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教育ICT

小学校英語・学習者用デジタル教科書で「聞く」活動が増え自分の「成長」がわかる~世田谷区立喜多見小学校

2023年3月8日

世田谷区立喜多見小学校(森田賢校長・東京都)ではGIGA端末(iPad)の活用を積極的に学校HPで発信している。指導者用デジタル教科書は主要教科で導入。文部科学省事業により配備された英語の学習者用デジタル教科書+教材「Here We Go!」(光村図書)は2022年9月より活用を開始している。2月8日、6年2組外国語の授業を取材した。同校では英語専科の井上春華主任教諭が外国語(英語)を担当している。

学習者用デジタル教科書で何度も音声を聞き、リーディングを練習した

学習者用デジタル教科書で何度も音声を聞き、リーディングを練習した

“聞く”活動が増えた

気を付けるところ、覚えたいところ等を記入してから繰り返し練習した

気を付けるところ、覚えたいところ等を記入してから繰り返し練習した

この日、児童はUnit8What do you want to be?~自分の将来の夢を発表しよう。」の「Let’s listen and read.」で「練習なしで読んで録音」し、その後学習者用デジタル教科書で練習をしてから再度「ベスト版を録音する」ことに挑戦した。

練習なしで録音するのはこの日が初。児童はこれまで、各Unitの「Let’s listen and read.」で「練習してから」録音している。デジタル教科書上での音声再生時間は12秒だが、録音時間は15秒に設定。初回の録音では時間内に終わらない児童もいた。

井上教諭は「うまくいかなかったところは書き込んでおこう」と声かけ。児童は学習者用デジタル教科書上に直接書き込んだ。「つまったところ」に傍線、「覚えなければいけないところ」を囲んでいる児童もいる。

録音は授業支援ツールで行った

録音は授業支援ツールで行った

練習前にまず全員で読み、配慮すべきポイントを井上教諭が説明。その後各自で練習を始めた。

練習時間は10分間。印をつけたところに注目しながら何度も音声を聞く児童、音声と同時に発音している児童、録音して自分のリーディングを聞き返している児童がいる。イヤホンを使う児童、使っていない児童もいる。音声を聞いてもわからないところがあれば、挙手して井上教諭や英語支援員を呼んだ。学習者用デジタル教科書の音声は、ゆっくり聞きたい場合は075倍速に、速く聞きたい場合は125倍速にもできる。

練習後、児童は「ベスト版」を録音。初回と聞き比べた。別人のようなリーディングに感激しているようだ。振り返りカードには「初回とベスト版を聞き比べるとスピードがぜんぜん違う。英語らしくなっていた。練習のしがいがあった」「単語同士の適度な間隔やスピードを意識してシャドーイングした。速さも変えて聞いた。速いバージョンでは全体のまとまりを、遅いバージョンでは単語1つひとつの発音を聞いた」「自力で読むのは初めてで、初回は読めない単語もあり時間内に終わらなかったが何度も聞いているうちにだんだんわかってきた」と、練習の成果と手応えを表現していた。

英語学習の充実は全教科に拡がる

英語専科4年目の井上主任教諭に学習者用デジタル教科書のメリットについて聞いた。

■当初は迷ったアカウント配布

Here We Go!」の学習者用デジタル教科書は、指導者用デジタル教科書とほぼ同じ内容で、解答も表示される。そのため児童にアカウントを配布すべきかどうか、当初は迷った。しかし英語の場合「答えをわかりながら英文を読んだり聞いたりする」ことの効果がある、と考えて配布することとした。

学習者用デジタル教科書の導入により、繰り返し聞くことが身近になった。

一斉指導だと数回が限度でフォーカスする箇所にも限界があり、個別の疑問に対応しきれない場合がある。現在は、各自で気を付けたいところに印をつけながら聞いている。自分の力に合わせて速さも変えられる。児童も「聞きたいところを自分のペースで何度も聞けるのが良い」と言っている。

■ビフォーアフターで成果を見える化

学習者用デジタル教科書では、主にStoryで全文を聞き、各自の学習者デジタル教科書でピクチャーカードを並べ替える活動や、今日の授業のようにLet’s listen and read.で内容理解の問題を解き、各自の端末で読みを練習して録音・提出する活動を行っている。通常は30秒間練習してから行うが、今日は3学期ということもあり、「ビフォーアフター」で成果を見える化し、練習によりどれほど自分が成長するかを理解し、自ら学ぶ力の向上につなげたいと考えた。児童は10分程度の練習で大きく違うことがわかって自信を深めており、意図通りの展開になった。英語で自信を持てると他の学習にも自信が持てる。

自己紹介や自分の得意なことの発表など、英語では、高学年で行いにくい活動を行えるので、互いに新たな発見があり、相互理解につながると感じている。

■登場人物に親近感

Here We Go!」は登場人物がさまざまな体験を通して成長していくストーリーになっており、児童は登場人物を身近に感じている。小・中で共通したキャラクターも登場する。「以前のUnit○○がでてきたことがある、そのときどのような様子だったかな」と自然に既習事項に戻っており、英語が人を理解するためのツールとして機能していると感じている。

学習者用デジタル教科書導入前は、授業支援ツールで音声教材等を自作しており、教材作成に時間がかかった。専科だと繰り返し教材を使えるが、学級担任が英語を教える学校の場合は難しいだろう。学習者用デジタル教科書や教材をうまく利用できるように、英語専科ではない教員にも活用や考え方を伝えていきたい。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年3月6日号掲載

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