文部科学省は3月30日、昨年8月時点の「公立小・中学校等における1人1台端末の整備及び管理運営、持ち帰り並びに学校での利活用状況等」を公表。同省は全国の教育委員会と設置者に向けた「端末の利活用状況等の調査結果を踏まえた対応について」(依頼)のなかで「授業での端末の利活用頻度が多い学校の校長ほど、授業や教師の働き方改革等に積極的な変化を感じている。端末の利活用頻度が教育の質の向上や教師の働き方改革に寄与していることが明らかになった」と報告。また、一部の教育委員会や学校において大きな課題が見られることを指摘し、重点的な改善も求めた。
調査結果によると、全国の小・中学校等の多くの校長が、1人1台端末とクラウドの利活用による個別最適な学びと探究的な学びの一体的な充実、教員の働き方改革や児童生徒の学習意欲等に積極的な変化を感じている。また、授業での端末の利活用頻度が多い学校の校長ほど、授業や教員の働き方改革等に積極的な変化を感じている。
一方で、端末やクラウドの日常的な利活用が十分に進んでいない学校がある。多くの校長が課題として感じているものは次。▼研修・サポート体制(小学校約44・9%、中学校約49・1%) ▼端末の操作方法(小学校約25・9%、中学校約36・1%) ▼効果的な指導方法(小学校約47・4%、中学校約56・8%) ▼ネットワーク環境等の整備面(小学校約32・4%、中学校約42・2%)。
感染症拡大等を含む非常時の端末の持ち帰りを「準備中」「準備していない」と回答した自治体(小学校約4・5%、中学校約5・4%)について、その多くが10 月時点において、年度内に準備が完了すると回答。一方で非常時の持ち帰り学習として、同時双方向型のWeb会議システムの活用を準備していない学校が見られる(小学校約12・2%、中学校約13%)。
平常時の端末の持ち帰り学習については「実施していない・準備していない」「持ち帰り学習を禁止している」と回答した自治体(小学校約6・8%、中学校約9・3%)があり、地域や学校により大きな差が見られる。端末持ち帰りに関するルールを作成していない学校(小学校約11・4%、中学校約13・6%)、家庭での使用実態の確認を行っていない学校(小学校約21・7%、中学校約32・1%)もある。
文科省では、持ち帰り学習の実施に積極的に取り組むことを依頼している。
「依頼」では、課題として以下のものを挙げ、重点的な改善を求めた。
▼1人1台端末の利活用状況を把握していない自治体(約5・6%) ▼指導者用端末が教員全員に行き渡っていない自治体(約35・4%) ▼1人1台端末の利活用(約11・1%)、持ち帰り(約15・0%)及び健康面への配慮(約16・4%)に関する方針や計画の策定予定がない自治体 ▼域内の市区町村立学校の端末利活用推進のための担当部署が整備されていない都道府県(約38・3%) ▼過剰なフィルタリング等により、児童生徒の学習に必要なWebサイトにアクセスができない自治体 ▼教育情報セキュリティポリシーを策定していない(約20%)、または首長部局が策定したセキュリティポリシーをそのまま準用しておりクラウド対応ができていない自治体(約30・5%) ▼「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の改訂を踏まえた教育情報セキュリティポリシーとなっていない自治体(21年5月改訂につき約50・8%、22年3月改訂につき約74・8%) ▼セキュリティ対策としてのWebフィルタリングが未導入の自治体(約3・9%) ▼持ち帰り学習に対応できていない自治体(約12・7%) ▼教職員に電子メールアドレスを付与していない自治体(約36・2%) ▼端末やソフトウェア等の操作方法、端末やクラウドを活用した指導方法及び情報セキュリティに関する研修を未実施の自治体(約15・5%/22年度)
これらの課題について文部科学省では、リーディングDXスクール事業を通じた効果的な実践例の創出・モデル化及び横展開を図る。GIGAスクール運営支援センターの機能も強化。学校DX戦略アドバイザー事業も進める。
個別最適な学びが求められていることから、個に応じた指導について調査。小中学校とも「個に応じた指導」の実施率は高く(小学校84・9%、中学校77・3%)、「補充的な学習」は小中学校とも9割以上実施。「児童生徒の興味・関心等に応じた課題学習」「発展的な学習」は小中学校ともに4~5割程度だが前回調査と比べ大幅増。
「児童生徒の興味・関心等に応じた課題学習」で実施率が高い教科は、小学校4~6年の国語と小学校6年の算数。いずれも6割以上だ。さらに算数ではすべての学年で5割を越え、社会も小学校5~6年生で5割以上実施している。中学校で実施率が高い教科は全学年ともに外国語でいずれも7割以上。6割以上7割未満の教科は国語、社会、数学、理科。美術や保健体育も5割以上実施されており、最も低い教科が2年音楽の46・2%であった。
小学校で「補充的な学習・発展的な学習」の実施率が高いのは3~6年の算数でいずれも8割以上。1・2年生でも7割以上行われている。次いで高いのは国語で全学年を通して6割前後実施。
中学校でも数学の実施率は全学年で8割前後と高く、次いで外国語が全学年を通じて7割以上の実施率。国語・社会・理科も6割前後と高くなる。
学校規模の縮小の影響や働き方改革の一環で小学校でも教科担任制を実施する取組が注目されている。実施率の高い教科は5・6年の理科(6割以上)、4~6年の音楽(5割以上)、5・6年の外国語(5割弱)。前回調査と比較して特に増えているのは外国語(前回調査では「外国語活動」として調査。11~19%)。国語、書写、理科、社会、算数、図画工作、家庭、体育、生活とすべての科目で増えている。
土曜授業は小中学校ともに実施率が11%強で、前回調査(26・3%)からさらに減った。
実施時数は、小学校の実施校のうち約5割が10時間以下。中学校でも約6割が10時間以下。
障害のある児童生徒等と障害のない児童生徒の交流及び共同学習については2021年度の実態を調査。小中学校とも約8割が実施した。
活動内容は「特別支援学級の児童生徒との交流」(通常の学級の児童と特別支援学級の児童生徒が交流及び共同学習)が小中学校ともに7割以上。実施校では約半数が年2~3回行っている。交流及び共同学習を実施していない理由については「近隣に交流できる特別支援学校がない、または自校に特別支援学級に在籍する児童生徒がいない」が小中学校ともに約6割、「計画していたが感染症等の影響で未実施となった」が2~3割。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年5月1日号掲載