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教育ICT

文科省、生成AIの利用に関するオンライン研修会を実施~「技術の可能性と限界を理解する」~デジタルハリウッド大学 佐藤昌弘教授

2023年10月3日

文部科学省は9月、教育での生成AIの利用についてまとめた「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン(2023年7月4日)」を踏まえた方向性や活用事例等をシリーズで解説する「生成AIの利用に関するオンライン研修会」を開催した(全5回・各60分)。9月22日に行われた佐藤昌宏教授(デジタルハリウッド大学学長補佐)の講演内容を紹介する。本研修内容は「学校DX戦略アドバイザー事業ポータルサイト」(https://advisor.mext.go.jp/video)で公開予定。

ここまできた生成AIの能力

ChatGPT4を体験したとき、興奮と恐怖が一体になった感覚を味わった。すべてひっくるめて「ここまできたか」と感じた。

会話も翻訳も驚くほどスムーズでeラーニングのツールとしての可能性は大きく、英語等の会話練習にも利用でき、プログラミングのアドバイスも適切だ。

チャットボットや自動運転車、音声認識システムなどの全自動AIも始まった。

クイズも作成してくれる。ただしAIで素晴らしい誤答を作ることは難しい。

ChatGPTは「嘘をつく」とも言われている。これは情報の古さが原因である(ChatGPT無料版の情報は20219月まで)。そこで、指定したURLの情報を抽出することがプラグインWebパイロットにより可能になった。

恐怖については、人間にしかできない領域への進出が始まるのではないかという点だ。クリエイターのモチベーションが下がっているという現状はある。

一方で、機械には難しい領域についても支援ができ、さらにクリエイティブな部分に人が集中できる可能性もある(1参照)

ディープフェイク(ディープラーニング+フェイクの造語)の可能性もある。AIを用いて人物動画や音声を人工的に合成する技術だがこれが悪用される可能性もある。

テクノロジーの進化はもう止められない。AIの様々な可能性について世界中で議論が進んでいるところ。「文明を破壊する可能性」「潜在的に核兵器より危険」などの指摘もある。

生成AI教育利用のガイダンスを公表

ユネスコでは、生成AIの教育現場での活用に関するガイダンス(A human-centered approach AI)を出している。AIは教育の質を向上し、教育機会を拡大し、教育の未来を変える可能性があるものであり、それは、どのようにAIが設計・実装されるかにかかっている。また、教育は、AIの影響を受ける世界で効果的に生きるための方法を学生に教える必要があるとしている。それはすなわち、人のスキル批判的思考、コミュニケーション、協力、創造性育成に重点を置くことであるとしている。情報活用能力は必須のスキルだ。

技術の可能性と限界を理解する

ここで提案したいことは2つある。

1つは、「技術の可能性と限界を理解する」こと。そのためには、その仕組みと発展の歴史を知ることだ。

AIが生まれたのは1950年。機械学習や深層学習が可能になった2006年から急速に進化し、ChatGPTを始めとする大規模言語モデルの利用は2021年から始まった。

自然な会話処理ができるようになったのが大きな特徴で、これは、言語を単語の出現確率でモデル化することで可能になった。すべて確率で処理しているが、学習データが膨大なため、ほぼ適切な言語処理になる。しかし確率であるため意思も感情もない。

性能の向上のためには予測の元となるデータが適切であることとデータ量が重要だ(パラメータ数)ChatGPT31750億のパラメータ数がある。ChatGPT4は、非公開だが百兆にのぼるといわれている。なお人の脳のシナプスは数百兆から数千兆個といわれている。

AIという利便性向上が人間の思考力を奪うのか否か。それは使い方次第である。

適切な使い方をするためには、今、何が起こっているのかをふり返ること。先端技術が誰でも使えるようになったということ、そんな汎用化したテクノロジーに囲まれて生きるという事実を再度、認識する必要がある。

次に、活用・制御できるスキルを身に付けること。テクノロジーが出した答えを判断する力がなければ制御できない。自分の判断基準を身に付けること、感動する体験を多く持つこと、倫理、道徳や哲学、自然科学などを発達段階に応じて学べるように制度として整備すること。技術には善悪がない。AIが出した答えに対する判断力を育む教育の必要がある。

では今の教育の現状はどうだろう。

圧倒的なテクノロジーが前提になっていないことに違和感をもっている。今後変わるだろうが、今は現場でできる前記2つの学びを進めることが必要だろう。

日本の教育が恐れるべきことは、IT活用スキルの高い児童生徒が正しいリテラシーを理解しないまま使用すること。また、一般的な児童生徒が、怖いもの、危険なものと理解して劇的に進むDXや世界の潮流についていけなくなること。多くの教員が既成概念に縛られて教育DXについていけなくなることだ。

自分にとって難しいかどうかではなく、教育や制度を変えるべきであると思えるかどうか。完璧さは求めなくてよい。まずやってみることだ。

学校現場が変わらないことに心が折れそうになっている人もいるだろうがまだまだ変わる。勇気をもって発信してほしい。私も応援していく。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年10月2日号掲載

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