聖心女子大学は、フランス革命後の混乱期に創始された修道会にルーツをもち、日本では戦後に作られた最初期の女子大学の1つ。人文学、社会科学、人間科学の3領域にまたがる8学科を開講している。
建学時より少人数教育、国際性、社会的貢献を特色とするリベラル・アーツ教育を行っており、2023年4月から、「言語と思考」「文学と芸術」「社会システム」「コミュニティと環境」「心と科学」「キャリアと生涯発達」「聖心スピリット」の7分野からなる「聖心リベラル・アーツ群」を新設した。
入学後1年間は全員が「基礎課程」に所属。新設の「聖心リベラル・アーツ群」及び既存8学科の入門科目を関心に応じて自由に選べる。リベラル・アーツ群は4年間履修可能だ。
こうした横断的学びにより学生は、これまで気付いていなかった「自分らしさ」「自分の可能性」を顕在化。2年次からの専門的学びをより主体的に深められるという。
23年4月から、AI・データサイエンス科目も必修となった。科目の1つ「AI・データサイエンス基礎」は、オンデマンド型のeラーニング形式だ。学生は自分のペースで繰り返し学修できる。
学生のeラーニングを支援するため、学内のメディア学習支援センターが中心となり、科目をすでに履修した学生が対面で学習のサポートを行っている。
AI・データサイエンス科目を受講した学生からは「データサイエンスが普段の生活と密接に関わっていることを知り、身近なものとして、関心を持って授業を受けることができた」「データを解析し、さまざまな問題に対する解決策を導き出すことができるのが魅力」「データの品質や倫理的な側面にも注意が必要だと思った。今後も継続的な学習と実践が重要だと思う」といった声が寄せられている。
同学では既に、従来の学科においても、データ分析に関する授業が数多く開講されている。
人間関係学科では、社会調査士の資格取得にかかわる科目において、データ分析の応用基礎レベルの授業が行われている。心理学科でも統計やデータを扱う授業が開講されている。
日本語日本文学科では、コーパス(電子化された大規模言語データ)を使ってデータ統計処理について学ぶ科目がある。
英語文化コミュニケーション学科では、デジタル・ヒューマニティーズ(人文学の諸分野にデジタル技術を適用する研究分野)を専門とする教員によって、ゲームのプログラミングを英語で学ぶ授業も開講されている。
なお「AI・データサイエンス基礎」の科目修了者には、国際的なデジタル証明書であるオープンバッジを発行している。
聖心女子大学中川僚子副学長(学務・大学院担当)は「今後は、さらにデータサイエンス系の科目を増やすとともに、従来、特定分野でしか使われなかったデータサイエンスの方法を横断的に活用するなどにより、『専門分野』×『データサイエンス教育』という文理融合を実現する学位プログラムを構築していきたい」と話す。
「AI・データサイエンス基礎」は23年度、文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」として認定を受けた。次の段階として、応用基礎レベルの認定を目指し、教育プログラムを整備していく考えだ。
同学の「聖心スピリット」とは、周りの人が必要としているものに気付き、頭を使い、心を使い、手足を使って、より良い状態をつくり出す精神の在り様を指すという。
「これからも聖心スピリットを礎として、それぞれの生き方のなかで社会に貢献する卒業生を送り出し続けたいと考えています。横断的学びにより広い視野を身に付けた上で、人と助け合う聖心スピリットを発揮するからこそ、卒業生たちは社会の様々な場所で、誰かの役に立つ働きができるのだと思います」と中川副学長は語った。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年12月4日号掲載