教職員の働き方改革に資するICT活用の本丸が校務の情報化である。文部科学省は2023年度事業として「次世代の校務デジタル化推進実証事業」を概算要求しており、次世代の校務のデジタル化モデルの実証研究を全国各地で実施し、事業終了5年後を目途に全国レベルでのシステム入れ替えを目指す。また、教育DXを支える基盤的ツールの整備・活用(教育データの利活用)も行う予定。校務のクラウド化とデータ連携を進めることで教育DXに寄与する考えだ。過渡期である今、各教育委員会で校務のクラウド化はスタートを切っているのか。グループウェア機能は校務支援システム内で行うのか、クラウドツールを活用するのか。校務のクラウド化についてはネットワークの再構築も欠かせないが同時に進めるのか。プロポーザル提案から各自治体の動向を見る。
小学校8校・中学校3校・市役所に2023年4月から稼働する統合型校務支援システムを2022年度中に構築する。センターサーバー運用、もしくはクラウド運用とする。事業者を10月末に決定した。
2022年9月から小学校7校、中学校4校で新規のネットワーク環境を運用。パブリッククラウド内にプライベートネットワーク環境でVDI方式を採用した。
小学校22校、中学校13校で2023年4月から稼働する統合型校務支援システムを2022年度中に構築。校務支援システムはセンターサーバまたはクラウド基盤上に設置し閉域網による接続とする。
新潟県下越5市町村(新発田市・五泉市・聖籠町・阿賀町・関川村)は「校務支援システム運用等業務委託(仮称)」事業者を合同で選定するため2022年3月、公募型プロポーザルを実施。
ネットワーク環境及び運用・保守に関する機能要件・委託期間が各自治体で異なる。新発田市は学校サーバ運用、聖籠町・阿賀町はセンターサーバ運用によるオンプレミス型。五泉市・関川村はインターネットを利用した暗号化通信を原則とするクラウド型。
小学校10校・中学校3校・教育委員会で2023年度から稼働する校務支援システムを公募。事業者は内田洋行に決定。クラウドサービス又は庁舎内オンプレミス型で運用。保健管理やグループウェア機能も導入。
川口市(小学校52校、中学校28校、高等学校1校、幼稚園2園)及び市教育委員会事務局で事務処理の統一化・標準化及びデータの一元管理を行う統合型の校務支援システム(幼稚園・高等学校についてはグループウェア、勤怠管理及び文書交換)について9月29日、公募型プロポーザルを実施。ネットワークは市独自敷設の地域イントラネット学校情報系ネットワークを使用。接続ではVPNルーターを導入。センターサーバ集約型で拠点数は小中学校及び幼稚園や市役所など計86拠点。原則無線LAN接続で利用可能範囲は職員室・校長室・保健室・事務室。インターネット接続は不許可。ID/パスワードによる本人認証と生体によるデバイス認証が望ましい。シングルサインオン機能は必須。
埼玉県川島町、吉見町、ときがわ町、東秩父村、美里町、神川町は共通の統合型校務支援システムを利用するため2021年6月、6町村合同で公募型プロポーザルを実施。「EDUCOMマネージャーC4th」をカスタマイズなしで導入(通知表のみカスタマイズ)し2022年3月から稼働。ネットワーク環境は各市町村で異なり、USBキーを使用したハードウェア認証及びパスワード認証による二要素認証を行っている。通知表は通常学級用と特別支援学級用を用意。
小学校2校・中学校1校に2023年4月から本格稼働する統合型校務支援システムを公募。契約期間は2027年12月31日まで。忠岡中学校に3校共通の統合型校務支援サーバを、各校にVPNルータを新設予定。センターサーバで一元管理される仕組みとする。各校ともに既存のリモートデスクトップサーバから校務を行っており、インターネット接続や他のネットワークへのデータの受け渡しができない環境。現行からセキュリティレベルを下げないようにするため、統合型校務支援システムについても既存のリモートデスクトップサーバからのみアクセス可能とする。
小学校24校、中学校12校で2023年5月から稼働する統合型校務支援システム及びネットワーク分離・仮想環境の構築について9月8日、公募型プロポーザルを公表。校務支援システムはクラウド型としクラウドセンターへの接続はIP―VPN方式とする。校務支援システム等個人情報を処理する際はクライアント端末に対して認証を行い、仮想環境でアクセスする。同一端末内で論理的に分離でき、二要素認証によりログインする仕組みとする。
小学校9校、中学校6校の学校ネットワークを再構築して2023年4月から稼働するため公募型プロポーザルを実施し事業者を決定。クラウドサーバで一元管理される仕組みを用い、ブラウザアクセス型のWebアプリケーションかつクライアント端末へのインストール作業不要とし、クラウドサーバへの接続はIP―VPN方式(インターネットVPNは不可)とする。保健管理やグループウェア機能も校務支援システム内で導入。
広島県熊野町(小学校4校、中学校2校)は、10月7日、「熊野町校務支援システム整備業務」の公募型プロポーザルを実施。2023年4月から運用開始予定。ネットワーク構成はデータセンターから各小中学校及び教育委員会で接続するセンターサーバ型。校務用PCは教育系LAN(インターネット接続あり)を経由して利用するため暗号化通信(VPN、IP-Sec、TLS1・3等)を実現する。
2022年7月20日、山口県周南市は「校務ICT基盤システム提供業務」の公募型プロポーザルを実施。センター集約型構成の校務系関連の機器類や各種システムの更新を2022年度に迎えることから、クラウドサービスの活用を前提としたネットワーク構成に切り替え、教育情報セキュリティポリシーガイドラインに沿った構成に段階的に拡張する。
校内設置サーバは原則廃止。学習系は新設するFWから直接インターネット接続し、校務系はインターネット経由VPN通信で庁外DCと接続する方向。
小中学校4校、小学校15校、中学校5校に2023年5月から稼働する統合型校務支援システムを2022年8月に公募。アプリケーション及びデータベースはクラウドサーバで一元管理される仕組みでクライアント端末にはインストール不要とする。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年11月7日号掲載