文部科学省は「児童生徒の情報活用能力の把握に関する調査研究」の速報結果を2022年12月、公表した。これは児童生徒が「情報活用能力」をどの程度身に付けているかを測定するもの。本調査結果によると、キーボードによる1分間あたりの平均文字入力数は、小学生15・8文字、中学生23・0文字、高校生28・4文字。「コンピュータへの不正アクセス、情報の不正な取得などに関わらないようにしようとする」割合は全校種で8割を越えた。本調査は、キーボードによる文字入力調査(3分)、問題調査(2題・各30分)、児童生徒質問調査(15分)と学校質問調査をCBTで実施した。
本調査における情報活用能力とは、学習活動において必要に応じてコンピュータ等の情報手段を適切に用いて情報を得たり、情報を整理・比較したり、得られた情報を分かりやすく発信・伝達したり、必要に応じて保存・共有したりといったことができる力。情報手段の基本的な操作の習得・プログラミング的思考・情報モラル・情報セキュリティの知識・統計等に関する資質・能力等も含まれる。
調査は2022年1~2月に自分の端末を使ったCBT方式で実施。GIGA端末を使用した初の調査となる。対象は、小学生161校の5年生4486人(各校1学級、以下同)、中学生162校の2年生4846人、高校生156校の2年生4887人。全員に同一の問題を出題するのではなく、児童生徒ごとに異なる問題セットを出題・分析するIRT(ItemResponseTheory、項目反応理論)方式を採用した。本方式は今後の文部科学省関連調査においてCBTと共に活用される可能性が高いものだ。
本調査結果は児童生徒の情報活用能力を4分類して得点化し9つのレベルに分類。得点は小学生<中学生<高校生と校種が上がるにつれて高くなる傾向。4分類は次の4つ。▼基本的な操作等▼問題解決・探究における情報活用▼プログラミング▼情報モラル・セキュリティ
なお分析結果等は実施校に返却しない。
デスクトップ上の「写真」フォルダ内の「旅行」フォルダを開く問題について、正答率は小中高全体で約7割だが、指定されたフォルダを開けない中学生は約4割、高校生で約2割いる。なお児童生徒ごとに異なる問題セットを出題しているため全児童生徒の正答率ではない(以下同)。
「記号と組み合わせ方の理解(プログラミング)」関連では、「光センサー」について、プログラムのフローチャートの空欄をドラッグ&ドロップ操作により完成させる問題において小学生41・3%、中学生61・5%、高校生69・2%が正解した。難問ではないが、フローチャートと光センサーの理解が必要で、高2で3割ができていない点は課題だ。
「必要な情報の収集・整理・分析・表現する力」(問題解決・探究における情報活用)については、Webページに書かれている内容の正確な読み取りを出題。テキストを読み取る力が問われる点は従来の紙問題と同様だが、デジタルの場合は複数のリンク先から必要な情報を判断して参照する必要がある。これについては小学生31・5%、中学生58・4%、高校生73・0%が正解と、校種で差が出た。読解力が影響していることが考えられる。
「キーボード入力」(基本的な操作等)については、全校種に同じ課題文を出題(総文字数285文字・ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット等の組合せ)。今回はローマ字入力・かな入力どちらでも良いこととし、かつ全角・半角は問わない。
1分間あたりの平均文字入力数は、小学生15・8文字、中学生23・0文字、高校生28・4文字。なお前回の関連調査(小中学生2013年度、高校生2015年度に実施)において小学生は5・9文字、中学生15・6文字、高校生24・7文字が平均値であった。条件が異なるため単純比較はできないが、小学生の伸びが顕著な一方で5文字未満の小学生が17・6%いる(中学生3・8%、高校生1・1%)。なお40文字以上入力できた児童生徒は、小学生2・3%、中学生6・5%、高校生14%。
児童生徒質問調査によると「学校以外の場所で、インターネットを使って情報を収集する」割合は全校種で比較的高い。「ほぼ毎日」もしくは「毎日」行っている割合は小学生27%、中学生66%、高校生77%。「まったくない・ほとんどない」割合は小学生27%、中学生9%、高校生8%。
「インターネットの情報は正しいものとは限らない」と考えている小学生は69%、中学生75%、高校生78%で、ネット上の情報が「正しいものとは限らない」という知識は比較的浸透しているようだ。
セキュリティや著作権等に関わる質問についても全校種において比較的高い。「コンピュータへの不正アクセス、情報の不正な取得などに関わらないようにしようとする」割合は、小学生80%、中学生86%、高校生81%と、全校種で8割を超えた。
「自分や他の人が作った作品や情報には権利があることを考えて大切にしようとする」割合は、小学生47%、中学生59%、高校生52%。
前述の質問調査と問題調査のクロス分析も行った。それによると「学校以外の場所でインターネットを使って情報収集する」「コンピュータへの不正アクセス・情報の不正な取得に関わらないようする」「インターネットの情報は正しいものとは限らない」等について肯定した児童生徒は、小中高ともに問題調査の得点が高い傾向。
校種で差が見られたものもある。
「IDやパスワード、自分や友達の個人情報などの重要性を考えて行動しようとする」小中学生と「コンピュータやインターネットは将来の仕事に役立つ」と考えている中高生で、問題調査平均得点が高い傾向だ。
2022年度調査の分析結果を基に次回調査の内容を検討・バージョンアップし、2024年度の予備調査を経て2025年度に第2回調査を行う予定だ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年2月6日号掲載