横浜国立大学経営学部は2021年4月、国公立大学の経営・商学部では日本初となるデータサイエンス教育プログラム「DSEP」(ディーセップ=Data Science EP)を開設した。1年次から2名の指導教員によるデータ分析を活用したプロジェクトベースの少人数ゼミナールを行うなど、実践に重きを置いたカリキュラムで、データ分析テクノロジーを社会の課題解決や事業創造に活用できるビジネスリーダーの育成を目指す。
DSEPでは、民間企業との「データサイエンス・インターンシップ・プログラム」を22年度から実施している。データサイエンス系または情報処理系の国内企業で、DSEPの趣旨に賛同した企業に依頼しており、現在、(株)アイネットと(株)電通マクロミルインサイトの2社に各1名・計2名がインターンシップに参加した。
横浜に本拠地を置くアイネットは、クラウドデータセンターを軸として、金融、小売り、流通、製造など幅広い業種に向けて、クラウドサービスやシステム開発サービスなどを提供。同社での実習テーマは、データセンターにおける障害のデータ分析業務だ。
一方、電通マクロミルインサイトは、マーケティングリサーチ会社。電通が培ってきたマーケティング関連プロジェクトの実績と、マクロミルが保有するマーケティングデータとテクノロジーの活用という、2つの強みを活かして事業展開。同社での実習テーマは、顧客調査や市場調査プロジェクトへの参画だ。
インターンシップに参加するには、実践的な経営が学べる「経営者から学ぶリーダーシップと経営管理論」「ベンチャーから学ぶマネジメント」及び、少人数でデータ分析の実践を行うプロジェクトベース型の「データサイエンス・ゼミナールⅠ」「データサイエンス・ゼミナールⅡ」といった講義の履修が要件。データサイエンス・インターンシップは「データサイエンス実践科目」(選択必修科目)という位置付けだ。
インターンシップ後、学生は「インターンシップ成果報告書」を作成。大学は受け入れ企業が作成した「インターンシップ評価書」の内容と合わせて評価。単位を認定する。
単位は実習45時間につき1単位。実習は90時間が予定されており、2単位となる。
インターンシップに参加した学生(3年生)は、翌年の「データサイエンス・ゼミナール」の講義において、1、2年生に、インターンシップの報告を行う。インターンシップに参加した学生は「データサイエンス・ゼミナール」の授業に真剣に取り組むことが、就活などでも役に立つことを、後輩たちに伝えており、後輩たちの学びにもつながっているという。
「実際のビジネスの現場でデータ分析がどのように使われているかの理解度が上がっていると感じました。大学で学問としてデータ分析を行うだけでなく、学生自身のキャリアとして、データ分析を仕事にしていくため、データ分析を学ぶモチベーションが高まったと感じています」(伊藤有希教授・DSEP運営委員会委員長)
さらに、インターンシップ経験を通じて、大学では身に付けることが難しい、ビジネス現場でのマナーなど、社会人として基礎力も養うことができた。
「データサイエンス・ゼミナール」は、プロジェクトベース型の演習であり、学生たちは互いにコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めていく。これは、ビジネスの現場に近い環境といえる。
伊藤教授は「近年、データサイエンス教育、インターンシップを始めとするキャリア教育、企業との連携講座や寄附講座など、学生が実社会に出てから役に立つ実践的な授業が増えてきています。今後も実践的な講義の重要性は、ますます高まると思われます」と話した。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年11月6日号掲載