中央教育審議会初等中等教育分科会は5月16日、デジタル学習基盤特別委員会(委員長=堀田龍也教授・東北大学大学院)を初会合。これまで討議してきたデジタル教材や教育データ利活用、校務DX、教員の働き方改革等を実現するための基盤の在り方を本会議で総括し、端末等ICT環境の調達方法や内容も検討。次期学習指導要領の基盤とする考えだ。次期ICT環境整備指針についても本特別委員会下に「次期ICT環境整備方針の在り方におけるワーキンググループ」を新たに設置して討議を進め、2024年度中に結論を出す。生成AIに関する国の方針も検討する。
2022年度全国学力・学習状況調査結果によると、GIGA端末については「ほぼ毎日~週3日活用」が約8割であるものの、地域差が顕著である。また、「教職員と児童生徒がやりとりする場面でICT機器を使用している学校の割合」についてはほとんど行われていない学校が相当数あること、端末持ち帰りをしている学校がわずかであり、クラウド環境がうまく活用されていない点を問題点として指摘。
一方、プログラミングサイトの利用者数はGIGA端末配備以降、大幅に増加している。
成果はあるものの課題もあり、伴走支援を強化する考えで、国が2022年度に行っている予算事業及び予算外の取組(表参照)について報告した。
奈須委員(委員長代理)(義務教育の在り方WG主査)は「デジタル学習基盤という命名は画期的。デジタルをどう使うかという議論ではなく、デジタルを学習基盤とした場合どう変わるか、変えるか、そのとき義務教育の在り方はどうあるべきかというスケールの大きな討議になる。これまでの学習基盤に合わせた机や椅子、学習内容や教材すべてが問い直されることになる」と指摘。
学校にICT支援員を派遣している五十嵐委員は「GIGAスクール構想が始まり3年経ち教員のICT活用は進んでいるが子供への禁止事項がまだ多い状況。また、端末管理が教員の仕事となっており、これを支援できる人材が必要な印象だ。教員がふだんどのような活用をしているのかについてICT支援員もデータを共有して提案が可能になるなど、充実した役割としたい」と発言。
様々な自治体のアドバイザーを務める平井委員は「端末活用は広がっているが、従来の学び方での活用が多い」、八戸市立江陽小学校教頭の石井委員は「本調査結果は昨年8月時点のもの。次の調査結果では大きく伸びている可能性があり、その結果も踏まえて討議したい」と発言した。
茨城県つくば市教育委員会教育長の森田委員は「授業や学びそのものを変えることがポイントになる。探究的な学びを構築できると子供自ら端末やクラウド環境を使うようになる。中学校全校で端末活用のルールメーキングに取り組んだところ、中学生自ら全校の生徒会とオンラインでつながり協議したいというようになった。子供が自走できるような仕組みが求められる。つくば市の市町部局では、これまで紙で配布していた資料をデジタル化する、スタンプラリーもデジタル化するなどGIGA端末活用を想定した考え方になっている」と好事例を共有。生成AIについて多久市長の横尾委員は「セキュリティ意識が低いまま大人になっている人にも役立つガイドラインを期待したい」と発言した。
現行の学校のICT化環境整備にかかる地方財政措置(単年度1805億円)の根拠である「教育のICT化に向けた環境整備計画」の期限が2024年度末となっていることから、新たなICT環境整備方針の策定について次の点について結論を出す。
▼1人1台端末を導入した際の各自治体の調達方法・内容(購入・リース、単独調達・共同調達、保守契約や付属物品)やコストについての評価 ▼前述を踏まえたGIGAスクール構想第2期における環境整備の方向性。留意点は次。〇故障リスク等も念頭に置いた標準的な整備の在り方 〇今後の通信負荷増を視野に入れたネットワーク整備の在り方 〇調達方法の考え方(端末買取とリース、共同調達等) 〇地方自治体の責任において確実に実施すべき事柄
ここ数か月で急激に注目を浴びている生成AIについては、新しい技術をどう学校で利用するのかという観点に基づき、学校利用に関するガイドラインを夏前に策定する。
4月下旬からヒアリングを進めており現在専門チームを設置して議論を進めている。禁止する方向ではないとしながらも限られた学校で検証する可能性もある。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年6月5日号掲載