児童生徒の主体的な学びを推進するには、授業以外での日頃の学びをどのように支援するかが重要である。情報端末を家庭に持ち帰り、家庭での学びに活かすことは、GIGAスクール構想後の課題と言える。長崎県教育委員会(中﨑謙司教育長)では、児童生徒の「学びに向かう力」を育成するプロジェクトを開始して2年目となる。県内各地に実践モデル校を設置し、学校と家庭・地域が連携しながら「学びの習慣化」の在り方について研究を深めている。
その実践モデル校である新上五島町の魚目小学校(西村慎一郎校長)では、AIドリル等を積極的に活用し、確かな学力向上に繋げていくようにした。また、家庭学習の充実を目指した「家庭学習のしおり」を改善するとともに、情報端末を使用する際の約束づくりなど、家庭における学習の充実を図るために家庭との協働を強化した。特に「授業と家庭学習との往還」のため、学校からの一方通行にならないように情報交換会で保護者の率直な意見を聞きながら進めている。
魚目中学校(山田喜彦校長)では、日々の家庭学習における宿題や長期休業中(冬休み)の課題をAIドリルで配信・提出するスタイルを学習活動の1つとして確立している。生徒が学校外に「いつ、どのくらい、何を」取り組んだか、また、「正答率、弱点、かかった時間」などが瞬時に分かるため、教師は翌日学校で、個々にあった支援・対策についての声かけに活用することができている。当初は計画的に学習に取り組むことに課題がある生徒が多かったため、家庭学習計画表を定期的に作成させたところ、事後の調査では、家庭での学習時間に30分以上の大幅な伸びが見られた。
児童生徒の「学びに向かう力」の育成は、変化の激しい社会を主体的に生きていく上でも極めて重要であり、これらの実践モデル校の研究成果が広く普及されることが期待されている。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年9月4日号掲載