文部科学省は2021年度「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」を公表。市町村別データもWebに公開した。調査基準日は2022年3月1日。本調査は「学校におけるICT環境の整備状況(全国の公立小中高等学校・中等教育学校・特別支援学校)」「教員のICT活用指導力(全国の公立学校の授業を担当している全教員)」で構成。本調査結果から、GIGAスクール構想により一定の環境整備が図られたことがわかる。今後は業務プロセスのデジタル化(デジタライゼーション)、次いで学校教育自体の変革(デジタルトランスフォーメーション=DX)に進むことが目指される。調査項目も変わっていくだろう。
教育用コンピュータ整備率は平均0・9人/台。前回調査は1・4人/台であったことから、1人1台端末環境がほぼ達成した。
本調査の対象は「主として教育用に利用しているPC」であり「教職員が指導用に活用しているものも含む」「PC室配備の情報端末含む」となっているため、児童生徒に確実に1人1台配備された場合、整備率は1人/台未満となる。学校種別にみると、小学校0・9人/台、中学校・義務教育学校・特別支援学校0・8人/台、中等教育学校0・7人/台であり、1人1台環境はほぼ達成されていることがわかる。なお高等学校1年を対象に1人1台の情報端末整備が始まった高等学校は1・4人/台。
なおOS別にみると、WindowsOS(10/11のみ)37・2%、ChromeOS35・7%、iOSまたはiPadOS24・8%(調査対象総数1235万4156台)。
遠隔教育(同時双方向)を実施したのは小学校72・4%、中学校71・2%、義務教育学校81・4%、高等学校64・1%。コロナ禍のオンライン授業で遠隔教育が一気に広がった。現在、オンライン授業の望ましい在り方についての議論が既に始まっている。
インターネット接続率や無線LAN整備率も調査。いずれも98%以上。
接続回線速度1Gbps以上は、小中学校ともに前回調査4割弱から6割弱に増えた。
また、校内LAN(有線)1Gbps以上は、小中高等学校とも6割以上が整備。
無線LAN1Gbps以上は小中学校ともに6割弱。
「授業で児童生徒が接続したが、うまくつながらない」という学校からの声もあり、それぞれの自治体で解決を図っているところである。今後は、活用環境の質を左右する「1人あたりの帯域確保値」の調査も求められそうだ。
普通教室の大型提示装置整備率は平均81・9%で都道府県差が大きい傾向。最も低いのが秋田県の51・1%。最高値は三重県の94・9%。8割を超えたのは26都府県、9割を超えたのは8府県。
校種別差もあり、小学校87%、中等教育学校91・0%だが高等学校は74・7%と8割に満たない。
2018年度までは「電子黒板整備率」として調査していたが、2019年度より「大型提示装置(プロジェクター、ディスプレイ、テレビ、電子黒板)」調査となった。
教員の校務用PC整備率は平均125・4%。校務にPCを使うのが当たり前になった。しかし教員の働き方改革は道半ばでありデジタル化の進捗には自治体間で差がみられる。職務内容により、PCを複数台使い分ける環境に疑問が生まれており、100%以上整備=デジタル化は前提であるものの、次の段階であるデジタルトランスフォーメーションが求められる。文部科学省では、GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議「中間まとめ」を検討中で「校務用端末・教員授業用端末の1本化」ができる仕組みの推奨を始めた。クラウド化を含め、今後は校務環境のあり方についての調査が求められるだろう。
統合型校務支援システムの整備率は平均79・9%。こちらも都道府県差が大きい傾向。
校種別にみると高等学校が特に整備率が高く92・8%。義務教育学校は71・7%。
前述の会議では校務においても「汎用的クラウドが提供する各種ツールの活用」を推奨している。現状の調査対象である統合型校務支援システムとは、教務系(成績処理、出欠管理、時数管理等)、保健系(健康診断票、保健室来室管理等)、学籍系(指導要録等)、学校事務系などを統合した機能を有しているシステムであり、各種データ連携が求められていた点は共通しているが、今後は「統合型」ではなくても各種データ連携が実現すれば良い、ということになりそうだ。
指導者用デジタル教科書は小学校88・4%。最も高いのが義務教育学校で93・8%。高等学校は37・2%と最も低い。
学習者用デジタル教科書については、文部科学省の学習者用デジタル教科書普及事業初年度ということもあり、平均値35・9%で小中学校ともに4割前後。なお最高値が和歌山県の49・1%。高等学校は6・5%と導入はわずか。学習者用デジタル教科書の在り方については現在、中央教育審議会「教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループ」で2024年度からの学習者用デジタル教科書の本格的な導入に向けて検討が進んでおり、紙とデジタル教科書いずれも児童生徒が選択できるようにする方向だ。中間まとめ案がまもなく公表される。
4項目(※)について調査。いずれも昨年度調査と比較して微増。しかし項目B3及びB4の繰り返し学習や習熟度別学習、協働学習、項目C4の児童生徒同士の意見交換等の実施において、ICT活用率が他項目より伸びている。今年度はデジタルドリルの整備やクラウドツールの活用が広がりつつあることから次年度調査ではさらに伸びがありそうだ。
都道府県別にみると大項目ABCDすべてにおいて最高値である愛媛県は、昨年度からの伸びも大きい。同県では独自のCBT調査システムを開発しており、研修の受講状況も高い(95・8%)。なお徳島県は大項目ABCDすべてにおいて2位。
※A教材研究・指導の準備・評価・校務などにICTを活用する能力/B授業にICTを活用して指導する能力/C児童生徒のICT活用を指導する能力/D情報活用の基盤となる知識や態度について指導する能力。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年10月3日号掲載