2022年度より「情報Ⅰ」が共通必履修科目となった。選択科目となる「情報Ⅱ」は、「情報Ⅰ」よりも広い領域を体験的に深く学ぶ必要がある。「情報Ⅱ」でどのような授業を展開すれば良いのか。都立三鷹中等教育学校の能城茂雄指導教諭に、「情報Ⅱ」でどのような授業を予定しているのかを聞いた。
「情報Ⅱ」では、生徒が実習をメインに進めることができるような演習環境を準備しています。「情報Ⅱ」の演習では、生徒に「現実社会で稼働している情報システムの体験」を提供したいと考え、「外部からアクセスできない安全な内部ネットワーク」=仮想ネットワークを、高校のPC教室内に構築しています。仮想環境であれば既存ネットワークに追加するだけで良く、サーバの設定を変更する必要がない点もメリットです。
仮想環境は、NASサーバ(QNAP)をPC教室のネットワークに複数台接続してバーチャルマシン(以下、VM)を生徒用サーバとして設定します。NASサーバは、本授業を想定して毎年1~2台ずつ自立経営予算により準備したものです。「情報Ⅱ」を選択する生徒10~20人程度を想定し、5台のNASサーバを準備済です。
このような実習環境を整備することで、例えば「システム開発」において「文化祭Webサイト」の制作からアップロード・外部公開まで、実世界と同様の体験を提供できます。本実習では、情報デザイン的要素を盛り込むことや共同開発も可能です。この環境があればSQL実習(データベース)のコマンド演習もできます。
仮想環境の素晴らしさを多くの人に伝えるために、NASサーバで動く仮想環境を使った授業イメージを試したい人向けに体験会を企画したいと考えているところです。
1人ひとりの学びを充実させるためには、教員が一斉に教えるというより、生徒が1人ひとり学びを進めていくための環境を提供することが求められます。本環境の構築は、その1つと考えています。
良い教材コンテンツも増えており、生徒は自分のペースで学習しやすくなりました。例えば学習サイト「progate」は、教員であれば学校限定無料プランを年度末まで利用でき、生徒のメールアドレスがなくても使用できます。本校でも生徒の自学のため「Python」を申し込んでいます。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年10月2日号掲載