教職員の働き方改革を実現するためには多方面にわたる必要がある。その中でも複雑な構造を持つものが、部活動の地域移行だ。経済産業省は最終提言「未来のブカツ」ビジョンを取りまとめ、9月28日、公表した。これは地域×スポーツクラブ産業研究会(間野義之座長・早稲田大学スポーツビジネス研究所所長)での1年半にわたる議論及び第1次提言公表(昨年6月)後に全国10か所で実施したフィージビリティスタディ事業(以下、FS事業)の成果を踏まえたもの。本提言の「ブカツ」とは、様々な運営主体が提供する地域のスポーツクラブ活動。従来の学校部活動とは異なる多様性に富んだイメージであるとする。
部活動改革は、様々な社会システムが絡み合った複雑な社会問題であり、スポーツ関係者や学校関係者の理解を得る活動が不可欠だ。そこで「学校部活動の地域移行」を教員の働き方改革に寄与することにとどまらず、U15/U18世代のスポーツ環境が抱える課題を解決し理想的なスポーツ環境とするため、システム全体を再デザインする。
本提言では2020年代前半までに進めるべき施策群として次の5つを挙げた。
①大会デザインを再設計。全国大会の意義についても再検討。高体連が主催するインターハイ等各種大会においても、参加資格を学校単位に限定しないようにする。
②活動場所・移動手段を確保する。民間スポーツクラブが学校体育施設を活用出来るよう、現行のスポーツ基本法の理念に基づき、条例や規則の改正を促す。国は現行のスポーツ振興法において営利事業者が学校体育施設を使ってビジネスを行うことを必ずしも妨げてはいないが、各自治体の学校開放の登録団体要件には、営利を目的としない団体と記載ある自治体もある。移動負担の軽減策も必要。
③教員の兼業環境の整備。現在学校部活動の顧問をしていて、今後もスポーツのコーチを希望する教員に、兼職兼業コーチとして指導を続けてもらうための環境を整える。教員の働き方改革の観点から兼職兼業で教員がコーチとして従事する場合、フレックス勤務を認める等、柔軟な働き方を可能とする。
④所得格差由来の機会格差を埋める資金循環の創出。学校施設の民間開放による収益化、企業版ふるさと納税や寄附税制の活用等、スポーツ振興くじの更なる活用など。
⑤学校部活動の地域移行の見直しと制度的位置づけの明確化。「学校部活動の地域移行」についての大方針を早期に明確化する。「まずは休日だけ移行」という規模感では計画的な事業投資判断が難しい。文部科学省の事務連絡には学校部活動は「学校教育の一環として、学習指導要領に位置づけられた活動」と記載されていることが障害になっている。
10プロジェクトの実証では、学校にとって部活動は「あって当たり前」のものであり、それを変えるための議論が途中で止まる現象が多発したこと、現状では全学校/競技の地域移行を受け入れられるような受け皿は存在しないことが明らかになった。諸外国における「ブカツ」の在り方は各国で多様であり、日本がこれまで積み重ねてきた資産の上に、米国や欧州から学ぶべき部分は取り入れつつ、デザインをし直すことが正しいのではないかとしている。
地域により受け皿モデルも大きく異なる。本実証では、人口やリソースによって「大学」「市の外部団体」「地域スポーツクラブ/プロスポーツクラブ」「教育委員会」「地域の小中高校生・大人」が人材・場所等を提供している。
▼レベルに応じた出場機会がある
▼移籍の制約にならない
▼あえて地域ブロック大会までに抑える
▼活動時間の適正化を動機づける
▼クラブの適正なガバナンスを動機づける
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年11月7日号掲載