東京都庁は8月14~16日の3日間、「夏の3Daysハッカソン~青春の問題をITで解決しよう!」を開催。16グループ約60人の中高生が参加して「青春の問題を解決するアプリ」を開発。参加申込者のうち19人は中学生だ。会場は日本マイクロソフト品川本社。最終日の審査会を取材した。
東京都ではMicrosoft365アカウントを全都立高校生に配備していることから、直観的にプログラミングできる「Microsoft PowerApps」のアカウントを用意して本イベントで活用した。
ハッカソンで中高生はユニークな視点のアイデアをアプリに実装し、今後の計画と共にプレゼンテーション。良いと思った2チームに投票し、その上位6グループがプレゼンを手直し。最終審査に臨み、3人の審査員が最優秀賞、優秀賞、審査員特別賞を選出した。審査員は、(株)インプレス・インターネットウオッチ編集長の鈴木光太郎氏、アプリ企画プロジェクトを担当している(株)アイリッジ井上直人氏、ITエンジニア兼漫画家でMicrosoftアメリカ本社チームの千代田まどか氏。
最優秀賞を獲得した都立晴海総合高等学校1年生5人のグループ「くらげ」は日常生活を充実させるスケジュール管理アプリ「くらげカレンダー」を開発。これは、達成したい目標を入力するとAI機能が日々のタスクを提案。目標を達成するとクラゲが成長していくというもの。特別なスケジュールが入っていれば、その日のタスクはAI機能の判断で軽減される機能も付加する。APIを取得すればオープンAIも実装できるまで準備し、さらに個人に寄り添うカレンダーとしたいとプレゼンした。丸いフォルムのクラゲの育成を取り入れることでモチベーションの維持やストレス解消効果も狙っている。本イベントは担任に紹介され、仲間を募って応募。5人のうち3人は、情報関連分野で活躍したいと考えており、「役割分担がうまくいった。みんなで力を合わせることができた」と話した。
優秀賞を獲得した「さんどうぃっちず」は、都立小石川中等教育学校5年生2人と都立晴海総合高等学校1年生の3人グループだ。
「青春の課題」を「多忙で多感な時期に自分を見失うこと」と考え、自分の気持ちを8色の色と写真や音楽で記録できる「タイムカラセル」を開発。簡単に日記をつけたい、絵や音楽でその日の気持ちを表現するのはどうかと話し合い、気持ちの種類を明確にできる「色」の記録をメインとすることとした。
赤を「怒り」や「喜び」と感じる人がいることから、それぞれの色で表す感情を自分で決める点も特徴だ。毎日記録することで、気持ちに合わせてメッセージも通知される。
1か月など一定期間を色でふり返ることもでき、さらに自分の気持ちが明るい時に選んだ写真や音楽を後日、ふり返ることで気分を上げる効果も想定している。
小石川高等学校の2人は「情報」の授業で本イベントを知って参加。将来は宇宙開発や機械工学の道に進みたいと考えており「アイデアの独自性には自信があった。データベースとしての活用も考えられる」と話した。
また、晴海総合高等学校の生徒は東京都のツイッターで本企画を知り単独で応募。アプリ開発にさらに興味が増したと話した。
審査員特別賞は、都立国際高等学校IBクラス2年生の4人グループ「International beginners」だ。
中高生時代の「お金」の悩みを解決するため、ゲーム感覚でお金の管理ができる「milio(ミリオ)」を開発。購入したいもの、その値段、目標達成日を入力すると、貯金額のうち何%をそれぞれの購入したいものに貯金すれば良いかをアドバイス。キュートなマスコットキャラクターは目標を達成すると成長していく。
同校「IBクラス」は海外大学受験を目標にしており、受験の際には校外活動や大会参加実績、ボランティア等により自分をアピールする必要がある。そこで本イベントの参加経験は学校の特徴も自分の良さも活かせると考えた生徒がクラスのLINEで仲間を募り応募した。メンバーは将来、バイオメディカルエンジニアやIT関連企業に就きたいと考えている。
このほか、同じ趣味を持つ仲間を学校のMicrosoftTeamsと連携して学年を超えて募ることができるアプリや、最適なデートコースを様々なカテゴリから調べて施設等を予約し、その予定を友達と共有できるアプリ、悩みを投稿するとそれに対する複数回答からAIが最適な回答を選択してくれるアプリなど中高生の悩みを解決するユニークなアプリが生まれていた。
最終審査に残ることができなかったグループは自分たちのプレゼンや作品について休憩時間にふり返り。「プレゼン時間の3分間では機能に重点を置いて説明した方が良い」「予想外の質問に対応できなかった、どのような質問が来るのか事前に想定しておいた方が良い」「もっとインパクトがある説明をしたい」と次の機会に意欲をふくらませていた。
各グループのメンターを務めた専門学校生は「アプリ開発に詳しい高校生、プレゼンテーションが上手い中学生に驚いた。こちらが学ぶことも多かった」と語った。
審査員の鈴木氏は「この短期間にここまでできるのかと感動した。今後も邁進してほしい」、千代田氏は「すべてのアプリが素晴らしく感動した。皆さんは日本の宝。今後も応援している」とエールを送った。
東京都庁総務部情報企画課の江川徹担当課長は本企画について「昨年度から高校1年生で『情報Ⅰ』が必修となり、プログラミングに親しむことになっている。IT人材育成に向けて1年次のプログラミングの体験を実際に活かす機会として本イベントを企画した。身近な課題を解決する力は社会の課題の解決につながる。今の子供たちの様々な『青春の課題』には予想外のものもあり、また、中1から高3まで当初の想定よりも幅広い年代の参加があるなど教育委員会としても発見があった。秋に開催を予定しているプログラミングコンテストにもぜひ挑戦してほしい」と話した。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年9月4日号掲載