大阪産業大学附属高等学校(平岡伸一郎校長・大阪府)では2022年度の新入生から1人1台端末を保護者負担で配備しており、各種ツールや電子黒板と組み合わせて主体的な学びに取り組んでいる。1月31日、授業の様子を取材した。
進学コース・英語コミュニケーションの授業で縄田烈志教諭は教材文を電子黒板に提示して文法事項のポイントを説明していた。生徒の端末には予め、ICT学習アプリで英文を送付済で、生徒は各自の端末上で別のICT学習アプリである、カシオ製ClassPad.netの電子辞書機能を使って意味を調べている。1語は「見出し語」、2語以上は「成句」で検索できる。ネイティブ音声も再生でき、検索結果をノートに貼り付けたり、検索履歴を一覧で確認することもできる。
縄田教諭は生徒とやりとりしつつ意味を確認しながら、ポイントを電子黒板上に書き込んで教材文の意味を訳していった。黒板サイズに投写できるので英文も大きく提示され、教室後方からも見やすい。
縄田教諭が「oceans」は複数形であることに注目させると、地図帳を開いて海を調べている生徒もいる。「7つの海」と前述のClassPad.netで検索すると複数辞書から7つの海の名前が掲出され、生徒は複数形である意味を確認した。
ClassPad.netについて生徒は「辞書検索ではネット上で検索するのと同じ手順で、正しい意味や様々な用例が出てくる。自宅学習にも取り組みやすくなった」と話す。
縄田教諭は「生徒は英和辞典や和英辞典を主に使用しており、すぐに調べることができるので辞書を使う頻度が増えた。リスニング教材『CNN ENGLISH EXPRESS』は10分間の帯活動のリスニングで取り組んでいる。今後はさらに自ら取り組むような声掛けを意識していきたい」と話した。
特進コース・古典文法では意味と接続を考えて正しい助動詞を空欄に記入する問題演習に取り組んだ。意味を理解しなければ正しい選択ができないため、生徒はClassPad.netの「古語辞典」等で調べて意味を理解しながら端末上のワークシートに取り組む。中には複数辞書で検索している生徒もいる。わからなかったところ、間違えたところを赤で記入しているのは紙のワークシートと同様だ。新宮一平教諭は訳すポイントを電子黒板に書き込みながら説明していった。
生徒は「どの辞書を使って調べれば良いかわからなくても複数辞書で検索できる」「これまではプリント中心だったが今は端末1台で学習できて家庭学習にも取り組みやすい」と話す。
新宮教諭は「これまでは生徒は、教員が与えたものを使って調べていたが、ClassPad.netには様々な辞書があるので生徒が自発的に調べるようになり、端末に書き込んでいる。便覧も同梱されており、家庭学習に活用しやすい」と語った。
特進コース・数学の授業は三角関数で、sin、cos、tanの表を電子黒板にまとめてから演習問題に取り組んだ。
ClassPad.netに備わっている数学ツールを使って、出題された数式のグラフを描画。数値を変えるとグラフの形も変わることをクラス全体で確認した。黒板サイズに大きく映せる電子黒板でグラフも迫力がある。さらに各自の端末上でも確認していった。
生徒は「数学ツールで様々なグラフを自由に作成している」「これまでは板書を書き写すことに時間をかけていたが、現在は自分で考える時間が増えて思考力が鍛えられている気がする」と話す。
池田透教諭は「数学ツールでは式を入力すると様々なグラフをすぐに描画でき、数を変えるとグラフの形が変わるので視覚から理解できる。ClassPad.netには『数学公式集180』が同梱されているので生徒も予習しやすいと思う。今後取り組みたい」と話した。
本校は鉄道学校から始まり大阪産業大学、大阪桐蔭中高を併設し、学生・生徒数は約1万3000名、職員約700名を擁する総合学園で、5年後に創立100年を迎える。
ICT教育の推進については後発ではあるがベテランから若手まで取り組むためICT教育を推進する部署を設置。この数年で大きく進んでいる。
個人端末の保護者負担に際し、これまで保護者負担であった辞書を検討する中、「ClassPad.net」には豊富な辞書・参考書が使える辞書機能に加えて数学ツールなど多くの教科で幅広く活用できる可能性があると考えて導入した。
建学の精神「偉大なる平凡人たれ」の下、実社会を支える「産業人」育成という目標達成のためにもICTを活用して自ら学ぶ人材育成に取り組み、10年後もその先も選ばれ続ける学園であることを目指す。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年3月6日号掲載