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教育ICT

「個別最適な学び」と「データ活用」  デジタルドリルで「端末持ち帰り」が増えた 誤答理由を分析して自律した学びにつなげる~鹿児島県鹿児島市教育委員会 学校ICT推進センター

2022年10月13日

鹿児島県鹿児島市教育委員会(小学校78校・中学校39校)は2022年3月より学習eポータル「まなびポケット」を使って児童生徒のMicrosoftアカウントでシングルサインオンできるようにしている。2022年度はデジタルドリルの導入・活用を始めたところだ。鹿児島市教育委員会 学校ICT推進センターの木田博所長、永田千章指導主事、川原省吾指導主事にデジタルドリルの導入・選定の経緯と活用のための準備について聞いた。

木田 博 所長

木田 博 所長

永田千章 指導主事

永田千章 指導主事

川原省吾 指導主事

川原省吾 指導主事

選定のポイントは学習の個性化・指導の個別化の実現

学習eポータルとシングルサインオン環境を整備した後、デジタルドリルを全校で活用できるようにしようと20225月にプロポーザルを実施し、5社の参加がありました。

選定の際には、鹿児島市校長会・教頭会の代表も加わり、学校現場の声を反映させるようにしました。

選定のポイントとして最も重視した点は、学習の個性化・指導の個別化の実現が可能かという点です。プロポーザルでは、何割できたかという達成度で次の問題が提示される仕組みや、子どもの誤答の傾向(―単純な計算ミスなのか、九九の知識に課題があるのか)等を判断し、適切な問題が提供される仕組みなど、様々な提案があり、誤答した際にAIがどんな出題をするのかについて、各社の製品を比較しました。

そのほかにも、わかりやすいインターフェイスや子どもが楽しみながら取り組めるゲーミフィケーション的な要素も重視しました。自ら主体的に学習に取り組むには、楽しさやわかりやすさも重要です。

その結果、凸版印刷が開発したデジタルAIドリル「navima(以下、ナビマ)」を導入することとしました。

シングルサインオンでスムーズに導入

その他のクラウドサービス等において、シングルサインオンの仕組みを早々に活用していたこともあり、デジタルドリルの導入はスムーズでした。

児童生徒のID/パスワードを学習eポータル(まなびポケット)と紐づけることを仕様書にも盛り込みました。これにより教育委員会は、各学校に学習eポータルからドリルが利用できるようになったことを通知するだけとなります。

児童生徒は、学習eポータルに通常通りログインするだけで「ナビマ」のアイコンが表示されるようになり、すぐに取り組むことができます。

リアルタイムでハンズオン研修 毎日同じ時間に1週間実施

導入後は、活用に関する同じ内容のオンライン研修を1週間にわたり放課後に設定し、その間、先生方は各自の都合に合わせて参加できるようにしました。

リアルタイムで各自の端末で実際に操作する研修を行うことで、一度だけでなく、複数回参加した先生方もいました。

さらに、Microsoft Teamsのチームにアーカイブ動画も格納し、必要なときにいつでも視聴できるようにしました。また、ICT支援員が校内研修を行った学校もあり、デジタルドリルの導入をきっかけに、積極的な研修が始まっています。

各校で活用開始

研修が終わり、各校の活用が可能になったのが6月下旬です。各校では、どのように活用を進めていくか、どんな注意事項が必要なのか等を共通理解しながら活用を進めていきました。

夏休み目前でしたので、学期末のまとめや夏休み中の宿題に活用する学校もあり、中には、家庭で学習を進め、学校で内容を確かめるなど反転学習に利用している学校もありました。また、高学年から利用を始め、次に中学年で活用する等、段階的に取り入れている学校もあります。

夏休み中の宿題や家庭学習に利用した場合、教員はいつでも子どもの進捗状況を確認することができるなど、紙のドリルと異なる利点も多く見られました。

子どもが「帰宅してから課題を出す」ことも可能に

デジタルドリルを導入したことで、端末の持ち帰りが一気に進みました。

紙を使った家庭学習における課題の場合は事前の作成・印刷が必要ですが、デジタルドリルの場合はどの問題を課題にするのかを教員が選択するだけで、子どもの端末に課題が表示されます。

教員は、授業中に送れなかった課題を子どもの帰宅後に送ることも可能です。さらに宿題を行ったノートやプリントを集める、採点する、返却するという手間がなくなります。そのため、教員は誤答傾向などの分析に時間をかけることができます。

教員は、授業中に子どもに合わせた支援ができる

ノートやワークシート、紙ドリルの場合、教員は全体で答え合わせを行い、反応を見て再度説明をする、というのがこれまでの授業の流れでした。

デジタルドリルの場合は同程度の時間で子どもたちが通常の3~5倍の問題に取り組むことも可能です。できる場合はどんどん進み、つまずいていた場合も、つまずいている箇所に戻り進めることができます。

教員は子どもの進捗を教員用端末からリアルタイムで把握しながら個別の支援を行います。ある問題で止まっていれば、そこでつまずいている可能性が高く、個に応じた具体的な支援ができます。

子どもそれぞれがどこまで進んでいるのか、全体として何ができていないのか等を把握でき、授業改善に活かすことができます。

管理職はデータを学校経営に活かす

各校の管理職は、自校のデータを確認でき、どの教科、どの学年で課題があるのか、成果が出ているのか等を判断してデータに基づいた声がけや支援ができ、学校経営ツールとして活用できます。

デジタルドリルを使うほどデータが蓄積されるため、読み取れることが増えていきます。

今後は子どもたちにとって適切な指導・支援を行うことで、手放せないツールになっていくと考えています。

デジタルドリル研究校を指定

現在、デジタルドリル推進校として小学校1校・中学校1校を募集中です。推進校にはデジタルドリル(ナビマ)専属支援員による定期的な支援を受けられるようにしています。様々な活用事例を報告してもらい、活用を広げていく計画です。

デジタルドリルのデータ活用は第一歩

国は教育データの利活用を今後の大きな目標としています。

教員の勘や経験のみに頼るのではなく、それらをデータで裏付けることが当たり前になると、学校経営も授業も、より具体的な改善が進むと考えます。

今後は、学校及び教育委員会としても、システムとして分かりやすく次のアクションにつなげやすいデータ活用を検討していきます。

まだ助走の段階で、デジタルドリルのデータ活用はその第一歩であり、より効果的な活用が進められるように努めていきたいと考えています。1年後はかなり進んだ段階になっていたいと考えています。

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