横浜市立神大寺小学校(太田正寿校長・神奈川県)は、今年度から全校でデジタル採点システムの活用を開始する。小学校でデジタル採点システムを導入する事例はまだ少ないなか、全校活用に至った経緯や効果を同校4年生担任の山口晃史教諭に聞いた。山口教諭は2020年度からデジタル採点システム「EdLogクリップ採点支援システム」(エドログ)を活用している。
昨年11月、本校では「学びに向かう力」を育むため、「個別最適な学びと協働的な学びを推進」し、学ぶことが楽しい、嬉しいという気持ちを重視しよう、これまで通りの学びを積極的に見直そうという大きな方針を全体で共有することができました。
そのためにはこれまでの業務を大胆に見直す必要があり、その第一歩として、単元テストにデジタル採点システムを全員が1教科以上は活用しようということになりました。
それまでもデジタル採点システムを単元テストで活用できる環境にありましたが、活用は個人に任されていました。それが学校全体で取り組むという方針となり、大きな変革が始まったところです。
個人的には2020年度から「EdLogクリップ採点支援システム」を活用しています。
本校で導入している単元テスト(光文書院)に本システムが提供されており、採点業務を簡素化できるのではないか、データ活用の第一歩になるのではないかと考えて取り組みました。
5年生を担当していた初年度、国語・算数・外国語で活用したところ、1人ひとりの点数集計や素点を手帳や集計ソフトに入力する時間がゼロになり、採点業務全般にかかる時間は約5分の1になりました。学年により異なりますが年間60回程度の単元テストの採点時間が短縮することは業務の効率化につながります。
それ以上に大きな効果が、自分の授業のふり返りに役立つ点です。設問ごとに一気に採点するため、誤答や無回答が明らかに多い問題や、どのような誤りの傾向が多いのかが一目瞭然です。計算ミスなのか、問題を正確に読みとれていないのか、そもそも理解していないのかが明らかになり、次の授業にフォローすべき内容や児童が、採点をするだけですぐにわかるのです。バツが多く並んだときは説明の方法が悪かったと反省しますし、顕著な誤りを見つけたときは次にどのような授業をしようかとすぐに考えるようになりました。問題ごとの正答率も一覧表示できるので、改めて授業のふり返りをしています。
翌年からは、全教科でデジタル採点に取り組んでおり、デジタルで一元管理をしています。
まずテスト用紙を職員室のスキャナー(複合機)で読み込みます。次に自分の校務用PCで名簿とスキャンしたデータの順番等を照合し、設問ごとに採点を進めます。〇(マル)ではなく×(バツ)をつける方式でとても速く、△をつけることもできます。
子供の文字が薄い場合は濃く、小さい場合は拡大でき、解答欄からはみ出ているときは縮小して確認できます。模範解答を解答用紙に重ね、インクの透明度も調整できるので、図形問題や計算式の際に重ねて採点することもできます。
採点時は名前表示の有無を選択できますが、通常は表示なしで採点しています。その方が採点のブレがなくなると感じています。気になる児童についてはあらかじめチェックを入れることもできます。プレビュー画面で1人ひとりの解答内容を閲覧してコメントを入れたりスタンプを押したりすることもできます。
×つけが終わると集計が一瞬で終わり、児童ごとに表示されます。データは点数集計ソフト「ひまわり先生」に連携できるので、保護者用資料の作成に活用しています。
テスト返却については、デジタル採点した解答用紙を印刷したものと、当初のテスト用紙を返却しており、×だけではなく○がついた状態で印刷しています。当初解答したテスト問題をそのまま返却するので、自宅でのやり直しに活用しやすいようです。
全教員での活用はこれからですが、一度使い始めて良さを理解できると一気に広がるのが学校です。慣れることから始まり、徐々に拡張した活用に進んでいくのではないかと考えています。
本システムは児童それぞれの伸びを前回テストと比較できるなど、今後の目標であるデータ活用にも役立てることができます。また、横浜市ではGoogleIDを配備しておりデジタル採点したものをGoogle Classroom上にPDF返却が可能なので、今後は紙とオンライン返却の併用も考えられます。個別最適な学びに役立つ授業作りのためのツールとして今後も一層活用を推進できればと考えています。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年6月5日号掲載