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教育ICT

通級指導教室で児童が成長 来室希望者が増えている 広島県海田町立海田西小学校

2023年7月4日

特別支援教育の充実が一層求められている。広島県海田町教育委員会(小学校4校・中学校2校)では2022年度に町内全小学校の通級指導教室に認知機能強化トレーニング「コグトレオンライン」(東京書籍)を導入しており、23年度からは全小中学校の通級指導教室と特別支援学級(自閉症・情緒)でも活用を始めている。23年3月、海田町立海田西小学校の通級指導教室「かがやき教室」の様子を取材した。

苦手を克服得意を伸ばす

子供の特性に合わせて様々なトレーニング

最初に取り組む感覚統合運動遊び。広い部屋は障害物や輪投げが設置された平均台が広がっている

最初に取り組む感覚統合運動遊び。広い部屋は障害物や輪投げが設置された平均台が広がっている

かがやき教室では週13回程度のペースで取り出し指導を行っている。担当は特別支援教育コーディネーターの砂山和美教諭だ。

かがやき教室の広い床には足跡や爆弾のイラストがあり、障害物や輪投げが設置された平均台が部屋いっぱいに広がっている。

入室してきた5年生と6年生の児童2人は早速、指定された足跡通りに「ケンケンパ」をして平均台に向かった。障害物をよけながら平均台を渡り、バランスを取りながら輪投げをするなどの「感覚統合運動遊び」をクリアすると、最後に質問くじをひいて回答。その後自席に着席し、ワークシートにその日の気持ちを表す「表情のイラスト」を描き込んでから、この日のトレーニング内容を確認した。

「音読トレーニング」では、壁に貼ってある「気持ちオノマトペ」をリズム打ちしながら大きな声で順番に読んでいく。これは、通級児童が作成したものだ。

「気持ちを表す言葉見つけゲーム」では、教室の中に隠されている「気持ちを表すカード」を2人で探した。15枚のカードをすべて見つけたら黒板に貼り「嬉しい」「はずかしい」「怒る」「こわい」「つかれる」に分類した。

次に、紙のコグトレの「記号さがし」や「さがし算」、コグトレオンラインの「聞いて覚えるトレーニング『何が何番?』」に取り組んだ。「何が何番?」は、例えば「4着の服」について「白い服は黒い服より小さい」「青い服は白い服より小さい」「茶色い服は青い服より小さい」「一番大きい服は何色か」という問題に答えるものだ。

ソーシャルスキルトレーニング(表情から気持ちを推測し、自己の言動を考える学習)の後は、再度コグトレオンラインに挑戦。今度は自分のペースで自分の取り組みたい問題を選択して取り組んだ。

6年生の児童はコグトレオンラインの「さがし算」を選択。これまでに121回・88トレーニングに取り組んでおり、半年前には1問につき約25秒かかっていたが、現在は15秒程度に短縮している。児童は「空き時間にも取り組んでいる」と話した。

目標もトレーニングも児童と相談して決める
砂山和美教諭

大きな「花丸」は意欲向上のきっかけになっている

大きな「花丸」は意欲向上のきっかけになっている

通級指導教室では「ここに来れば自分の良いところが見つかる」と思えるように心がけています。まず「自分の得意・不得意」を整理し、「どんな自分になりたいか」「どうなれば困らないか」について一緒に考えてゴールイメージを持ちます。その際は、保護者にも同じ質問に答えて頂き、担任とも連携しながら目指す姿を焦点化していきます。

ゴールが決まったら、達成するために必要な力は何か、そのためにどのようなトレーニングが有効かを考えてプログラムを組んでいきます。その際は児童が「自分にとって必要な学習」「意味のある大切な時間」「だからここで学習する」と納得できるようにしています。「やってみたら力がついた」と実感することができれば、次への意欲につながるので、毎回記録し、変化や成長の数値化や視覚化をして児童にフィードバックしています。

1時間の学習内容は複数の活動を短く区切り、パターン化します。集中力の持続や座学が苦手でも、見通しをもってできるようにするためです。主な流れは①感覚統合運動遊び ②音読トレーニング ③ビジョントレーニング ④聞くトレーニング ⑤ソーシャルスキルトレーニング ⑥タブレット学習 です。

認知機能を鍛え、学習上・生活上の困難さを軽減させるために活用している「コグトレ」は、主に②③⑥で使用しており、⑥では自分に必要な力に合わせて自分で選択して活用しています。

「コグトレオンライン」は、個人の端末でできるので、通級の時間だけではなく、休憩時間等にも取り組むことができ、自分のペースやレベルに合わせて楽しみながらトレーニングができます。

結果はすぐにわかり、間違えても、それを自分で確認できるように工夫されているので「1人でできた」という満足感や達成感が得られます。

継続して取り組んだことで学習や生活の場面で様々な効果が見られるようになりました。不注意・指先の不器用さ・力加減に難しさを持つ児童は「花丸(満点)」をためることが意欲となり、見落としや打ち損じによるミスが減り、所作が丁寧になりました。

計算が苦手な児童は「さがし算」を続けたことで「10の合成と分解」を理解できるようになって計算が速くなり、さらなる意欲につながっています。

「ちゃんと聞いていても何をするのかが分からなかったけど『キーワード』だけ覚えるようにしたら大丈夫になった」という児童もいます。

通級指導で児童が成長
来室希望者が増えている

吉岡康行校長

𠮷岡康行校長

かがやき教室は、通常学級に在籍する児童の中で、ADHDASDLDなど発達障害の診断がおりた児童が週に数時間のペースで来室する通級指導教室です。

この教室は、担当教諭の丁寧な指導が行き届き、児童の来室希望者が大変多い状況です。それは、かがやき教室に通い出した児童に明らかな成長が見られるためです。保護者は適切なアプローチにより児童が落ち着きを持つことを希望しているのです。

かがやき教室ではマンツーマンでの指導が基本ですが、児童の状態によっては、ペアや3人で取り組むこともあります。担当の砂山教諭は児童それぞれの実態をよく考え、柔軟なカリキュラムを工夫して作成しており、その実績から2020年度広島県教育奨励賞と21年度文部科学大臣優秀教職員表彰を受賞しています。

紙のコグトレは、1人ひとりの特性に合わせてでき、発達障害のある子供にも向いている教材であると感じていました。

それが22年度からはコグトレオンラインが配備され、音声を聞きながら1人ひとりのペースで楽んで取り組むことができ、集中力を維持しやすく、多様な児童のスキルを伸ばすことに適していると感じているところです。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年7月3日号掲載

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