2007年に開学したサイバー大学は、講義の受講から試験まで、通学せずに学士号(大卒資格)が取得できるソフトバンクグループの通信制大学(インターネット大学)だ。IT総合学部に「テクノロジー」「ビジネス」「ITコミュニケーション」の3コースを設け、「ビジネスのわかるITエンジニア」と「ITのわかるビジネスパーソン」を基本コンセプトに、高度IT人材の育成に取り組んでいる。
同学では21年度から、正科生を対象に、数理・データサイエンス・AI教育プログラム「AIリテラシーレベル」を実施している。
本プログラムは、文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)」に認定されているものだ。対象科目は「AI(人工知能)入門」「IoT入門」「ビジネス事例から学ぶ統計入門」の3科目。
「AI(人工知能)入門」は、人工知能の基礎から応用事例まで、およびディープラーニングの基本について学ぶ。人間の仕事はAIにどのように置き換えられていくのか、また、AIが人間を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)によって、人間の将来はどうなっていくのかなどについて考える。
「IoT入門」は、IoTが登場した経緯やその仕組み、市場動向などの基礎知識を習得する。
「ビジネス事例から学ぶ統計入門」は、ビジネスにおける様々なデータを分析するために必要な統計学の基本的内容を学ぶ。
「数理・データサイエンス・AIに関する知識やスキルを扱う際には、不安なく自らの意志でAIなどの恩恵を享受し、適切に活用できることが重要です。授業ではこうした点を踏まえ、各種データの利活用の方法と留意事項についても、具体的事例を通じて学べる科目内容になっています」(サイバー大学 IT総合学部学部長・安間文彦教授)
サイバー大学では、もともと専門的にAIやデータサイエンスを学びたい学生向けに、テクノロジーコースの「AIテクノロジープログラム」を用意している。このプログラムは高度な応用科目や演習科目も含み、本格的にAIを学ぶ内容となっている。
一方で、数理・データサイエンスの基礎は、専攻に関わらずすべての学生が最低限身に付ける素養として重要だ。そのため、新たに実施した「AIリテラシーレベル」で、数理・データサイエンス・AIの基礎を学べるようにし、在籍コースに関わらず、全学生に履修を推奨することとした。
サイバー大学は、履修(受講科目)登録から日々の受講、テスト、レポート提出、成績の確認まですべてを、独自開発のeラーニングプラットフォーム「Cloud Campus」で行っている。
学生の56%は社会人。年代別では20代が46%を占め、10代から60代以上まで幅広い層が学んでいる。授業は約15分単位で構成され、通勤中や隙間時間を利用しての効率的な学習も可能だ。
ゼミや卒業研究などでは「Cloud Campus」のコンテンツ制作機能やディベート機能を使用して、担当教員だけでなく、ほかの学生とも意見交換しながら学修を進めている。
「コロナ禍において、オンライン教育の注目が高まっており、オンライン教育に特化してきた本学の重要性も高まっていると感じます」(安間教授)
開学以来、社会人が学び直しで入学するケースが多かったが、近年は高校新卒や大学を中退したばかりの若年層の比率が上がってきているという。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年9月5日号掲載