどき」から脱する

子供に委ねることが重視される理由は何か。

主体的な学習者を育成するためには、自己調整力が必須であり、これは子供に委ねることで育まれるものである。

ところがこれまで何度も授業の中で「子供に委ねる」もどきになっているのではないかという瞬間があった。

例えば、グループで話し合いをする時間が何分必要かを教員が尋ねる。子供が「5分」と答えると「短いんじゃない?」、「10分」と答えると「そこまであげられない」、すると子供は「7分」と答えるようになる。

このような誘導質問を繰り返していると、教員が何を求めているのかを忖度する力はつくだろうが、主体的に決めて取り組んで失敗し、自ら修正していきながら自己調整力を身に付ける力をつけることにはつながりにくいだろう。

「子供に委ねる」ことの意義を理解することが、覚悟を決めるきっかけの1つになるだろう。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年2月5日号掲載

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