廿日市市立四季が丘中学校(須藤敏清校長・広島県)では、2020年度からスペシャルサポートルーム(SSR)で認知機能強化トレーニング「コグトレ」を、22年度からは「コグトレオンライン」(東京書籍)も導入。全校で活用を進めており、成果も上がっているという。その目的と成果について同校SSR担当の星野陽子教諭に聞いた。
スペシャルサポートルーム(SSR)とは2019年度からスタートした広島県の独自事業だ。通常の学級になじめず、不登校傾向になりがちな児童生徒に個に応じた支援を行う場所として設置したもの。県ではSSR推進校(15市町7小学校・25中学校・1義務教育学校/2022年度)を設置しており、四季が丘中学校も推進校の1つ。従来の「学級に入りにくい傾向をもつ生徒の保健室登校」が進化した校内フリースクールというイメージだ。
20年度から同校SSR担当となった星野教諭は「前任校で、宮口幸治先生(立命館大学教授)の著書『ケーキの切れない非行少年たち』が話題になり、著者が開発した認知機能強化トレーニング『コグトレ』を他の教員が取り入れたところ、良い影響があったと聞いており、本校でSSR担当になった際に『コグトレ』を導入したいと考えた」と話す。
「コグトレ」は、認知機能を構成するいくつかの要素(記憶、言語理解、注意、知覚、推論・判断等)に対応した「覚える」「数える」「写す」「見つける」「想像する」トレーニングを提供するものだ。
現在は紙に印刷して使用する教材とオンライン教材がある。同校では、まず紙教材を導入。生徒への良い影響を感じていた頃、校長が「コグトレオンライン」を見つけ、教材印刷や採点・返却等の業務が不要になり業務改善にもつながると考えて22年度から併用を始めた。
SSRに来室した生徒はGoogleクラスルームで学級や教科のお知らせを確認。その日の予定をたて、紙の「コグトレ」を行う。さらに帰宅前に「コグトレオンライン」を行っている。
星野教諭は「コグトレは、見つけるもの、書くもの、考えるもの、想像するもの等様々な種類があり、その子に合ったものを提供できる。中には、鉛筆で書くことが苦手で、紙よりもオンラインの方がやりやすいという子もいる。また、『最初とポン』『形さがし』などはオンライン版になるとゲーム性が高くなる。教員が読み上げなくても進めることができ、答え合わせも各自でできるので自分のペースで取り組むことができる。SSRで毎時間コグトレに取り組み、1人で学習を進めることができるようになった生徒もいる」と話す。
SSRでの手応えから、学校全体でも取り組むこととし、全校導入のため「コグトレオンライン」を保護者負担により500ID導入した。現在は帰りのショートホームルーム等で火曜日は紙、木曜日はオンライン版に週2回取り組んでいる。
進行については、全校活用としたことで担任に負担がかかりすぎないように、取り組みやすいものを星野教諭が選択して指導案を作成し、教員が迷わず取り組めるようにしている。
指導案は1~2か月間の学習内容として、子供につけてほしい力と進め方を1枚にまとめている。
例えば「点つなぎ」により子供につけてほしい力は「黒板に書かれた内容や漢字などの見本を正確に写す力」、「くるくる星座」は「位置関係を把握しながら見本を正確に写す力」、「同じ絵はどれ?」では「共通点や相違点を把握する力」など。答え合わせの際に班で交流することも意識している。
紙は全員で同じものに取り組み、オンライン版については、学年に応じていくつかを選択して配信。生徒はその中から自由に取り組むこととしている。夏休みには定期的にオンライン版を配信した。
山下有実教諭は「最初は『簡単』と言っていた生徒も難易度が上がると真剣になる。星野先生が取り組むべき内容と目的を指導案として示してくれるので、つけてほしい力を生徒に伝えてから取り組むことができる。『コグトレ』をきっかけに、生徒のつまずきには様々な理由があること、どんなトレーニングがどのような力につながるのかという気付きにもつながり、授業改善のきっかけになっている」と話した。
東京書籍はEDIXブースで、認知機能強化トレーニング「コグトレオンライン」のほか、「新しいまなび」のプラットフォーム「マイアセス」を紹介する。
本プラットフォームでは、児童・生徒が自分の端末からマイアセス経由でCBT(Computer Based Testing)の受検ができる「マイアセスCBT」やオンライン上で調査結果を返却する新しいサービス「Webカルテ」、教材連携機能も提供していく。
同社のデジタル教材配信システム「NIMOT」や、開発を予定しているメタバースを活用した学びのプラットフォーム「NewE」も提案。各製品の体験コーナーも設ける。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年5月1日号掲載