お茶の水女子大学は2024年度に「共創工学部」(仮称)の設置を構想中だ。同学部は「人間環境工学科(仮称)」と「文化情報工学科(仮称)」の2学科で構成する。
共創工学部の「共創」とは、「共に未来の環境、社会、文化を創る」ことを意図する。同学における教養教育「21世紀型文理融合リベラルアーツ」を基盤として、工学と人文学、社会科学の「協働」を目指す。この「協働」とは、同学の基幹研究院自然科学系 大瀧雅寛教授(共創工学部長に就任予定)によれば、工学を軸としたイノベーションの創出だ。
2学科のうち「人間環境工学科」は「人間」「建築」「環境」「材料」の4領域を扱い、各領域において、モノや仕組みの工学的設計に不可欠な「工学専門知」と、社会に実装・普及するために必要な「社会科学知」を協働させる。
「文化情報工学科」は人文科学と情報学を融合。情報・工学技術を用いて、文学、言語、芸術、歴史、地理などに関する多種多様な情報をデジタル化して分析を行い、新たな作品や価値を創造する。
「現実世界の人・モノ・事象に対し、どのようにしてデータを収集・整理・貯蔵するか、また、どのようなモデルをデータに当てはめるかというデータ駆動型ビジネスの基礎習熟を目指すのはもちろんですが、こうしたデータサイエンスによる分析結果を社会にフィードバックし、社会課題を解決して未来を開拓することを目指します」(大瀧教授)
学生は統計分析、機械学習、データマイニング手法などのデータサイエンスについて学修。同時に、ソフトウェアを使いこなすための情報工学の基礎や、ICT、IoT、DXなどのデジタル技術の学修も行い、社会における実装能力を身に付ける。
共創工学部が目指す新しい「知」について、大瀧教授は「工学および人文学、社会科学には、それぞれ確立された『知』の集積があります。それらを尊重しつつ、互いに活用することで、新しい『知』の創造を目指すというコンセプトです」と話す。
人間環境工学科では、工学的にモノ(人工物)を設計・評価し、実際に社会に展開するプロセスにおいて、社会科学分野の考え方や多様な人々と対話する能力を身に付ける人材を育成する。
一方、文化情報工学科では、例えば人文学の資料(テキスト、造形、動作など)をデータサイエンスの技術・技法によって生成・加工・分析した上で、デジタル技術を活かして文化を創成し、社会の課題解決に活かせるといった技術・思考を身に付けさせる。
入学定員は「人間環境工学科」26人、「文化情報工学科」20人の予定だ。
女子大における工学教育の意義については「女子大学では、すべての役割を女性が担う必要があります。そうした経験や思考を持つ人材が広く社会に出ることで、工学系分野においての男女共同参画の実現に寄与できると期待しています」
理工系などSTEAM分野での女性人材の確保は国の施策の1つとなっている。同学の共創工学部設置による工学教育は、この目標に寄与する取組となる。
※記事中の新学部名および新学科名はすべて仮称。また新設構想は予定であり、変更の可能性がある
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年10月3日号掲載