1人1台端末環境になり、ICT支援員が果たす役割はますます重要になる。しかし単年度契約が多いという人材確保面や、研修機会が少ない等様々な課題がある。それをどう解決していけばよいのか。常滑市立大野小学校の金子誠教頭、合同会社かんがえる代表の五十嵐晶子氏、ハイパーブレインの大江香織氏(愛知教育大学非常勤講師)が「ICT支援員を活用する学校運営とは」をテーマに討議した。五十嵐氏は「ICT支援員は学校ではほぼ1人職で同じ立場同士の交流が難しい。そこをつなぎたいと考えて会社を設立した」と語る。
金子 愛知県常滑市(小学校9校・中学校4校)では児童生徒用端末活用に関して週1回(昨年は2週間に1回)ICT支援員が訪問する。支援の内容は様々で、教材作成や教員向け研修会、Googleアプリの使い方やマニュアル作成、年度替わりの端末移動やそれに伴う番号シールはり、情報提供、授業での機器操作支援などだ。
五十嵐 金子先生の学校ではICT支援員が働きやすいと感じている。その理由は。
金子 GoogleクラスルームでICT支援員と連絡を取り合い、次回までに何をしてほしいのか、来たときは何をしてほしいのか、いつでも良いが調べてほしいことは何か等、何をしてほしいのかを事前に明確にしている。
教職員が気軽にICT支援員に話しかけている面も良いようだ。人懐こい教員が多いのだろうが、気質を発揮できる職員室なのであると理解している。職員室の担任が教頭であり、雰囲気をよくするのは管理職の仕事である。
五十嵐 クラスルーム上で日頃からやりとりしている点はICT支援員にはありがたい。ICT支援員の窓口が管理職か、情報担当等の教員かでICT活用の進展を見ると、前者の方が進んでいるようだ。ICT支援員は学校に1人で向かっていく。管理職が橋渡ししてくれるともっと活躍できるのではないか。
金子 ICT支援員の窓口は、絶対に管理職がやるべきであると考えている。情報担当がやりたいという学校もあるだろうが、管理職が覚悟をもってやってほしい。
ICT支援員には、個別支援の依頼がなくても授業を見てまわってほしいと伝えている。同様に、全教職員には「ICT支援員はICTを使わない授業も見て授業の流れを勉強したいと考えている」と伝えている。また、授業を見て「こんなICT活用が可能だ」と思った際も、教員に直接言うのではなく、まず管理職に伝えるように依頼している。こういったメッセージが伝えられるのは管理職が窓口になっているから。
今年度途中でICT支援員が変わった。教員も子供も仲良くなったのに寂しいという思いがある。複数年契約できるとよい。
五十嵐 ICT支援員は単年度契約が多い。年次更新もあり、単年度で仕事しにくいという課題がある。OSもアプリも学校によって違い、Chromebookには不慣れで、各種ツールについては教育版が多く、一般で買うことができないため、アカウントをもらうまでは未経験で教員のほうが経験が先という逆転現象が起こっている。支援員も1年かけて成長する。
会場より 本市では依頼したときにスポットでICT支援員が来校するがICT支援員により知識は千差万別であると感じている。
大江 自治体の仕様を満たす人物を提供できる業者が価格で競争して落札するという仕組みなので平準化が難しい面はある。ICT支援員認定試験等で資格をもっている人は、ある程度学校のことがわかっており、基本スキルはあると考えられる。■ICT支援員認定試験 A領域(実践知識)とB領域(問題分析・説明力)の試験を年2回実施(2023年は6月11日及び10月15日)。合格者には教育情報化コーディネータ認定委員会(委員長:赤堀侃司・東京工業大学名誉教授)より「ICT支援員認定証」を授与。■ICT支援員上級認定試験「ICT支援員認定証」資格者のうち受験希望者にC領域(問題解決・コミュニケーション能力)に関する実践的課題と面接試験を2月上旬~3月に実施。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年4月3日号掲載