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教育ICT

フィンランドから学ぶ義務教育改革の視点~学校行事の練習はしない

2023年8月10日

7月18日に開催された第7回義務教育の在り方ワーキンググループでは世界幸福度ランキングで6年連続1位であるフィンランドの教育の特徴について伏木久始教授(信州大学)が報告した。伏木教授は「TALIS(国際教員指導環境調査)2018によると、日本の授業は予定通りに進行するため柔軟性が低い。また、全員を同じ正解に導くタイプの授業が多い。現在は日本の学校教育も個別最適な学びと協働的な学びが重視され、教室空間も変わりつつある。さらに進めるためのヒントがフィンランド教育から得られるのではないか」と話した。

■学習指導要領はシンプル

フィンランドでは「人はそれぞれ違う」という前提からスタートする。個に応じた指導と共に協働的なグループワークを重視。基礎教育段階での標準テストは廃止した。

義務教育は0年生から高校生までで、授業料・教材費・給食費・交通費は無料。国が定める学習指導要領はシンプルだが教員はその内容を熟知している。地方自治体ごとの独自性を保障し、かつ学校・教員の裁量が大きく認められている。

■テーマ学習を重視

テーマ学習は年間で最低1週間分の授業時数確保が求められており、各校でカリキュラムマネジメントを行って実践。7年生以上で1週間程度で探究的に取り組む学校が多いようだ。教室空間も個性的で多様。子供の登下校時間に時差をつけることで10人程度の少人数指導を実現している。

保育園から大学まですべての学校でアントレプレナー教育を重視。「自分は社会に影響を与えられる・変えられる」マインド育成を目指す。

■インクルーシブ教育

フィンランドのインクルーシブ教育は「障害は障害を顕在化させる環境(社会、教室、職場)の無配慮が問題」「その子に適した支援は権利であり環境を変えればハンディキャップは生じない」という考え方に基づく。特殊なケースを除き、医者や心理士からの診断は不要。すべての通常クラスに特別支援教諭が配置され、週24時間程度、個別もしくは小グループ指導を行っている。

■高等学校は単位制

2019年度から義務教育化。進学校と職業系があり両者の進路変更も可能。進学校は学年も学級もない単位制で学期ごとに生徒が授業を選択。卒業単位の内訳は生徒自身で決める。

職業系高校では少なくとも20%が職場実習。希望や必要に応じて他の教育機関でも履修できる。

■学校行事の練習はしない

修士号取得が教員の条件。教員採用試験はなく、公募がある学校にエントリーして面接。修士論文の提出∥卒業であり卒業式はない。

勤務時間は週平均375時間でフレックスタイム+在宅勤務の割合は3割程度。授業数は年間190日で入学式・始業式・特別活動・朝の会・帰りの会や行事的な活動のための練習はない。教員研修は法律的に3日間設置されており、学ぶ内容はそれぞれだ。子供は1人ひとり異なるため全体の学習指導案を考えることは難しいと考えている。校務分掌はなく、小中学校の教員は自宅で教材研究を行うことが多いようだ。職員室に固定席はなく、ソファやキッチン、コーヒーメーカーや冷蔵庫があり休憩室としての役割が大きい。教員が自分の子供のために休むことも認められている。

■日本の教育変革にどう活かすか

日本では叱られるであろう行為もフィンランドでは褒める、という場面をよく見かけた。理想の子供像に不足する要素を補うという考え方は子供の自己肯定感を下げることにつながるのではないか。フィンランドで「人に迷惑をかけないこと」よりも重視しているのが「他人の力をどう借りるか」。自分の限界やわからないことを補う方法を知っていることが自立であるという考え方だ。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年8月7日号掲載

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