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教育ICT

「SDGs」テーマに全学で起業・事業化支援につながる学びを展開~立命館総長 仲谷善雄氏

2023年2月7日

学校法人立命館 仲谷善雄総長

北海道、滋賀、京都、大阪、大分に2大学・4附属学校・1小学校を有する学校法人立命館は学園全体でSDGsをテーマに学生の起業・事業化を支援するためのプラットフォーム「RIMIX」を立ち上げた。これにより全学の取組がさらに活発になり、成果も上がっているという。本取組をスタートしたのが、2019年より立命館総長に就任した仲谷善雄氏だ。仲谷総長に、本取組の目標と手応えやチャレンジを継続できる仕組みについて聞いた。

 

イノベーションを起こす人材を育む

小中高大院の学びがつながった

SDGsをテーマに「チャンス」を与え「チャレンジ」し、起業家精神を学び、起業・事業化につながる学びの全学展開を「RIMIX」として整理した

SDGsをテーマに「チャンス」を与え「チャレンジ」し、起業家精神を学び、起業・事業化につながる学びの全学展開を「RIMIX」として整理した

2017年、文理融合を目指した本学びわこ・くさつキャンパス(BKC)SDGs(持続可能な開発目標)をテーマにした学生の発表がありました。2015年に始まったSDGsにいち早く取り組んだこの取組が素晴らしく、SDGsを切り口にした起業・事業化を全学の目標とすることで附属校と大学・院の様々な取組をつなげて全学的なものとしたいと考え、2019年に作成したのが「RIMIX()です。

小中学校でSDGsや起業に興味を持ち、中高で探究力を鍛え、大学・院ではそれを研究や事業化につなげる等、段階的に進められるようにして小中高大院で次世代研究学園となることを目指しました。

持続可能な社会を目指し自ら考えて行動し、社会にインパクトを与えるようなイノベーションを起こす人材の輩出は、先の見通しが難しい時代において本学の目標とするにふさわしい枠組みです。これは建学の精神「自由にして清新」にもつながります。

起業には資金も必要です。そこで、起業に投資できる仕組みとして10億円規模の「立命館ソーシャルインパクトファンド」を設定しました。

RIMIXにより全学の取組がつながり、附属校の果たす役割や責任も明確になりました。

この取組で企業支援も年々増えており、現在は7(※)と連携しています。ソニーの起業支援部門、ベンチャーキャピタルであるジャフコグループ、社会起業家支援に取り組むコモンズ投信、クラウドファンディングを手がけるREADYFOR(レディーフォー)など

起業・事業化推進室で全学をマネジメント

RIMIXを継続・発展していくための組織として2021年に設置したのが「起業・事業化推進室」です。本推進室では、小学校から院まで、起業・事業化につながる支援をマネジメント。RIMIXの仕組みも常に見直して新たな取組を展開するなどバージョンアップしています。各校の取組の発信もし、全国の学生や児童生徒の励みになっています。

大学、行政、企業、起業家、投資家が集う交流プログラム「OIC CONNECT」も始まりました。また、「IMPACT MAKERS DAY」は、立命館が主催する各種ビジネスコンテストに参加した大学生・院生の受賞後のビジネス展開の発表の場です。中には6000万円の資金調達に成功した起業家もいます。小学生から院生まで集まり、お互いに刺激し合うエキサイティングな場となっています。

自ら考え行動・発信する力が伸びている

RIMIXの構築により、生徒も学生も教員も、この数年で大きく変わりました。どこを目指すのかが明確になること、身近なロールモデルがいることはとても重要です。

まず、起業する学生・生徒が増えました。2017年度時、学内発のベンチャーは26企業でしたが、2020年度は60企業に増え、近年は高校生も起業しています。小学生ピッチでは、120人の小学生のうち30人が「やりたい」と手を挙げるので感動しました。

2030年に向けた中長期計画「学園ビジョンR2030」のビジョンワード「挑戦をもっと自由に~Challenge your mind Change our future」は、自分の中にある様々な制約を超えて自由に挑戦していこう、という意味です。無意識の思い込みや偏見を超え、失敗を恐れず自由な気風を持ち、社会課題を見つけ、解決していこうという気風が全学に広がっています。

起業・事業化につながる風土があった

本学にはもともと起業・事業化に結びつくカルチャーがありました。

立命館大学では2014年度よりイノベーション人材育成のための正課外プログラム「EDGE+Rプログラム」に取り組んでおり、学生ベンチャーコンテストも18年間継続しています。また、立命館アジア大学(APU)では起業部(通称:出口塾)2018年から発足しています。

4附属高等学校はすべて文科省スーパーサイエンスハイスクール(SSH)やスーパーグローバルハイスクール(SGH)に採択され課題研究に取り組んでいます。そのうち立命館高等学校はSSHを約20年間継続しており、海外のトップ校も招へいして英語による研究発表や科学交流を行う高校生科学フェア「JSSF(Japan super Science Fair)を行っています。現在は高校生が自らJSSFを運営しており、JSSF参加を目標に入学する生徒もいます。

さらに本学の校友会未来人財育成基金では、学生の良い取組に奨学金や助成金を提供しており、チャレンジする環境が整っています。

新しいAO入試を創設

文理融合人材の「数学力」を底上げ

2022年より、新しいAO入試「学部指定単元AI学習プログラム」をスタートしています(20234月入学)

「経済学部」「スポーツ健康科学部」「食マネジメント学部」において、端末等で高等学校数学の全単元(AI学習教材「atama+78単元)のうち、学部が指定する単元(5~8単元)を端末等で学習し、習得認定試験合格を入試要件に課すものです。習得認定試験には期間内であれば複数回挑戦できます。

立命館とatama plusでは「新しい高大接続と入試の在り方を考える共同研究会」を設立しており、立命館守山中学校・高等学校においてAI学習教材「atama+」の活用で生徒の力が伸びたことから、入試活用を実装しました。文理融合学部の入学希望者は文系が多く、入学後に統計やデータ分析等でつまずかないようにと考えました。

入試の可能性が広がった

初のチャレンジでしたが全国36都道府県から227名がプログラムに挑戦し、140名がプログラムを終了。そのうち128名が出願して37名が合格しました。他の入試方式と同等もしくはそれ以上の志願者が集まり、入試の可能性が広がりました。受験者からは「『データの分析』で分からなかった概念が学べた」「数学と経済学のつながりがわかり数学に対する意識が変わった」と好評です。合格者のうち28%は「受験前は数学が苦手・嫌いであった」と回答しています。修了者の学習期間は、90%10日以上1か月以内でした。データにより様々なことがわかります。チャレンジの継続は、良い人材が集まることにつながると感じています。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年2月6日号掲載

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